自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた第57章

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947名無し三等兵:2007/08/19(日) 13:09:58 ID:???
 タビラスはいたずらっぽく笑うと、最寄の椅子にすとんと腰を下ろした。五十を過ぎた彼の目尻にはすでに幾筋もの
皺が刻まれていた。彼が目を細めると、さらにくっきりとそれは浮かび上がった。
「陸軍ばかり楽しそうじゃないの。海軍もそろそろ混ぜて欲しいところだね」
 オベアはかぶりを振った。
「楽しくなんかありませんよ?負け戦とは言いませんが正直、希望なき戦いですからね」
「そこからひっくり返したら、さぞかし楽しい戦になるだろう」
 オベアは渡されたグラスの中身を少しだけ口に流し込んだ。喉を鳴らして飲み込むと、仕方ないなというようにひとしきり
大きく息をつき、言った。
「簡単に言ってくれますねえ…それじゃあ一つお願いしましょうか」

「また軍議も通さず独断専行ですか?提督。大体、陸軍総司令のクリミ殿にまず話を通すのが筋ではないですか。
オベア殿と勝手に話を進めちゃって…後で面倒なことになっても知りませんよ?」
 おもむろにひげを撫でながらタビラスは答えた。
「クリミ殿が病身で軍の指揮からは離れておられるのは知っているだろう。サイキタイ君はお留守番と事務管理が仕事だ。
今の陸の実権はオベア君が握ってる、問題ないよ」
 フォリシアの陸軍は総司令のロビリオ・クリミが一年ほど前に体調を崩してから二人の上級将軍カルダー・オベアと
ドーマ・サイキタイの二頭体制となっていた。が、サイキタイは元よりデスクワークを好む性質であったため、ほとんど
部隊の指揮を執ることはなく交渉、事務の専任といっていい状態だったため「書き物将軍」などと揶揄されたりもしていた。
ただ、オベアや内部の人間は理想的な役割分担と評価していた。
 タビラスは再び窓の方に振り返り、輸送船に積み込まれていく騎馬を見下ろした。陽が地平線へ近付き、光の赤みを
増していた。
「さて、下に降りてハッパでもかけてこようかな。君は魔導処理を施した鎖の配置を確認してくれ」
 扉を開けてゆっくりと階下へ降りる司令官を見ながら、参謀は呆れたようにため息をついた。

 大森林の中のオベア将軍は苦い顔で報告を聞いた。
「結局、戦果があったのは初日だけという訳か」
948粂八 ◆Pphe73DZjs :2007/08/19(日) 13:11:51 ID:???
 魔法の灯りで煌々と照らされた洞窟の中、顔を伏し意気消沈した魔道師隊の様子を見て、オベアは顔を緩めて頭を振った。

