学園島戦争 開始15年目

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612名無し三等兵:2006/07/23(日) 01:32:24 ID:???
「貴様も見たのか?我の対抗者になりうると言うその男を」
「は。この眼で確かに」            
                              
 答える騎士は外面上は平静そのものを装いながらも緊張に震えていた
 何しろ王の短気は病的なほどで、近隣諸国の民ですら一度は耳にするほど強烈な物である
 その怒りに触れて父代からの重臣すら容赦なく処罰されている
 ゆえに怯えを見せることは許されない。王は卑屈な者や臆病な物を羽虫の如く嫌う
                                   
「ほう ならばどう思う」                
                                
 騎士の緊張に気づかなかったのか、そもそも視界にすら入っていないのか
 王は城壁の建築作業を見守りながら伝令の兵士に再び尋ねかけた
                            
「と申しますと?」                     
 王の言葉に主語は無い。その言葉の真意を測り損ねた伝令が尋ねる
                             
「たわけ、その男が我の対抗者たりうると思うかどうか聞いているのだ
 なに、なんと言おうと貴様を罰する心算は無い故、安心して正直に申せ」
「は、ならば恐れながら申し上げます              
 彼の者が騎士団の包囲を突破し、謡神官と騎士団長を一瞬の内に捕らえた手際
 また謡神官が救われた際には、地竜を一瞬にして絶命させたとも聞き及んでおります
 これらの事を勘案するに、単純な個人単位の戦闘力ならば王に限りなく近い物を持っているものと」
                               
 騎士は正直に自分が感じた事を報告する            
 そこに虚偽も装飾も一握りたりとも含まれていない         
 そういう物を含めることが出来ないほどに、ただ眼前の王の存在に圧倒されていた
 だがこの騎士は気づいていただろうか                  
 自らのその視線が、畏怖しているはずのものに見惚れたかのように釘付けになっていた事に
613名無し三等兵:2006/07/23(日) 01:33:31 ID:???
「そうか。我に限りなく近いか」
                        
 淡々と、何事も無かったかのように王は繰り返した
 機械のようなその姿に一切の変化は無い          
 ただまっすぐに、作業を見つめるだけの王の横顔があるだけである
 だが、どうしてだろう。騎士にはその横顔が微かに喜びの色を移しているように見えた
                                 
「大儀であった。下がってよいぞ」              
                            
 退出を許可された騎士が名残惜しげに一礼しその場を後にする
 王は動かず、淡々と城壁の建築作業を見守り続けるだけ
 ―――去り行く騎士と入れ替わるように、新たな人影がゆっくりと王に近づいていく
                                     
「我に近い――――か。本当ならば困ったことになる」    
「ならば、消しますか?」          
                      
 誰にとも無く話しかける王に近習の剣士が尋ねる
 元は暗殺業で生計を立てていた者であるが、
 忍び込んだ寝室で王本人に返り討ちに会い、命を助けられて以来
 近習として王の身の回りを守っている者だった
                           
「それではつまらぬ―――だが、のうのうと到着させてやっては
 あの人心を煽る能無し神官長とその一派を始末する口実が無くなってしまう―――か」
「では、いかに」                          
「4日ほど奴らの足を止めよ。方法は問わん       
 それだけ奴らの足を止めれば、約束の刻限までに辿り着くことはあるまい」
「兵をお借りしても?」                
614名無し三等兵:2006/07/23(日) 01:34:56 ID:???
 軍事的な手段に応じてもよいのか、と近習は訪ねる
                         
「馬鹿め。それでは護衛につけた騎士団と同士討ちになろう
 あの辺りには、討伐待ちのちょうど良い連中がうろついている故、其れを使うが良い」
「御意に」                               
                             
 近習は踵を返し任に向う                  
                              
「ああ、待て。                       
 もし奴が貴様の眼鏡に適わぬような無能なら速やかにこの世から消せ
 無能と並び比べられることなど我にはとても耐えられん」
「御意」                      
                            
