>>758の続き
降下角度60度というのは、欧米機と比べると浅い。その理由として、
(1)角度が深いと、投弾時にプロペラ圏内に入る危険がある。
(2)投弾後の引き起こしが困難(地上に激突したり、搭乗員が失神したりする)
(3)角度を浅くすると、弾着の左右誤差を小さくできる。
(4)60度くらいで追従量が一番小さくなる。
(追従量とは照準点と弾着点のズレで、通常約60m)
引き起こし時には強いGがかかり、対空砲火にさらされ、敵戦闘機にも狙われる
ため非常に危険。低い高度を保って、速やかに離脱する。
そのあたりを、一木栄市少尉(瑞鶴乗組)にうかがってみましょう。
「引き起こし後、エンジンを全開にし、輪形陣の中を避退する。
前方に軽巡のような艦がいるが、真横から艦橋にぶつけるような恰好で、
機銃を撃ちながら飛行する。艦橋の前を飛び越える。
やれやれと思ったら、また前に一艦いる。今度は艦尾から艦と平行に飛行
する。敵艦の右舷に自機の左翼が当たるくらいに近寄って、舷側すれすれに
同じ高さで飛ぶ。
やっとのことで輪形陣を突破する。機銃弾が前方に撃ち込まれ、海面に突き
ささる。左前方に弾が来たら右に、右に来たら左にと、いっぱいに滑らせなが
ら、高度3mで飛行する。
>>760の続き
プロペラの後流で、後方に水煙ができるほど高度は一杯に下げている。
前方に突然大きな水柱が立ちのぼる。主砲を発射しているのだ。水柱が高さ
50mくらいに上がる。これに翼でも引っ掛ければ終わりだ。
主砲弾は機銃弾と異なり、いつどこに立ちのぼるか見当もつかないので、
まったく始末におえない。運にまかせる以外にない。
こう書いていると長いようだが、ほんの2,3分の出来事である・・・」
(『世界の傑作機(33)九九式艦上爆撃機』より)
高度3mというのは、まさにプロペラが海面をたたく高さですね。
また、降下時には機軸をずらしたり、機体を横滑りさせないように注意する。
つまり、どんなに対空砲火が激しくとも、逃げちゃ駄目ということです。
艦爆乗りは、漢の中の漢ですね。