「立案したのは私だ。元より君らを責める気は全くない。見通しが甘かった、それだけだ」
 事件の翌日には動物達の持ち帰った自衛隊員の髪の毛は全て人工毛になっていた。もちろんそれは彼らが日本から
急遽持ち込んだものだ。
「この人工の髪の出来はどうだ。本物とまるで見分けがつかないじゃないか。全く…素晴らしい」
 オベアは髪をつまんで皆の前に差し出した。魔道師が魔術をかけるまで、誰も人工のものだとは誰一人として
気付かなかったものである。
「我々が戦っているのはこんなものを油から作り出す怪物だ。だが、その怪物どもはあそこに陣を張ったまま一向に前に
出てこない。ということは、異界の軍は森林戦をする気はさらさらないということだな。用心深いことだ…本当に頭にくるな」
 この大森林に届くまでにかなりの補給部隊が自衛隊の爆撃機に壊滅させられていた。食料、武具にはかなりの余裕が
あったが、魔道部材はまさかこれほど大量に必要になるとの見通しがなく、本拠からの補給に頼る他はなかった。いずれ
対ゲート結界網の補修が追いつかなくなるのは時間の問題だった。
 オベアは腕組みをしたまま洞窟の壁に寄りかかった。戦いが始まってから無数についた深いため息を、彼は再び繰り
返した。肺の空気を全て吐き出して、言った。
「行くも地獄、留まるも地獄と。どうする、退くかね?」
「まさか」
 部下は皆、苦笑しながら否定した。ランプの灯りが点る洞窟の中の緊迫した雰囲気が少しだけ和らいだ。
「大臣達の前でタンカ切ってきたんでしょう?聞きましたよ」
 オベアはやめてくれよと言いたげに小さく手を振った。
 このまま為す術なく山の中で朽ち果てるというのは、誰も望んでいない。場では次第に打って出るべきの声も出始めて
いた。一人の幹部が勢いにまかせて言った。
「霧を張って奇襲をかけるのはどうだ。こちらの距離まで接近してしまえば、数は我らの方が多い」
 オベアは彼らを何度も諭し抑えた。
949粂八 ◆Pphe73DZjs :2007/08/19(日) 13:13:40 ID:???
「やめろやめろ。奴らはこちらが焦れて平地に出てくるのを待っているんだぞ?霧なんか出たらそれこそ奇襲に絶好の
機会、逆に言うと喜び勇んで這いずり出てきた阿呆を一掃する機会ということだ」
 しばらくして、座の片隅で考え込んでいた魔道師部隊の幹部が開き直ったように大きく声を出した。
「では、一世一代の大バクチといきましょうか」
 彼はテーブルに広げられた大森林の地図に筆で印を入れた。それは大森林で最も戦地に近い小高い山の位置だった。
「地精湧昇五芒陣の使用、お認め頂けますね」
 その単語を聞いて皆の眼の色が変わった。
「溶岩招来を使う気か!?我らもただでは済まんぞ!」
 幹部の一部は露骨に怒り出し、怒声を彼にぶつけた。洞窟の中は一気にざわめき始めた。
「溶岩を喚ぶほど魔力はかけません。あれは制御できぬものですから…魔力を調整して火山煙を喚んでみせましょう」
 この世界の魔法の中でも最高クラスに位置する、マグマを操り地上に噴出させる溶岩招来は、大規模な魔方陣と大量の
賢者の石を消費するため元々戦闘には向かない魔法である。噴火してしまえば敵も味方もない大災害を引き起こすそれを使おうというのだから、他の人間が色めき立つのも当然というものだった。
 オベアは場を静めて聞いた。
「煙を喚んでどうするつもりかね?」
「火山の煙の中には有毒なものもありますれば…溶岩は流れる方向を操ることはできませんが、煙であれば風魔法にて
風量風向を変えることによって制御可能です」
 火山ガスを利用した作戦を前々から温めていた魔道師は、ここぞとばかり熱を込めて面前の幹部らに説明した。
幹部達の疑問はあれほどの高度な技術を持つ異界の軍が有毒ガスなど意に介するだろうかと、いうことだった。彼は
自衛隊がまだこちらのやれることを全て把握している訳ではない、とした上で言った。
「ですから、最初の一撃で大打撃を与えねばなりません。決して気付かれぬ様、霧と、風と、溶岩招来の三種複合
魔法陣をもって」
 荒唐無稽とも思われるその案をオベアは黙って聞いていた。他の幹部達もオベアの判断に一任したようであった。
「敵に近付かずに倒さねばならないのでしょう?普通にやって普通に負けるのでよろしいので?」
950名無し三等兵:2007/08/19(日) 13:15:38 ID:???
 ランプの光に小虫が群れる中、魔道師が決断を促すように言った。オベアはしばらく考え込んだ後、首を縦に振った。
「…何日かかる」
「三十…いえ二十五日でなんとか」
「陣払いされたら終わりだな」
「はい、ですから大バクチです。が、それで森に入ってきてくれるならそれは望むところですし、そうでなければ結界網が
突破されたときでしょう」
 オベアは深く頷くと、坊主頭をぼりぼりとかいて手を頭の後ろに組み、椅子に寄りかかった。
「二十五日、結界網をもたせればいいんだな…しょうがねえなあ。全員で槍持って突撃した方がどれだけ楽かわからん
なあ」
 洞窟の中の皆で声を出して笑った。

