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>>691のつづき>
中共軍は、日中戦争の主要会戦のいずれにも参加しなかった。一九三七年の上海戦にも、
広西省の李宗仁将軍が日本軍に大打撃を与えた一九三八年の台児荘戦(日本では徐州会戦と
いわれている)にも、また、同じ年の武漢三鎮の防衛戦にも、長沙戦にも、後になってはサ
ルウィーン戦とビルマ戦線にも、彼らは加わらなかった。
中国共産党の主義主張に共鳴しているアメリカ人の証言でさえも、中共軍が日本軍の主要
駐屯地のどれ一つも、また中国鉄道を支配している日本軍をも攻撃したことを認めていない。
このことは、たとえば、セオドア・ホワイトは、彼とアナリー・ジャコビーの共著でベスト
セラーとなった『中国からの雷鳴』(Thunder Out of China)のなかで、次のように述べている。
「中共軍は、日本軍の小部隊を奇襲する機会に恵まれたときにのみ、戦闘を行なった。…
(略)…日中事変中の主要会戦で日本軍のはげしい攻撃に耐え、日本軍にかじりつき、そし
て日本軍に殺されたのは、国民政府軍の疲れきった兵士たちであった。」
私は中国赴任後、直ちに中国の現状を理解したといおうとしているのではない。私の上司
であるマーシャル参謀総長と同様に、私はスチルウェル将軍の報告によって、中国に対して
偏見をいだいていたが、マーシャルやスチルウェルとちがい、共産主義者の脅威について注
意しなければならない、ということを過去において経験していた。中国共産主義者の非情な
目的をはっきりと確認するようになるには、いくらか時間がかかったけれども、私は中国赴
任の当初から、彼らについて夢はいだかなかった。