2007/5/3 に、19 回目の飛行試験を実施していた F-35A 初号機 (AA-1) が、高度 38,000ft を速度 800km/h で飛行中に 360 度ロールを打ったところ、
機動の途中で電力供給が停止するトラブルが発生。緊急手順によって電力の供給は回復したものの、そのまま試験を中断して Fort Worth に帰還。右フ
ラッペロンの動作に問題があったため、速度 220kt (350km/h) で着陸する羽目になり、胴体下面や降着装置を損傷した。
その後の調査で、電力供給系統に問題があることが判明。F-35 は従来の油圧式アクチュエータに替えて EHA (Electro-Hydrostatic Actuator) を使用
しているが、これにも問題が見つかったために飛行に制限が加わる事態になった(その前に、7 回の飛行試験をこなした後の 2007 年 2 月にも、飛行
試験を中断して飛行制御ソフトウェアの改修を実施している)。
当初、この件はそれほど深刻ではないということになっていたが、2007/7/10 に "Flight International" 誌が報じたところでは、実は電気系統の設計
に関わる大問題。270V の電力系統配線が蓋と接触してショートしていたもので、対策をとって飛行可能になったのは 8 月のこと。ところが、10 月末
に試運転を実施した際に F135 エンジンの過熱問題が発覚。代わりのエンジンを搬入したのは 11/14 のこと。
また、F-35C では Hamilton Sundstrand 社製の発電機が設計ミスから出力不足と判明、所定出力の 65% しか出していない。対策として F135 エンジンに
取り付けるギアボックスを設計変更することになったが、契約発注は 2007 年 8 月で、ブツができるのは 2009 年末。すでに低率初期生産は始まってい
るはずの時期。発電機についても、Hamilton Sundstrand 社に改設計を発注した。
そのほか、空対地精密誘導兵器の運用を可能にするためのソフトウェアが、2015 年以降まで間に合わない問題もある。現時点でも搭載だけなら可能だが、
これは本当に「積むだけ」。
そんなこんなで、現時点でこなした飛行試験は 19 回だけで、開発計画全体で予定している 5,000 回と比べると少なすぎる状況。そうこうしているうち
に、オランダ議会では F-35 のスケジュール遅延とコスト上昇を問題視する動きが。