 かつて皇帝一族の居城だった建物があった。代々の皇帝が少しずつ改装し、増築してきたその建物は城砦と呼ぶには
全く華美なものであった。やがて革命で皇帝一族は国を追われ、革命者らがその居城を乗っ取ったが、そこはやはり
政治の中心地として使用された。他に類のないその威を破壊してしまうのは、やはり共産主義者でも惜しかったのだ、と
誰もが思うだろう、レンガ積みの尖塔と白亜の寺院が立ち並ぶ様。まるでファンタジーの王宮を思わせるが、城壁の中では
世界中からやってきた観光客でひしめいていた。
 通称クレムリン。ロシア共和国の政治を一手に司る地である。多々ある宮殿の中の一室では、ハゲ上がった頭の
目つきの鋭い男がまさに室内に入室したばかりだった。使者が恐れ入るように自国の最敬礼を取ると、彼は手を振って
顔を上げるように促し、きつい顔を最大限に緩めて右手を差し出した。
「待っていたよ。ようこそ、異世界の友人よ」
 使者の右手を優しく握ると、彼は室内の中央にあったテーブルの前の椅子にドンと腰を下ろした。彼は唐突に話を切り出した。
「で、欲しいものは何だい?」
 まるで話す前から内容がわかっているかのような言い草に使者はうろたえた。震える声で、
「せ、世界に冠たるロシア共和国大統領閣下にご挨拶申し上げ…」
「御託はいい。内容と要求を簡潔に」
「はっ、はいっ!」
951粂八 ◆Pphe73DZjs :2007/08/19(日) 13:17:41 ID:???
 フォリシア王から派遣されてきた使者は大統領に今までの経緯を洗いざらいぶちまけた。大統領は普段のきつい表情が
一変、終始緩んだ顔で、ときおり微笑さえ浮かべながら使者の話を聞いていた。
 話の最中に一言二言質問を入れた。使者は彼の知識の中でできるかぎり説明した。一通り話が終わると、合点がいった
大統領は自らの手で優しく使者の手を握り込んだ。
「任せなさい。我がロシア軍が侵略者たちを蹴散らしてあげよう。こちらの武器も欲しいんだね?小銃に弾、訓練要員も
すぐに派遣しよう。もう恐れなくてもいい。安心して下さい。我々は味方になります」
 優しくかけられたその言葉に使者は涙を流して喜んだ。さっそく細部を詰めるために別室での協議が開かれることに
なった。大統領は始終使者に優しく振舞い、協議は他に任せ官邸に戻るため、迎えの車に乗り込んだ。
「後で奴らがアメリカへ行かなかったことに乾杯しよう」
 車内で上機嫌の大統領は側近にグラスを傾けるジェスチャーを見せた。
 ゲート技術を手に入れればアメリカでも欧州でも、どこでも頭上にゲートを開くことができる。そんな技術が日本に、
ひいてはアメリカ側だけに確保されてしまったのではたまったものではない。薄々日本が何かやっているということは
聞き及んでいたが、その決定的な技術が独占されかかっていたことに大統領は驚き、されなかったことに心から安堵した。
「しかし今自衛隊とやり合うことは避けたいな…我がロシア陸軍が負けるとは思わんが無傷で済む訳がないし…さて、
どうやって話をつけようか」
 側近は恐ろしい計画を語った。
「日本が拠る国を滅ぼさせてしまえば、ゲート技術はロシアが独占できますね」
 かつてKGBで暗躍した大統領はふふん、鼻で笑い答えた。
「今度は異世界で代理戦争か。君らも好きだな」
「異世界で『何か』があってもお互いこちらでは他言無用ということに…まあ、それは日本もわかっているとは思いますが」
「とりあえずまだブチ当たるのは早い。近日中に首脳会談を要請しておいてくれ」
「畏まりました」
 言うと側近は手早く彼のスケジュールの整理を始めた。
952粂八 ◆Pphe73DZjs :2007/08/19(日) 13:23:04 ID:???
今回はここまで。日本が現世界に残ったままなので、展開が複雑になってきて難しいですのう…。
953名無し三等兵:2007/08/19(日) 14:16:42 ID:???
投下乙
AKとRPGで溢れる異世界ってのが出来上がりそう。
ってかこっちの世界でも戦争になりそう悪寒。


