>>942 12月6日、試作機He162 V1の初飛行は特に致命的な問題なく行われたものの、840km/hの高速度で飛行した時に接着液が溶け出して前輪のカバーを固着させ、
やむなく強行着陸するというトラブルがあった。また、ピッチ方向の安定性が悪い上に横滑りするという問題も出た。
しかし時間的余裕がなかったため、優先度が低いと考えられたこれらの問題の解決は特に図られることがなかったのである。
そしてナチスの幹部が見守る中で行われた12月10日の2回目の飛行ではこの急ぎすぎた対処が裏目に出てしまった。
その飛行の際、接着剤の不良で今度はエルロンが固着後剥離し、それが運悪く回復不能な下降機動と横転を招いたためにパイロットの脱出を許さないまま墜落してしまう。
翼の強度や接着剤に問題があることが調査の結果分かったが、やはりスケジュール的にそれらを改修する余裕がなく、結局それまでの設計でテストが続けられることになった。
そのような経緯もあって12月22日から行われた試作2号機のテストでは速度が500km/hまでに制限された。
テストを続ける内に 1号機では見過ごされた安定性の問題が実は深刻であったことがわかり、ダッチロールに陥る傾向さえあったのである。
ダッチロールについては上半角を緩くすることで対処可能であったが、数週間の内に生産に入るためには設計を見直している時間はなかった。
結局、機首にバラストを仕込み重心を前方に移動させてピッチ方向の安定性を良くしたり、尾翼をスケールアップさせて全体的な安定性を高めたりするといった後付け的な改修を行うことしかできなかったのであった。