>>892の続き
「なんとしても欲しかったのは、常に良好な交話状態が続けられる機上
無線電話であった。関係者一同努力するところがあったが、雑音が多く、
これを指揮官連絡通信に使用できるまでは至らなかった」
(『ああ零戦一代』横山保/著)
「当時零戦が使用していた通信機は、九六式空一号無線電話機で極端
に性能が悪かった。雑音と精度の低さで、ほとんど利用されなかったと
言っていい。だから、戦闘機搭乗員たちがいったん母艦を離れてしまえば
彼らはもうお手上げ状態なのである」 (『暁の珊瑚海』)
しかし全く使えなかったということでもなく、岩本氏の手記の中には電話を
活用する場面が、何度か出てきます。
「電話で列機に、各自攻撃を禁じ、小隊長に続行せよと命じた」(ツリンコマリ攻撃時)
「私は電話で敵機追尾の中止を明示、上空に集合するように信号した」(珊瑚海海戦時)
「基地から電話で敵情を聞くと、西方から接近してくるとのことである」(トラック空襲時)
これによれば、条件がそろえば、列機同士や母艦・基地間との通話も可能
だったようです。
ただやはり、常に良好な交信状態が得られなければ、組織的な防空戦闘を
指揮することは出来なかったでしょう。