<福島第1原発>不信洗ったヘリ放水
毎日新聞 4月22日(金)2時32分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110422-00000014-mai-pol ◇巨大なバケツ
晴れ渡る空に陸上自衛隊の大型輸送ヘリCH47が2機、巨大なバケツ(容量7.5トン)をつり下げて仙台市の
陸自霞目(かすみのめ)駐屯地を飛び立ったのは、東日本大震災6日後の3月17日朝だった。目指す東京電力
福島第1原発3号機からは白煙が上がる。使用済み核燃料プールの水が沸騰した放射性水蒸気だ。海水を
くんで放水し、プールを冷やす作戦だった。
「炉心溶融が進行していれば、放水によって水蒸気爆発を起こすおそれもある」。菅直人首相らは「最悪の
シナリオ」を危惧し、防衛省は搭乗隊員向けに防護策をとった。放射線を極力遮断するため戦闘用防護衣の
下には鉛製ベスト、床部にはタングステン板を敷き詰めた。放射線を浴び続けないよう上空に停止せず、横切り
ながら放水する方式とした。
「ヘリ放水開始」。午前9時48分、テレビ画像のテロップとともに映像は世界に生中継された。計4回(計約30トン)
の放水で1回目が目標に命中したが、爆発は起きなかった。日本政府が命がけの作戦を開始した−−。ニュースが
伝わった東京株式市場では全面安の展開だった日経平均株価の下げ幅が緩んだ。ワシントンの日本大使館では
拍手がわいた。
「自衛隊などが原子炉冷却に全力を挙げている」。作業終了から約10分後、菅首相はオバマ米大統領に電話
で伝えた。米国防総省は藤崎一郎駐米大使に伝えた。「自衛隊の英雄的な行為に感謝する」
翌18日、米原子力規制委員会(NRC)代表団や在日米軍幹部と、防衛、外務当局や東電など日本側関係者
が防衛省でひそかに会合を持った。米側の一人はヘリ放水を称賛した。「よくやりましたね」
相次ぐ水素爆発と放射性物質の広域拡散……。原発暴走を制御できない無力な日本という印象が世界に
広がりつつあり、菅政権は「このままでは日本は見捨てられる」と危機感を強めていた。「放水はアメリカ向け
だった。日本の本気度を米国に伝えようとした」。政府高官は明かした。