軍事板書籍・書評スレ 66

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564名無し三等兵
The Campaign in Tirah 1897-1898
An account of the expedition against the Orakzais and Afridis.

By Colonel H.D.Hutchinson
Director of Military Education in India

現在のパシュトン人問題の一部をなすデュランド線(アフガンとパキスタン国境)の画定にはじまる
パシュトン諸部族の蜂起、カイバル峠の守備隊に対する部族の攻撃にはじまる英領インドからの英軍の遠征の記録。

タイムズに掲載された書簡文を編集しなおしたもので、当時の戦闘は今、現在のアフガン戦争における連合軍と
比べると大量の戦死者を出しているのにまず気づく。

地図を欠いているので行軍、進撃、冬営の記述を空間的に把握しにくい点はあるものの、
一方で、戦役を指揮した将官を賞賛しつつも、政治交渉の一端を明かす部分がある。

開戦に至る経緯、アフガン王国と部族指導者らの交渉の部分、そして、戦役のなかで敵部族領を占領し
部族指導者の書簡を鹵獲し翻訳したのを掲載している箇所がそれで、また、ときおり、敵の戦死者の中に
高名な指揮官がいた場合は特記している点にも注目したい。これらは敵側の政軍関係を英軍がどう受け止めていたか
という点から、戦役と政治交渉の関係を検討する上で重要である。

当時はパシュトン人をインドの英軍は兵士して迎え入れている点や、グルカ連隊の扱いなども
現在の政治的正しさの議論からするとやや厳しい面はある。しかし、この日露戦争以前の戦役はおそらくは戦間期までも
ほぼ同じ様相を呈してインド北西辺境で繰り返されていたのだろう。

対内乱という点ではアイルランドにおける鎮圧行動がおそらく教義面では淵源なのだろうけど
戦争や戦役という点ではおそらく、現在のアフガン戦争でも似た面はあるのではと推測する次第です。

万人に向けて読むのを進めるにはやや違う向きだけども、対内乱戦の歴史を追う上では有意義な読書でした。
565名無し三等兵:2014/07/08(火) 20:58:10.18 ID:SrznaMer
>>564 ちなみに当時の部族地域に関する情報は案外少ない。

この点は、たとえば打通作戦の戦記でミャオ族は容赦せず兵を殺害するので、補充兵が行軍から落伍したら
自決する他無かったという描写が出てくるのだが、その肝心のミャオ族というのがさっぱり分からないのと同様かも。

土地の広狭や棚田、段々畑、塔などは記述されているのだが、服装や光景などは
将校らの写生画などで補えるのだけど、更に一歩踏み込んだ村落内の血縁関係やら
市場の交換形態に、社会を構成する各集団といった面は、戦記だけでは不明なままにおわる。
566名無し三等兵:2014/07/08(火) 21:34:15.50 ID:Y3YMOYLH
>>564
面白そうですね。
Khyber riflesの事も載っていましたか?
567名無し三等兵:2014/07/08(火) 21:52:04.28 ID:SrznaMer
>>566 将来翻訳する予定です。

その連隊のことはのってませんが、初雪が降る直前に撤退する話は当時のイギリス人には
訴えかけるところがあったと思います。