 改めて一礼をする近習に王は早く行けとばかりに手を振って見送る
                         
「我の対抗者―――か                       
 本当に我と並び立つほどの者がこの世に居るというのならば、どれほど―――」
                               
 王の視線は変らず城壁に向けられている              
 だがその焦点は見果てぬ彼方に重ねられている             
 見果てぬ理想郷を捜し求める探求者のように遥か彼方へ――――
                             
「―――ありえぬ話、すべては遠き夢よ              
 仮にそのような者が居たとしても、何れこの手で消さねば為らぬ―――か」
                                
 呟く王もまた、次の雑務の処理に向うために城に向って馬を進ませる
 其れはまるで夢破れた子供が強がりながら帰途に着くような姿だった
615名無し三等兵:2006/07/23(日) 01:36:27 ID:???
 この世界の夕暮れがやってくる。
                         
 砲声が轟き、砲煙が煙る、黄金色に染まった世界の中で、
自衛隊の生き残り達が、休む間も無く今後の事を相談をしている。
                           
 今井は砲煙の風上に位置する砲列西側後方にいた。
今井の遥か前方、偽装ネットも被せないまま剥き出しにされた砲列のあたりでは、
汗と埃に塗れた屈強な男達が、砲列の砲弾の準備に余念が無い。
                         
 ピュウ、、ピュウ、と、風が鳴いている。
                            
風に揺られて背後の草の海が、音もなく滑らかに揺らめいている。


616名無し三等兵:2006/07/23(日) 01:37:26 ID:???
 この世界の風の吹く中、             
この世界の総てを震撼させる現世の砲撃の震動の波動の中、
今井はヤる事も無くなり、手にする槍を弄(もてあそ)ぶだけであった。
槍は、猛禽の様な斎藤の手にする小銃を切断し、彼をも殺す寸前までいった手練の男の槍であった。
そして今井が扱うには、少し重過ぎる槍であった。
                               
 「 騎馬戦か、騎馬の突撃と向き合う時には頼りになるんだがな 」
                                  
今井には、未だにこの槍が、鉄の塊である現世の小銃を切断した事を信じられないでいる。
この頑丈で重い槍を、斎藤氏ほどの男を倒しかけた兵(つわもの)が操っていたとしても。
                              
 ( となると、、、魔法か )               
                             
 1人でそう結論づけていると、         
本田氏と斎藤氏らの相談が終わったらしい。          
彼らは再び車上の人となって、慌しく陣営から出ていこうとしている。
 ( どこへ行くのかな? )           
と、今井が考えていると斎藤氏が乗った車両がやってきた。
                        
黄金色の光に照らし出された斎藤氏は
「 ちょっと、部下を回収しに行ってきます 」
と、それだけ言うと、          
本田氏の車両群の後を追っていってしまった。
                   
 ( ・・・空爆は?砲撃は?? )
                         
・・・あの空爆と砲撃の中を、救出にいくつもりなの??
・・・と、今井が気がつけば、あれほど世界を震わせていた砲撃と空爆の音が、止まっている。
そして再び、戦闘車両の群が北の大地へと動き出していた。
                        
空自のジェット機は・・・どうなったんだろう・・
617名無し三等兵:2006/07/23(日) 01:38:47 ID:???
 しばらくして、婦人自衛官の動きも慌しくなってきた。
                                
彼女らの頭格らしい南嬢の回りに、婦人自衛官達が幾人も集まってきている。
( 彼女達も出動するのか )                 
何となく近寄って「 何か手伝いますか? 」   
と車の中の南嬢を見上げると、南嬢はあまり迷った様子も無く
田中嬢と相馬嬢の運転する車両を指定してきた。
 1般人の今井が                     
同行を断られなかった所を考えるに、膨大な犠牲者が出ているのだろう。
                              
今井が南嬢にささやかな協力を申し出たその時、             
南嬢は周りの娘達の中での1番の年長者らしい落ち着いた雰囲気で今井に礼をのべていたのだが、
田中嬢は( 1般市民がしゃしゃりでるな )のオーラが、凄かった・・・。
                               
 ・・・田中嬢の視線に小さくなっていても生産性が無いので、
気付かぬ風を装い、前に座る相馬嬢に話をふってみる。
                                 
「 空自の人達、着陸はどうするのでしょう? 」( ここ、草地があるだけの荒地ですよ? )
「 乗り捨てるしかないと思います・・ 」と、相馬嬢。
「 今、パイロットの人達が降りてくる場所を確保しに行くんですよ 」
「 もちろん、まだ生きている人達の救出も、です。 」
                       
