Variety Japan
http://www.varietyjapan.com/news/business/u3eqp3000003rq9b.html ディズニーとドリームワークスが独占していたアメリカの長編アニメーション業界が、
急激に競争化社会となりつつある。各スタジオはそれぞれに知恵を絞り、“アニメの
王国”を脅かすチャンスを狙っている。
米20世紀フォックス・アニメーションが、CGIスタジオのブルー・スカイと手を組んで
製作した『ホートン ふしぎな世界のダレダーレ』は、全米興行成績(BOX OFFICE)
で1位を獲得。このヒットは、同社のアニメ業界での地位も確立した。
他のスタジオも、後れを取るまいと息巻いている。
米ユニバーサル・ピクチャーズは、元フォックス・アニメの幹部だったクリス・メレ
ダンドリを招へいすることに成功。『ホートン』や、『アイス・エイジ』シリーズの
ヒットを見越していた辣腕で、彼の独立系家族向けエンタテインメント会社イルミナ
シオンの設立をユニバーサルが手伝うことで、力を貸してもらうことを約束した。
契約には、イルミナシオン社の部分オーナーシップが含まれている。
最初の2作品が苦戦しているものの、米ソニー・ピクチャーズも最近になってアニメー
ション部門のトップを変更。再び、アニメ界への参戦を図る。
『ハッピー フィート』で大成功を収めた米ワーナー・ブラザースには、製作待機中の
企画が山ほどある。アニメに興味のある実写映画監督や、独立系アニメーション・ス
タジオと手を組めればと考えている。
相変わらず王座に君臨しているのは、米ウォルト・ディズニー・ピクチャーズ。しかし
その貢献者は、ディズニー・アニメーション・スタジオより、ピクサーだろう。ドリー
ムワークス・アニメーションは、1年間に2作品を製作。パラマウントが配給し、今では
『シュレック』と『マダガスカル』という強いシリーズ作品を持っている。
>>281 ここ数年の間、“CGIアニメは確実にヒットする”という業界の格言を、ことごとく
打ち砕いてきた
アニメーション。『マウス・タウン ロディとリタの大冒険』(日本未公開)、
『ルイスと未来泥棒』、 そして『サーフズ・アップ』……。とはいえ、やはりアニ
メが最も頼れるジャンルであることに変わりはなく、特にホームビデオ業界では依
然強い。
特に、米国の経済が揺らいでいる時には重要なポイントになってくる。家族を対象
とした娯楽の中で、映画は今でも“お得なレジャー”になっている。アメリカ映画
協会の調べによると、2007年に4人家族が遊園地に出かけたチケット代は、
計141ドル20セント。野球観戦なら94ドルだ。では劇場に映画を見に行く場合はどうか?
たった27ドル52セントで収まる。
3-Dに対する興味も、スタジオ側がアニメーションに力を注ぐきっかけになっている。
CGIアニメは3-D化するのが簡単で、新しい技術に興味を持つ若い観客層もターゲット
になる。ドリームワークスは、これからのアニメ作品をすべて3-D化することを決定し、
09年の“Monsters vs. Aliens”から始める。現在製作されている他の3-Dアニメには、
フォックスの“Ice Age: Dawn of the Dinosaurs”と、ディズニーが再リリースする
『トイ・ストーリー』がある。
>>282 アニメ界での快進撃を楽しんでいるのはフォックスだ。メレダンドリがいなくなって
も『ホートン』を
成功に導くことができ、持久戦を戦う力があることを証明してみせた。また、『ホー
トン』のヒットだけでなく、“Alvin and the Chipmunks”も予想外のヒット作となっ
た。「多くの評論家が目を回しました」と話すのは、フォックス・フィルムド・エンタ
テインメエントのトム・ロースマン共同チェアマン。「CGIアニメーションが素晴らし
かった。そして私たちも、この作品を家族向け映画だと宣伝するだけでなく、様々な
方面に働きかけました」。
“Alvin〜”は結果的に、アメリカ国内だけで興収2億410万ドルを記録。現時点での国
外記録は、3億5000万ドルだ。外部発注された部分はあったものの、大半は『ホートン』
や『アイス・エイジ』を手がけたブルー・スカイが制作。次回作は、夏の大作
“Ice Age: Dawn of the Dinosaurs”だ。
CGIアニメをすべて自社製作しているのはソニー。しかし、手堅い成功があったとは言
い難い。アカデミー賞にノミネートされたものの、『サーフズ・アップ』は興行面で沈没。
06年公開の『オープン・シーズン』も、波乗りペンギンの記録を少し上回っただけだった。
しかしソニー・ピクチャーズ・デジタル・プロダクションの新社長ボブ・オシャーは、
「良質なアニメを作り出すことができることを証明しました。さらに多くの観客に見て
もらえる物語を探します。また、実写とアニメをミックスした低予算映画にも、可能性
を見ています」と話した。
>>283 ソニーは、すでにビデオ&DVD用の『オープン・シーズン』続編を製作。“Alvin〜”
の成功にも注目
しており、イメージワークスが持つ実写映画における特殊効果の経験を生かした作品
を作りたい、と考えている。
『300<スリーハンドレッド>』の成功で、ワーナーは“実写映画における特殊効果
部門”で、すでに足掛かりを作っている。デジタル・プロダクションのクリス・デ
ファリア上級副社長は、06年にワーナーとして初のCGIアニメ作『アントブリー』を
公開し、で大打撃を食らった。しかしその後すぐに、『ハッピーフィート』で挽回。
現在発表されているワーナーの唯一のアニメ作品は、80年代のテレビアニメ“Tundercats”
を映画化したもの。しかし、『ハッピーフィート』の制作会社アニマル・ロジックと
共同で資金調達している新企画もあり、デファリア副社長は、近いうちに 製作段階
に持ち込みたい作品が数本あると話す。
メレダンドリのイルミナシオン社は、内部にアニメーターを持たず、映画製作者たち
とともに企画を発展させ、その後、独立系アニメ・スタジオから協力を得る手法を取る。
ユニバーサルからいくらかの援助を受け、その他は外部から募ったお金で設立した新
会社が、少しの経験と才能、そして山のようなアイディアで込み合った業界に参入し
たとしても、市場にはまだまだ空席があると言う。自分のチームを集めて、作品ごと
にスタジオを転々とできるからだ。
「ここ5年間で、クリエイティブな才能が次々と浮上してきた。1つの作品ごとに、そ
れぞれのスタジオに出入りできるんだ。僕らがチームを作り、予算を立てることが、
これまでになく自由になったよ」。
アニメの勢いは、まだまだ衰えそうに無い。