次スレはどうなるのかな?
954名無し三等兵:2007/08/19(日) 14:45:16 ID:???
本来は950辺りで次スレ開設だから、
そろそろ頃合いなはず
955名無し三等兵:2007/08/19(日) 14:46:09 ID:???
じゃあ、建ててみます
956名無し三等兵:2007/08/19(日) 14:54:17 ID:???
>>954
確かに慣例的に950以降にスレ立てるのが常識だが
何故か阿呆が立てたスレも活用するべきだろ
957名無し三等兵:2007/08/19(日) 14:57:19 ID:???
>>956
片方は翡翠専用スレ
もう片方は削除依頼済み
ですが何か?
958名無し三等兵:2007/08/19(日) 15:01:52 ID:???
自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた 第58章
http://hobby9.2ch.net/test/read.cgi/army/1187502563/l50

建てちゃったけど、不味かった?
959名無し三等兵:2007/08/19(日) 15:22:51 ID:+7c27GMt
>>959

自衛隊がファンタジー世界に召還されますた 第58章
http://hobby9.2ch.net/test/read.cgi/army/1186475435/
自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた第58章
http://hobby9.2ch.net/test/read.cgi/army/1186474793/

すでに2つも立ってンだが。
960名無し三等兵:2007/08/19(日) 15:29:02 ID:???
自衛隊がファンタジー世界に召還されますた 第58章
http://hobby9.2ch.net/test/read.cgi/army/1186475435/
↑削除依頼済み
自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた第58章
http://hobby9.2ch.net/test/read.cgi/army/1186474793/
↑翡翠専用スレ
961翡翠(星砂) ◆X9uEcr1WoA :2007/08/19(日) 16:02:42 ID:???

というか本当にこんな遣り口でいいのだろうか。(==
毎回非常に疑問に思う。

・・・今に始まった事では無いが。(第7章など)
962名無し三等兵:2007/08/19(日) 16:04:33 ID:???
>>961
だから越境してくるな。
自分専用スレがあるんだから
963翡翠(星砂) ◆X9uEcr1WoA :2007/08/19(日) 16:20:57 ID:???

962 は ここのスレ主?

それとも運営その人?

そもそも専用スレとは?
964名無し三等兵:2007/08/19(日) 16:29:48 ID:???
>そもそも専用スレとは?
自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた第58章
http://hobby9.2ch.net/test/read.cgi/army/1186474793/l50
965名無し三等兵:2007/08/19(日) 16:41:36 ID:???
粂氏久々の投下乙であります!
プーチンまで出してくるとは、これからの絡みが楽しみ。
966翡翠(星砂) ◆X9uEcr1WoA :2007/08/19(日) 16:43:45 ID:???

・・・、それで答えになっているなら、

テンプレがどうのこうの、など、「 説得力ゼロ 」になる訳です。
というか不満なら何をやってもよい、という事になります。

つまり、翡翠が重複スレを今、新たに建てても良い、
という事になりませんでしょうか。

「規則に雁字搦め」「組織論が総て」の自衛隊が
御題の半分を占める当スレでは、
如何にも住人のモラルが問われ。

「08月19日付け」第58章を建てるには全く異論は無いのですが。
967名無し三等兵:2007/08/19(日) 16:47:57 ID:???
>>961
>というか本当にこんな遣り口でいいのだろうか。(==
>毎回非常に疑問に思う。

何度も言うが、つまり「立てた者勝ちだから敗者は黙ってテンプレ改変に従え」とでも言うつもりですか?
なにその石原莞爾。スレ住人を馬鹿にするのもいいかげんにしなさいよ。
968名無し三等兵:2007/08/19(日) 16:50:24 ID:???
>如何にも住人のモラルが問われ。
まさに
お 前 が 言 う な
だな。
969名無し三等兵:2007/08/19(日) 16:56:07 ID:???
>>966
>テンプレがどうのこうの、など、「 説得力ゼロ 」になる訳です。

