諸葛亮は司馬懿に何度も戦いを挑んだ。が司馬懿は応じない。
そこで諸葛亮は先の大戦の戦利品を持ち出す。
諸葛亮は司馬懿に女物の着物と髪飾りを贈りつけた。
「こうまで戦を恐れて戦おうとしないお前は、男子ではない。女だ!」というメッセージだ。
『や〜い! 女野郎。』 『 オ・ン・ナ! オ・ン・ナ! 』
司馬懿を嘲る声が脳裏に浮かんだかも知れない。
名門に生まれ、若い頃から司馬の八達ともてはやされ、
帝王の師となり、数々の功を為して今の地位まで登りつめた司馬懿さまが
女と呼ばれ笑われている。
司馬懿はその人生で自分が女呼ばわりされるなど思いもしなかったろう。
丈夫にとってこれ以上の侮辱はない。
魏将たちも司馬懿と諸葛亮の贈り物の成り行きを見守っている。
魏将たちも思っているはずだ。
「男なら絶対我慢できない」と。
義憤に駆られた者も数多いるだろう。
司馬懿の脳裏にもう一つ言葉が浮かんだ。
それが諸葛亮が先の大戦で得た戦利品だ。
“ 負け犬 ”司馬懿
出ては恐れて戦わず、戦っては大敗し、
追撃すれば宿将を失わせた
その男が、今、敵から女物の衣装を贈られ
戦いを挑まれている。
拒めるはずもない。
拒めば求心力を失い、魏での立場は危うくなる。
先の敗北から2年8ヵ月、司馬懿が腐心してきたイメージの回復が
女の衣装ひとつであっさり剥ぎ取られ
敗残者の司馬懿に引き戻されてしまった。