617 :
名無し三等兵:
漏れの爺は軍人では無いので申し訳無いが、爺は旧国鉄に居て電車の運転手だった。
戦争が始まると運行中、空襲サイレンが聞こえたら次の駅に全速力で滑り込めと言われていたそうだ。
最初に経験した空襲の時は、電車の轟音か?意識して無かったのか,
空襲サイレンがまったく聞き取れなかったみたで、
血相変えて走って来た車掌から言われて空襲だと気づいたと笑って言ってた。
次の停車駅は近いので慌てて速度を上げ向ったと。
駅に入ると慌てて走って来た陸軍の警備兵から急かされてホームを繋ぐ地下道に逃げたそうな。
で、上役からドえらく説教されたので車掌が告げ口したろと思ったし、
次は絶対に聞き逃さないぞと決めたそうな。
二回目の空襲にあった時は神経張り巡らして運転してせいか?
電車の轟音の中にかすかに聞こえた空襲サイレンを逃さず、次の停車駅に全速力で向うが、
電車が全速力なると縦横揺れが激しくなり、今にも電車が脱線してしまうかと思ったと言ってた。
敵の弾に当って死ぬより、脱線して死んでしまうと心底、思ったと。
次の停車駅までが途方も無く長い時間に感じたと言ってた。
空に飛行機が見え始めると通過する鶴見山からは高射砲の煙が立ち上がっているが焼け石に水。
海側の工場地帯に黒い点や火が降注いで煙があっちこっちから上がっていたし、
横浜駅の手前、東神奈川駅は火に包まれていたのを見たと。
そして次の停車駅、横浜駅に入ろうにも駅は火と煙に包まれていたので手前で停車して
乗客を下ろして横浜駅の火を消しに行ったそうな。
火を消しに行ってもロクに火を消す物が無いから物で火を叩いて消そうとしてる内に
次の焼夷弾が降注いで来たので逃げ惑うだけだったと。
結局は焼けて行くだけを見てるだけだったとも言っていた。
火の勢いは凄くて近寄れないし、何しろ熱くて肌が焼かれているようだったと。
下火になり始めた頃に消火が始まったのだが正直、遅いと思ったけど口には出さなかったと。
後にも先にも勤務中に死ぬ、本当に死ぬと思ったのは、あの全速力の時だけと!
何しろ揺れが地震より凄かったし何度も席から浮き上がったと言ってた。