( ?????? )             
                               
 他の婦人自衛官2人も話に答えてくれる1見、和やかな雰囲気の中で、
突然今井は、強烈な殺気を感じる。            
何気なく今井が360度を確認するふりで首を左右に振ると・・・
( 田中嬢が女の子で良かった )             
という“ 恐ろしいもの ”を、横目の端に見た様な気がした・・・。
618名無し三等兵:2006/07/23(日) 01:40:59 ID:???
 車両に揺られて1行が北に進むにつれて、      
倒れ付している人馬よりも、肉片と鉄片のが多くなっていった。
やがて、巨大な穴が点在する地点にさしかかった頃、ここらが彼女らの指定の場所なのか、
                                
静かに・・車が止まった。              
                            
田中嬢が率先して勢い良く飛び出す。             
他の女性隊員達がその後に続いた。             
                             
彼女達が、           
まだ、生きている人はいないかと、             
まだ、敵対的な存在が生きてはいないかと、        
迅速に、細やかに、定められた確認作業をクリアしていく。   
                               
 今井は、その良く訓練された体力と動きについていけず、   
( 生存者が見つかるのをまって、それから手伝おう・・ )   
                             
と、情けなくも横着する事に、決めた。          
鍛えている彼女らに比べて、今井の体力の無さは絶望的であった。
                           
・・・。                        
彼女達の体力に、今井は目を見張るばかり、で、あったが・・・
その中でも際立った速さの田中嬢には、ある種の危険を感じ始めていた。
 ( ・・・チト急ぎすぎじゃないかなあ )       
                              
今井の心配を他所に、                    
田中嬢は無限の体力をもっているかのように次々と確認をクリアしていく。
                                
そうして、田中嬢が50体程の死体の確認をし終えた頃、
田中嬢が次の死体の確認へと移る瞬間・・・死体が後ろから田中嬢の足首とズボンを捕まえて、
彼女を地面に引き摺り倒してしまったのであった。
619名無し三等兵:2006/07/23(日) 01:42:03 ID:???
「それでは失礼します」
                                
 国防色のM−14大使はそう言って頭を下げると、森の中へと消えていった。
 日付をまたいでも『会談』は終わらず、その後翌朝の七時まで続いた。
 何しろ、聞けば答えてくれる相手がいるのだ、情報収集活動としてこれほど楽な事はない。
 もっとも、人から聞いた話だけで判断材料とするのは危険である。
 その為、地形に関しては実際に偵察活動および測量を行う事によって確認する事となったらしい。
 それによって今後彼女から入る情報の正確性を確認しようというのだそうだ。
 しかし、ここで仮眠を取ってから帰還するとは、なんとも豪胆な事で。
                          
「陸上の偵察は出さないのでしょうか?」
                               
 先ほどからひっきりなしにヘリコプターが離陸し、北へ南へ西へと飛び去っている。
 監視塔で共に双眼鏡を握っている三曹が尋ねてくる。
                            
「バイク自体は頑丈でも、乗っている偵察隊員は生身の人間だからな。
 ブービートラップや弓矢でも簡単に死んでしまう。
 それに、地形がどうなっているのかわからないのでは87式を出せないだろう?」
「まぁそりゃそうなんですが・・・」
「どうした?珍しく歯切れが悪いじゃないか」
「いや、その」         
                    
 三曹は口ごもった。                        
 この27歳のWACは、モデルでも通用するであろう外見と、90式の零距離射撃にも耐えるのではないかと思われる巨大な胸部装甲を持っている。
 何でも歯切れ良く喋り、恐らく文字だけで表記すると30近い男性の『鬼軍曹』を想像する程に口が悪い。
 その彼女が口ごもるとは珍しい。                
 何か重いものが落ちる音がしたのは、その瞬間だった。
620名無し三等兵:2006/07/23(日) 01:43:30 ID:???
「?」          
                     
