話題の新刊(週刊朝日)
日米衝突の萌芽 [著]渡辺惣樹
[文]渡辺哲哉 [掲載]2013年12月20日
http://book.asahi.com/reviews/column/2013121300004.html このたび山本七平賞奨励賞を受賞した。著者は開国の地、静岡・下田市出身。カナダ・バンクーバーにも
居を構え、太平洋の東西から日米関係を捉える。2年前に出版した『日米衝突の根源 1858−1908』
の続編。
米によるフィリピン植民地化から、第一次世界大戦終結までを扱っている。フィリピン領有で地政学的に
一気に近くなった日本の脅威論、カリフォルニアでの排日運動、それを利用した独の日米離間策に、
米は日本を仮想敵国としていく。米の協力で日露戦争に勝利し、列強に肩を並べた思いでいた日本に
とって、米の急激な変化は戸惑いとともに反発を内包していくことになる。
この時期の両国の為政者と国民の感情のもつれが、開戦を引き起こす「萌芽」となったと指摘する。
564ページの大著だ。