朝雲寸言
米国が最新戦闘機を売らないというのなら、自力で開発すればいいじゃないか、と知人。F22ラプターのことだ。先端技術の流出を
防ぐとして米国は同機の輸出を禁止、空自への導入はほぼ絶望と伝えられているが、「それなら時間はかかっても国産機を目指す
べき」というのが、防衛問題には平均的関心の持ち主という知人の意見である。
日本には長い技術的空白がある上、軍需専門の企業もなく、防衛費はジリ貧のなかで新規開発には莫大な経費を要し、さらに
輸出不可の少量生産で単価も跳ね上がる云々と「そもそも論」から説明しても、釈然としない様子だ。
急に国産に方針転換しても空自の次期戦闘機には間に合わないのを承知の上で知人は反論する。「いつも外国頼りでいいのか。
長い目で見て国産の方向が正しいのではないか」。だが、そのための生産・技術基盤も今、危機的状況にある。年間20機近く
あった戦闘機調達は平成に入って減り始め、昨年度はついに調達ゼロとなった。主契約企業はラインの維持が困難、1000社
以上の下請けでは倒産や転廃業が続き、戦闘機に欠かせない技術が消失しかけているという。
航空宇宙工業会が先ごろ行った調査に「熟練工を育てるにはこの先20年、30年かかる」「我々を生かすつもりか、殺すつもりか」
という、悲鳴に近い回答もあったという。「買えないなら作る」という選択肢も、実は危機に瀕しているのである。
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