 音がしたのは彼の後ろだった。         
 見ると『敵味方識別帳』と書かれた分厚い本が落ちている。
                       
「なんだこりゃ?いつの間に支給されたんだ?」
                            
 なぜか拾わせまいと邪魔をしてくる三曹をすり抜け、本を手に取る。
 最初のページには、自衛隊の書式には従っていないタイトルがあった。
                               
「なになに?ファンタジー作品における魔法生物設定資料集〜これで異世界に行っても大丈夫!〜第32巻?」
                                 
 中身を見る。                        
 吐き気を催すほど、あるいはトイレの個室で主砲による連続射撃を行いたくなるほどにリアルに書かれた生物の群れがあった。
                                                
「なんだあこりゃあ?私物か?」                      
「は、はい、申し訳ありません。自分の私物です」      
「そうか、しかしこりゃあ、役に立ちそうなものだな」      
                            
 他のページを確認する。            
 エルフのページか。                 
                                 
「なになに?実在はしていたけど、思っていたよりも高慢ではないようだ?」
「え、ええ、伝え聞くところによるともっと高慢だとばかり思っていたので」
                               
 いつの間にか双眼鏡で森を眺めつつ三曹。      
 いきなりどうしたんだ?           
621名無し三等兵:2006/07/23(日) 01:44:35 ID:???
「三尉殿」                
「なんだ?」                     
                               
 上官に話しかけているというのに、双眼鏡を手放そうとはしていない。
 失礼な奴だ。                     
 それに何処を見ているんだ?そっちは海だぞ。
                         
「可愛らしい女の子みたいだ、とか、思ってませんよね?」
「ああ、大丈夫だ。脳内でもちゃんと彼と表記している」
「ならいいです」                
                        
 あぶないあぶない。                  
 こいつはなんか自分を男性と考えるなんとか同一性障害らしい。
 それで自衛隊に入ったそうだ。            
 が、あいにくと自衛隊は男女差別が厳しい。     
 なにしろ、数年前までは戦闘部隊への配置は形だけだったほどだ。
 ここ数年続く好景気で、さすがに人手不足も限界となった現在では、逆に珍しくもない。
 軍隊だけあり制度改正までは長かったが、こうと決まった後はあっという間にこの状態だ。
 今じゃあWACなんて珍しくもなんともない。
622名無し三等兵:2006/07/23(日) 01:45:24 ID:???
「ヘリが何かを見つけたら、我々が出張るという事はあるのでしょうか?」
「俺たちは正門警護が任務だからなぁ。           
 でもまあ、本土から警務隊が到着したらありえるな。とはいえ、表に出たいか?」
「はい、出たいです」                   
                        
 三曹は即答した。           
 今度は空を眺めている。           
                             
「危険だぞ、いつドラゴンやらオークやらが出てくるかわからんぞ?」
「構いませんよ。交戦許可さえいただければ、我々には銃火器があります。
 車輌だってありますし、支援要請すればきっとアパッチや特科の支援もあるでしょう?」
「まあ、見殺しにされる事はないだろうな」
                                
 ただでさえ人手不足の自衛隊で、交戦による大量消耗など許されるはずもないからな。
 減り続ける人員を護るため、特に陸上自衛隊では少数で多数を殺せる兵器の増強に走り続けている。
 戦闘ヘリ部隊の増員、車輌の増強、特科の完全自走化。
 陸海空の相互支援の促進とデータリンクによる総合的な戦闘能力の向上。
 予算獲得のためのお題目ではなく、国防のための戦闘能力を維持するために、自衛隊にはそれが必要だった。
                                
「だったら、むしろこの新世界を楽しまないと」             
「お前なぁ、相手が大昔の装備だったとしても、矢を射られて、あるいは剣で切られれば俺たちは死ぬんだぞ?」
「その前に射殺すれば問題はないでしょう?」        
                       
 まあそうだけどな。                
 あっさりと射殺とか言うなよ。おっかない奴だな。
623名無し三等兵:2006/07/23(日) 01:46:43 ID:???
「状況を説明する」            
                                 
