>>839の続き
「これほどの戦果をあげていながら、艦橋のどこにも興奮の色がなかった。
人間らしい表情はなかった。右舷左舷の見張員は、いつもと同じように両足を大きくふんばり、
大型の双眼鏡にとりついていた。刻々にあらわれる敵艦の所在を叫んでいた。
右舷の見張員の耳には、左舷の激闘が耳に入らないようであった。
力をこめて報告する声は、ふだんと変わらなかった。
高角砲座の砲員たちは、相変わらず木の根のようにとりついて、着実にすばしきおく動いていた。
無言であった。伝声管の声にも少しも変わったところがなかった。
そこらを歩いている兵もなかった。持ち場持ち場にはえているように見えた。
勝手に動いているのは、どうやら私ひとりであった」 (『海戦』丹羽文雄/著)
ね、そっくりでしょ?
大先輩の作品なのに、良いんですかねぇ・・・こんなことして。