いや、一番大事なところを見落としてます。

『テンプレやガイドラインの継承などに不備があった場合、後継スレッドと認められるか?』

という点です。
タイトルだけ継承しても中身の内容が違えば、違うスレではないのでしょうか?
後継スレとしてその中身の内容を合致させるためにも、テンプレやガイドラインは
きちんと踏襲すべきで、それができてないのならそれはもはや別物ではないでしょうか?
970名無し三等兵:2007/08/19(日) 17:05:29 ID:???
自衛隊がファンタジー世界に召還されますた 第58章
ttp://hobby9.2ch.net/test/read.cgi/army/1186475435/

はテンプレが張っていない上にタイトルが間違ってる。

自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた第58章
ttp://hobby9.2ch.net/test/read.cgi/army/1186474793/

はテンプレが勝手に大幅に改変されてる。
翡翠氏はその辺どう思ってるのかな。立てた者勝ち理論?
「というか不満なら何をやってもよい、という事になります」って言ってるけど
最初に不満からテンプレ改変という暴挙に出たのは誰でしたか?

あと粂氏投下乙であります!
前回の動きから米も異世界に参戦か?と思いましたがまさかおそロシア様とは…
続きも期待して待っています!
971名無し三等兵:2007/08/19(日) 17:35:46 ID:???
>>952
投下乙でした。
殺伐としていても時々投下してくれると凄い嬉しいです。しっかり読んでいますから。

>>966
ぼかぁ君のやり口が最低に嫌いだよ。
テンプレがどうのこうの、ってそれスレが成り立つ為の最低限じゃないか。
前にも言ったけれど何故そうやって他人に嫌われる行動をとる、それもわざと。
嫌われたいとしか思えない。
972名無し三等兵:2007/08/19(日) 22:22:25 ID:???
久々にスレ伸びてるなと思ったら
粂八どんのおつとめ来てるうう
役者が揃ってきた感じですな! 乙!
973物語は唐突に ◆XRUSzWJDKM :2007/08/19(日) 22:44:12 ID:???
西暦2020年12月16日 13:05 日本国北方管理地域 第18地区のはずれ

 外れと表記されているが、そこは地域名がないだけで距離的に言えば別の地区とでも言うべき場所だった。
 闇夜よりなお黒い雲に満たされたそこには、生命反応と呼べるものが何もなかった。
 草木は枯れ、鳥どころか虫一つ見当たらない。
 時折起こる落雷は、どうも気象学を無視している様にしか思えない。
 そんな場所へ、彼らは到着した。
 弾薬こそ減っているが、一人も欠ける事無く、傷一つ負わずに。

「さすがは現代科学文明だな」

 弾薬もバッテリーも十分な車内で、佐藤は笑顔で言った。
 雲霞のごとく湧き出ていた敵軍の姿はない。
 強引に突っ切り、そして増速して走り出した車輌部隊に追いつけず、遥か後方で支援部隊に叩かれ続けている。
974物語は唐突に ◆XRUSzWJDKM :2007/08/19(日) 22:44:55 ID:???
「車輌で行ける所まではいくぞ、出せ」

 運転手に命じ、彼らはさらに前進を開始した。
 空は暗く、地面は不気味にひび割れている。
 その中を、ライトを煌々と照らした車輌部隊は前進していく。
 彼らの前進にあわせ、遺跡の中から無数の敵が出現する。
 古びた甲冑を纏った異形の騎士団。
 見上げるような一つ目の化け物。
 それらは武器を振り上げ、雄たけびを上げて突進を開始する。

「一尉?」

 その光景を見ていた二曹に尋ねられた佐藤は、全く動揺を感じさせない口調で命じた。

「撃て」
975名無し三等兵:2007/08/19(日) 22:45:13 ID:???
粂八氏、乙です。
ロシアが出てきましたか。異世界側がだんだん不幸になる気がして来た。
976物語は唐突に ◆XRUSzWJDKM :2007/08/19(日) 22:45:50 ID:???
西暦2020年12月16日 13:20 日本国北方管理地域 第18地区のはずれ