 交代が終わったばかりの俺たちは、現在完全装備でこの部屋に集合していた。
 居並ぶ幹部たちに混じり、海自や空自も来ている。
                       
「夜間偵察中のヘリオス78が撮影した映像だ」
                        
 室内の照明が落とされ、スクリーンに映像が出てくる。
 暗闇に閉ざされた世界に、一つだけ明かりがある。
 飛行に伴う振動を感じさせないスムーズな接近とズームが行われ、その正体が明かされる。
                                 
「こりゃあ、酷いな」                
                         
 誰かが一同を代表して感想を述べた。      
 私語に対する叱責はなかった。          
 非武装の民間人に対する大量虐殺行為。      
 問答無用の国際法違反だ。         
                               
「襲われている村落は、事前に得た情報によるとダークエルフの村落らしい。
 なお、ダークエルフとは森を離れたエルフの事を指しているそうだ。
 彼らは、えー、ドワーフという種族と共に行動する事が多いらしく、ここの村落でも共同で暮らしているそうだ」
                                   
 年配の三佐が報告書を困惑しつつ読んでいる。      
 まあ気持ちはわかるよ。            
 お?吉永一佐が立ち上がったな。       
624名無し三等兵:2006/07/23(日) 01:47:54 ID:???
「彼らダークエルフとドワーフは、火や森を切る事に対して全く気にしないらしい。
 また、ドワーフに至ってはもともと大地の精霊ということで、自前の炭鉱や鉱山を持つほどだという。
 そういった資源を見つけ出すことにも長けているそうだ。                 
 そして、両者共に人間ではないという事で、この世界の連中とはあまり折り合いが悪いという。
 我々の友人として暖かく迎え入れるには十分な要素を兼ね備えている」  
                                   
 やれやれ、国益を重視する事はいいが、そこまで露骨に表現しなくてもいいだろうに。
 と、なると、こんな時間にお偉方が勢ぞろいして、しかも俺たちが完全武装で非常呼集された理由は一つか。
                                            
「大陸派遣隊は、全くの人道的見地から平和維持活動を実施する。         
 これは本国の承認済みだ。                  
 疲れているところを申し訳ないが、全力を尽くして欲しい。以上だ」
「敵軍の状況を説明する」                  
                             
 再び年配の三佐が前に出る。              
                    
「画像解析によると、敵は連合王国の連中だ。
 我々は平和維持活動のために出動するのであり、これに楯突くもの、あるいは従わないものは平和の敵だ。
 容赦なく殲滅せよ。                               
 これは本国からの命令でもある。以上だ」   
                                 
 その後は具体的な作戦の説明になった。             
 俺たちは先行するAH−64DJが交戦した後に着陸。    
 速やかに市街地に突入し、敵を排除。              
 ドワーフおよびダークエルフとの接触を持てとの事らしい。
 簡単に言ってくれるぜ。           
625名無し三等兵:2006/07/23(日) 01:48:34 ID:???
 暗視装置に照らし出された世界は、燃え上がる建造物に照らされて極めて明るい。
 二番機のガンナーは、全ての火器の安全装置を解除した。
 この対空砲火がない世界ならば、さぞかし爽快な攻撃が出来るだろう。
 楽しみだぜ。                       
                               
<イブニングライナー01より各機、敵地上部隊を視認した。
 各機は所定の方針に従い、最善と思われる平和維持活動を実施せよ>
<イブニングライナー03、攻撃開始>
                           
 最右翼を進んでいた僚機が、いきなり多連装ロケットを発射した。
 今日の俺たちは、装甲目標ではなく、軽装甲車輌を含む地上部隊を制圧するための装備だ。
 一瞬で敵陣に着弾し、明るい光が周囲を照らす。
 凄い大軍だな。               
 およそ800から1000。              
 完全にこの村を包囲している。一人も逃がさずに殺戮する気だな。


626名無し三等兵:2006/07/23(日) 01:49:08 ID:???
 初めての戦闘に興奮した各機が通信を交わしている。
 うん、怯えているよりは遥かにマシだ。
 冷静に部下たちの様子を眺めつつ、コールサイン『イブニングライナー01』は地上を眺めた。
 中央の8階建てと思われる塔を中心に放射状に広がるこの村は、塔以外全ての建築物が炎を吐き出している。
 塔の周囲には敵軍と思われる集団が多数おり、どうやら生存者はこの建物に立てこもっているようだ。
                                          
