ハンドガン総合スレ32

このエントリーをはてなブックマークに追加
297名無し三等兵
基本的に、弾丸に被弾すると弾頭は対象の内部を貫通しながら通過します。
この際、抵抗によるキネティック(運動)エナジーの消費が大きい場合、周囲の組織を拡張します。
逆に抵抗が少ない場合、組織破壊は少なくなりますが、貫通力が高くなります。
ゆえに破損しやすい弾丸は破壊率が高くなり、破損しにくい弾丸は貫通力が高くなります。
また弾頭が破損しなくとも、飛来中に偏向が発生すると運動エナジー消費が増し、破壊力が増します。

銃創学では、銃器の殺傷力は大きく分けてLVW(LowVelocityWounds)とHVW(HighVelocityWounds)とに
区別され、弾頭の種類や形状によっても変わりますが、なによりもまず弾の種類によって、殺傷力は
大きく異なります。

LVWは低速弾銃創で、拳銃など小型銃器による損傷です。
HVWは高速弾銃創で、ライフル弾や機関銃弾などによる損傷です。
その違いは発射薬と弾頭との比率にあります。

LVWでは、飛来する弾丸のK(運動)エナジーが低いため、被弾部位により筋肉などの弾力性のある
部位であれば、弓矢で射られたのと変わらない損傷になります。
つまり、弾頭の通過した弾道(瞬間空洞)が、そのまま対象への殺傷効果(永久空洞)になります。

HVWでは、その弾速は音速の2〜2.5倍を超えるため、衝撃波(ソニックブーム)が発生します。
弾頭自体のKエナジーの大きさもあり、被弾した際には弾頭の通過に伴い、周囲の組織が大きく
拡張されますが、元に戻らずそのまま破壊されます。
つまり、弾頭の通過した弾頭(瞬間空洞)よりも、遥かに大きい破壊を対象にもたらします。
余談ですが、衝撃波によりKエナジーが急激に消費される、という性質により、水中へ向けて
発砲した場合、殺傷力をほとんど失ってしまう、という特質があります。

次に、被弾により肉体に損傷を受けた際の死因について述べます。

298名無し三等兵:2008/05/18(日) 19:57:00 ID:???
銃撃による死因の第一位は、失血死(Blood Loss)です。
損傷部位にもよりますが、頚動脈や大動脈を直撃されない限り、かなりの長時間生存します。
言うまでもなく、損傷面積が増えれば増えるほど出血は酷くなりますが、瞬間停止は望めません。

一方、短時間での即死、または瞬間的な行動不能を目的とした場合、手段はかなり限られます。

1.中枢神経系(脳幹)への直撃
2.RAS(細網活性組織)への刺激
3.多臓器不全の瞬間的誘発(破壊)

1は、頭の中央の脳幹を破壊する事です。当然ながら文字通り即死します。
2は、痛覚神経からの過剰な信号を感知した際、神経系が一種のショート状態になる現象で、
いわゆる神経ショック症状です。
この神経ショックはかなりの個人差があり、人によっては車に轢かれたり、場合によっては
蜂に刺されただけでも誘発します。
程度により失神、意識混濁、ショック死まで様々な症状が出ますが、脳内麻薬や覚醒剤の使用、
飲酒等により、人によっては全く発生しなくなる事があり、意図的に狙うのは困難です。
3は、バイタルを中心とした重要臓器を、広範囲に瞬間的に破壊してしまう事です。
対大型獣用大口径ライフル弾の直撃や、爆発物でも使用しない限り、まず狙う事は不可能です。

ちなみに拳銃弾のLVWでは、1の脳幹直撃、2のRASショック以外では、瞬間停止は望めません。
人体に対してですらそうなのですから、大型獣相手ではまず不可能です。
そのため大型獣相手には、狩猟用大口径ライフル、専用の破損誘発型弾頭が使用される訳です。