軍事板書籍・書評スレ28

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422名無し三等兵
一海軍士官の太平洋戦争/斉藤 一好

開戦の年に士官学校を繰り上げ卒業した士官の体験記。
長門→雪風→水雷学校→伊400と乗艦。
コロンバンガラ夜戦で雪風にて魚雷戦を指揮。
遠距離で撃ちすぎじゃないかと苦言を呈された。
後で、「内心、恐くて早く発射した」と認めている。
93式酸素魚雷は8万円でこれを7本無駄にしたのは反省。
(1本故障で射出できなかった)
雪風時代は機関長がいかに故障箇所を見つけて修理期間を長く取るかで自慢話をした。
士官もこれを歓迎する空気があった。

伊400から晴嵐の射出は故障ばかりで3機連続出せたことなど訓練でも1回もなかった。
実戦でできるのか?って整備責任者に聞くと「大丈夫」というだけ。
訓練で上手くいかないのに、実戦で上手くいくわけない。
伊401との洋上邂逅も日本近海ですらできず。敵地近くでできるわけがないと感想。

半藤氏とのエピソードが酷い。
「同氏が文芸春秋の編集長をしていたとき、別冊の戦記物特集の中で、私は伊400の終焉について執筆するように依頼され、原稿を送りました。
ところが折り返し彼からあなたの文章は暗すぎて他の論稿との釣り合いがとれないとして、全面的に書き換えたものが送られてきました。
私はとんでもないことをするものであると思い、それを断りました。」
結局、没原稿となった模様。

太平洋戦争は大儀の無い侵略戦争で、そのお先棒担いだのを反省。
日本海軍の戦争責任についてまだ反省が足らないと認識している。
実戦経験者が安直な戦争美化とか、軍国主義に対し反対の立場をとるのは納得がいく話だとは思う。
天皇の戦争責任についても言及。天皇の責任が有耶無耶になったのは確かに政治的なものであったのは事実だろう。
東京裁判については、自虐史観、報復裁判という言説に距離をおいている。それを否定しているわけではないが。
事後法の部分を問題としているが、パリ不戦条約の存在から議論の余地は残しているのではないかという立場。
戦後、東大行って、弁護士。
考えに賛成できるかどうかは別として、自分の内心に正直な人だと思った。