「周囲に敵はおりません。
 車輌の点検終了。全車戦闘可能。
 先ほどと同数が相手ならばもう一度できます」

 報告を集計した二曹が告げる。
 それを聞いた佐藤は軽く頷くと、ハッチから身を乗り出し、マイクを入れて口を開いた。
 
「出発する!戦車前へ!」

 佐藤は声高に宣言し、すぐさま装甲車の中へと潜り込んだ。
 小休止と点検、弾薬の再分配を行った彼らは、出発時となんら変わらない戦闘能力になっている。
 前方に広がる遺跡は、分りやすく例えるとローマ帝国のコロシアムを連想させる巨大な建築物である。
 戦車の両脇に普通科部隊を進ませてもなお余裕のある巨大な門を潜り、そして彼らは遭遇した。
977物語は唐突に ◆XRUSzWJDKM :2007/08/19(日) 22:46:36 ID:???
<<前方に死体の山があります。中央に一人生存者らしい、訂正、敵のようです>>

 無線機から先頭の戦車長の報告が入る。
 彼らは次々と増速し、遺跡の内部へと入り込む。
 砲塔を旋回し、あるいは普通科を降車させ、戦闘準備を整える。

「良く来たな人間!歓迎するぞ!」

 たった一体だけ、舞台らしい場所の中央に立っていたそれは、遺跡中に聞こえる声量でそう言った。

「知能があるみたいですね」

 装甲車の中でその様子を見つつ二曹は言った。

「そうみたいだな。覚悟しろ魔王め!とでも言ってみるか?」 
「時間の無駄でしょう」
「そうだな、撃て」
978名無し三等兵:2007/08/19(日) 22:48:52 ID:???
支援
979物語は唐突に ◆XRUSzWJDKM :2007/08/19(日) 22:49:19 ID:???
西暦2020年12月16日 同時刻 日本国北方管理地域 陸上自衛隊ゴルソン大陸方面隊第18地区駐屯地


 薄暗い指揮所内では、ホワイトボードに書かれた戦況と無線の交信内容に誰もが注目していた。

「佐藤一尉の部隊は遺跡へ突入したようです」

 通信士の報告に誰もが注目し、戦況図に新たな記載がされる。
 誰もが着崩れた戦闘服を着ている中で唯一完璧な背広姿の鈴木は言った。

「そうですか。それでは連絡を絶やさないようにしてください。
 それと、米軍へ連絡を」

「なんと伝えますか?」
「状況、カッツェンボルン。グスタフを待て」
980物語は唐突に ◆XRUSzWJDKM :2007/08/19(日) 22:49:49 ID:???
「は?」

 聞きなれない言葉に、通信士は思わず聞き返す。

「状況カッツェンボルン。グスタフを待て。です。
 その通り送れば伝わります」
「了解しました」

 事前に定められた暗号文らしいと認識した彼は、それ以上の疑問を押し殺して言われたとおりの言葉を伝えた。

<<状況カッツェンボルン了解、フォンブラウンは待機に入る>>

 帰ってきた内容を伝えると、鈴木は驚くほどの無表情になった。

「佐藤一尉の部隊と連絡が取れなくなったら教えてください。
 私は少し休憩を取らせていただきます」

 前半を通信士に、後半を指揮官に言うと、彼は指揮所に隣接した部屋へ足早に移動した。
 指揮官以外の殆どの人間が先ほどのやり取りに不可解な顔をしていた。
 しかし、ごく一部、仮想戦記と呼ばれるジャンルを好んでいた者たちは、その言葉の意味を理解し、顔を青ざめさせた。
981物語は唐突に ◆XRUSzWJDKM :2007/08/19(日) 22:50:33 ID:???
本日は短いけどここまで
982名無し三等兵:2007/08/19(日) 22:58:03 ID:???
スレの最後で盛り上がってまいりました
983名無し三等兵:2007/08/20(月) 00:17:23 ID:???
>>981
shine
984名無し三等兵:2007/08/20(月) 00:18:33 ID:???
>>981
投下乙
985名無し三等兵:2007/08/20(月) 00:27:15 ID:???
>物語は唐突に ◆XRUSzWJDKM
うざい
空気読め
986名無し三等兵:2007/08/20(月) 00:29:30 ID:???
「こっちが気持ちわるいっちゅうねん」



