そのライオンの目が俺には大変異様で威圧感を与えたが、俺も負けじと
睨み返し接近した。
相手の表情は刻々と変わり、鼻に皺をよせたり、口を少しあけ低い唸り声もだしてきた。
木の間から見える射るように鋭い目をこちらも負けじと睨み返し、一歩二歩と運んだ。
顔を邪魔している木を避けるように、少し斜めにすすんだ。
全身に緊張感が走る。
俺はこのギリギリに緊迫した状態が、わが人生で最良のときに感じる。
全身全霊を打ち込み、完全燃焼できる瞬間で、しかも不思議と大変冷静だ。
ライオンの異様な目を見ているせいか、殺気が全身に浴びせかけられて
銃を握る両腕がビリビリ痺れてきたが、23m、22mとかまわず前進する。
そこまで近づくハンターはいないので現地人の道案内人は怖くて遥か後ろに離れてしまった。
斜めに進むが、どうも細い木が邪魔で困った。
両手は痺れるし、ライオンから目を離すと、気後れしたと思い突っ込んで
きそうだし、出来れば一方的に急所を狙って倒したい。
また、人間たるものそうでなくてはならない。
こんなとき、いつもそうだが、痛いまでに押し寄せてくる生命の危機感、
息苦しいまでの猛襲に対する緊迫感が全身を被う。