<イブニングライナー01より各機、塔の周辺を狙えるか?>
                                
 すぐさま否定的な答えが返ってくる。
 多少なぎ払う事は出来るが、建物に近づきすぎている連中は狙えない。
 万が一にでも弾が当たってしまえば、大変な事になる。
 彼らは、この塔の中に立てこもっているであろう人々を救出するために来たのだから、それは許されない。
 地上部隊はまだなのか?                     
 手早く周波数を切り替えると、イブニングライナー01の操縦者は無線へと呼びかけた。
                                   
<こちらイブニングライナー01だ。地上部隊はまだか?>
627名無し三等兵:2006/07/23(日) 01:49:47 ID:???
<本日も桜空輸をご利用いただきまして誠にありがとうございます。
 こちらは機長です。降下地点まであと一分少々となりました>
                             
 まったく陽気な機長だ。                 
 離陸前からこの調子だったが、まさか戦場でもこの調子とはね。
                             
<こちらイブニングライナー01、地上部隊はまだか?>
                             
 ああよかった、このまま戦闘が終わっちゃうのかと思ったよ。
 まぁ、終わってくれて構わんが。
 こちらはちょいと離れた場所を移動中。
 まったく、連中は大したもんだな、人間相手にまったく躊躇なく発砲してやがる。
                                 
 先行する戦闘ヘリ隊から連絡が入る。              
 えっと、周波数は向こうが合わせてくれてるからこのままでいいんだよな?
                                   
<こちらエヴァーズマン。感度良好。なんでそっちは電車で、こっちはBHDなんだ?>
<こっちがその系統の名前じゃあ縁起が悪いだろ?>
                    
 こっちだって縁起が悪いわい。
628名無し三等兵:2006/07/23(日) 01:50:37 ID:???
<まあごもっともだ。それでスーパー61、用件は?>
<その名前はやめろ。市街地、というほど広くはないが、そこの中央に塔がある。
 敵軍がなぜかそこに集中している。敵しかいないかどうかを確認して欲しい>
<了解した。こちらは村の東から突入する。周辺の掃除を頼む>
<わかった。オワリ>                  
                                 
 最後だけ規則に従った形式で通信は終了した。              
 既に部下たちの戦闘準備は完成している。          
 さあ地上戦だ。誰一人死なずに帰還するぞ。           
                          
<こちらは機長です。これより降下を開始します。   
 シートベルトをしっかりとしめ、安全装置をご確認下さい。
 なお、当機の定員は決まっている。減る事は許さない、以上だ!>
                               
 機長のアナウンスと同時に、ヘリは急激な降下を開始した。          
 見る見るうちに地面が接近し、そして急減速の後にヘリは地面へと降り立った。
                                 
「よし、始めるぞ」                       
                                   
 ドアが開かれ、俺たちは戦場へと足を踏み入れた。

629名無し三等兵:2006/07/23(日) 01:51:52 ID:???
 かくしていつか来た道を教育委員会は辿りつつ、強引にみえるぐらい強力に
教育普及計画を推進したのだった。                    
                                  
                                   
 そしてこういった大人の事情など、学校に通う子弟にとってはあまり意味がな
い事情である。                         
                                   
 その学校に通う子弟の中に南方庁に父親の赴任とともに、引っ越してきた子
供がいる。                        
                             
「あ、いっこ〜。おはよー」              
「うん。おはよー」             
 彼女の姿を見つけた同級生が声をかけてきた。               
ゆっこ、と呼ばれたその少女、早瀬樹(いつき)は、返事を返すや、やや小走り
に彼女に声をかけた同級生の傍による。                 
                                   
 周囲は彼女らと同じように学校へと通う子弟らの姿があった。彼らもまた学校
へ通う年齢である。                  

630名無し三等兵:2006/07/23(日) 01:52:27 ID:???
“ 新人(民間)!俺の後ろから離れるなよ! ”
「 あ−、いいねー。昔は熱かったなあ・・・ 」

 “新人(民間)”は、来る日も来る日も、
砂漠のオアシスのほとりに作られた豪華遊興施設(宮殿とプール)三昧であった。
もっとも、バックミュージックがわりの
過去の戦闘記録ビデオによる「実戦への研究」に抜かりは無かったのだが。

まあ、そんなことはどーでもいい。
任務の日々の溜まりに溜まった鬱憤もどこへやら。
日本国はこの3人の男に
( 某王国王族のプッシュに耐え切れず )なんと、半年間の有給休暇を!