 エセ関西弁を言いつつ動画を終了させる。

 まったく、正月早々不快な思いをしたなぁ。



 蛍光灯の明かりが照らし出す室内。

 コンクリートが打ちっぱなしになっている殺風景な室内は、思い思いの体勢でくつろいでいる自衛隊員たちで溢れている。

 最近の娯楽室はコンセントを増設し、隊員たちがノートパソコンを使いやすいようにしているから助かる。

 おっと、自己紹介が遅れたな。



「僕の名前は、江戸川コナン!」
987名無し三等兵:2007/08/20(月) 00:35:40 ID:???
物語氏乙です。
988名無し三等兵:2007/08/20(月) 00:39:54 ID:???
>>986
バーローwwww
989名無し三等兵:2007/08/20(月) 00:41:56 ID:???
     凵@     ○   ∇ 、,、´`゙;~、  ';冫 ☆
           ┏  ━ゝヽ''人∧━∧从━〆A!゚━━┓。
 ╋┓“〓┃  < ゝ\',冫。’ 、 ._〃Ν ; ゛△│´' 'ゝ'┃...   ●┃
 ┃┃_.━┛ヤ ━━━━━━,/\.\━━━━━━━━━ .━┛
        ∇        //\\.\ 火、ヽ,,"∧.: .┨'゚,。
           .。冫▽ < //   \\.\ 十   乙  ≧   ▽
         。 ┃ . Σ、\.上    \\|, 、\'’│   て く
           ┠ .ム┼\\.  戸 /// ,,’.┼ ァΖ.┨ ミo'’`
         。、゚`。、   i/\,\// レ' o。了 、'’ ×  个o
        ○  ┃   `、,~´+√ ▽   ',!ヽ.◇    o┃
            ┗〆━┷ Z,.' /┷━''o ヾo┷+\━┛,゛;


うはwwwwwwwwwwwwwwバーーーローーーwwwwwww

990名無し三等兵:2007/08/20(月) 00:55:26 ID:???
物語氏投下おつ!
スレの最後に締めたね。
991名無し三等兵:2007/08/20(月) 02:03:38 ID:???
物語氏乙
992名無し三等兵:2007/08/20(月) 05:00:21 ID:???
>>981
トリの投下お疲れ様です物語殿。
佐藤、生き残ってくれよ…
993名無し三等兵:2007/08/20(月) 06:24:13 ID:???
物語殿は死ね
994名無し三等兵:2007/08/20(月) 06:26:44 ID:???
ゼロの使い魔
995翡翠(星砂) ◆X9uEcr1WoA :2007/08/20(月) 06:53:37 ID:???

>>970 ほか

言うまでもあるまいよ。もう何度言ったかわからん。
つうか最後まで融和を叫んだ翡翠である。
南北朝を解消させようとすりゃ948まで埋めて待ち伏せはするわ、
翡翠が2chにインすりゃレスは飛んでくるわ。
・・などと劇中の伽羅っぽくレスをつけるのもアレだ。
なにより状況がどうあれ、2職人が投下した変化のが最優先だ。

995ゲット。
996翡翠(星砂) ◆X9uEcr1WoA

魔王が世界の覇権の分割を提案、J.S.D.A司令部側は拒否。
但し諸王内には呼応の動きも。

■魔王、世界の覇権分割案を提案か。
■魔王城に侵入中の勇者パーティとJ.S.D.A3軍選抜挺身隊
(第1空挺団・西普連主体)は完全拒否の模様。

J.S.D.A司令部付の魔道士ギルドの緊急伝によると、
魔王城の最下層まで突入した勇者パーティーとJ.S.D.Aに対して魔王側が、
旧大陸を東西に分割し、東側を魔王領、
西側をパーティーJ.S.D.Aが管理することを提案したと報じた。
勇者パーティーは無論のこと、
J.S.D.A側は即座に拒否したといが、提案の詳細は不明である。

J.S.D.Aの各3将は、
「魔界の提案に断じて応じない。これは、われわれの魂の問題だ」
と参戦諸国のすべての王侯に述べ、
人類世界から魔王の影響を除く必要性と姿勢を強調した。

諸王の中では魔王の提案に前向きな受け止めもあったが、
J.S.D.A司令部当局は人類の未来を魔王に譲り渡す「大きな過ち」だと主張。
J.S.D.Aと同盟国との関係を台無しにする気は無いと交渉決裂を断行したという。