61 :
ベ☆ンメ・イ:
〜ですが政治青年の死〜ななしさんの場合
悪い夢を見た。まだ、出てきやがるのかこの野郎。全身汗でびっしょりだ。
秋のさなかだと言うのに。夜中に布団を蹴り上げて、大きく息をついて台所に
行って冷やしたお茶を飲んだ。夜中の三時じゃないか。もう、とっくに克服していなければ
いけないはずなのに、まだ、幼少期のトラウマから逃れられない。
親父がビール瓶を振り回してお母さんを殴る。ガキの俺はなすすべもなく
号泣していた。お母さんも泣いていた。今、俺もまた泣きそうだ。しっかりしろ!
もう30台じゃないか。過去に打ち勝て・・・俺よ・・・。
親父は頭ごなしに俺を怒鳴りつけるのが常だった。あの時の血走った目が
俺に言いようのないトラウマを与えている。職場で、注意をされることがある。
決して激しく叱責されているわけではないのだが、心臓の鼓動が異常に早くなり
脂汗が出て、行動が緩慢になる。「怒られる」事そのものが俺の精神には恐怖なのだ。
家に帰る。すぐにネットをつなぎ、韓国を罵倒する関連スレを見る。エンジョイコレアなる
サイトが一番面白い。何故かはわからない。韓国を罵倒すると満たされる。そして、
天皇や自民党という大いなる存在を肯定するレスを書いているとき、幸福感で満たさせる。
そこには確かな仲間がいる。父性にもたれかかり、守られているのを感じる。
俺自身は気づいていないが、ついに知りえなかった「父なる存在」を天皇や小泉元総理に
見出し、よりかかっているのだろう。
2009年、自民党は総選挙に負けて野党に落ちた。心の拠り所が失せた。喪失と不安。
いつしか会社に通えなくなり、一日中ネットで民主党の罵倒を続けた。犯罪予告を書いてしまい、
逮捕されてしまい、失職した。失業保険と、後は生活保護を受けた。希望は無かった。
働けないのでネットトレードに手を出した。マルチ商法もやった。全部失敗した。
多額の借金を抱えた俺には、樹海逝きしか道は無かった。俺は思った。誰のせいでもない。
脆弱な自我をついに他社への罵倒と一方的な追随で構築した俺が悪い。全て見えなくなった。