 オアシスの外は、何処までも青い空が広がっていた。
そして音も無く灼熱の太陽光が、世界の総てに降り注いでいた。
そんな外の精妙で美しい光景の中で、
“民間”の脳裏の中・・もとい、目の前で、“小覇”殿が愉快でたまらなさそうに
1目惚れの女性と白いテラスの中で笑っている。

「 あのプロ10000人斬りの小覇殿が、ねえ・・・ 」

自爆テロ相次ぐ中東で、
例の「公開任務」に従事していたあの頃が、ちょっぴり懐かしい“新人(民間)”だった・・・。


631名無し三等兵:2006/07/23(日) 01:53:28 ID:???
3機中、最も防弾装甲に優れている“小覇”機。
表には出ない海外任務で有名を馳せた“小覇”専用に特別に設計された、巨人機。
その小覇機と民間の機の主要武器は、巨大な盾と巨大なハリセンであった。

3機中、最も防弾装甲に優れる小覇機が、強固な盾を構えて突進してゆく。
それに捕獲性能に優れる民間の機が続く。
感覚的には殆ど「 ハエ叩き 」や「 ゴキ退治 」だった・・・。

 “民間”が民間人らしいノー天気ぶりを発揮している所に、

もう1人の上司、
“雲の上”から“お目付け役”として赴任してきた“上使”殿が、
例の中東某王国王族と和やかな歓談を続けながら此方にやってくる。
上使は1見、中東の王族特有の美しい顔立ちの彼ら王族に負けぬ美丈夫ぶりではあるが・・・
実戦中、200を超える膨大な監視カメラを掌握し、
作戦エリアで何かが僅かでも動こうものなら即座に
容赦無い灼熱の砂泥を叩き込む「恐ろしい人物」でもあった。

小隊の安全のためには、子ヌコですら容赦なく捻り潰せる男であった。
( 内心は涙に耐えぬ思いであろうけれど )

 街道という街道を「 耕して 」いったあの日々よ。
巨人機の背中にへんぽんと翻る「 白地に夜明けの太陽の旗 」が、
砂漠の灼熱の太陽よりも眩しかったあの日々よ。
砂漠の街道を駆け抜けるたびに、日本国と自衛隊の名声が砂漠の空よりも上がっていったあの日々よ。
「 テロ無血鎮圧 」の、今後2度と破られる事の無い記録を打ち立てたあの日々よ・・・。
632名無し三等兵:2006/07/23(日) 01:55:00 ID:???
「 民間氏、準備はいいですか? 」

“ ボヤくな“小覇”!御前を晒せる訳があるかッ# ”
“ 新人(民間)!御前も黙れッ!不愉快だっ# ”

これから1生“異端”の2人の監視を押し付けられて、
全世界の紛争地や邦人救出にコキ使われ飛び回されるハメになっていた筈の彼は、
今や、某中東王国の特別顧問の地位にあった。噂ではこの国の王族に列されるという。
南米の非合法組織から「アークエンジェル(上級天使。略して上使)」とまで恐れられた彼の能力と、
悪名高い「D」小隊をこの位置にまで押し上げた調整力なれば、それもまた当然であったが・・・。
そういえば、先ほどまでの流暢な英語の会話からよくもまあ、
こうも簡単に日本語の会話に切り替えられるものだ・・・。

( 脳の中身を覗いてみたいものだ )

「 はい。何時でも出立可能であります 」

「 そう、それでは今夜8時に 」

上使は、王族もかくや、な優雅な会釈の後に、
某中東王国王族と和やかな会話を続けながら白亜と黄金の小宮殿へと消えていった。

砂漠の夜をまって(天然のクーラーの中で)、
「DAIDARA小隊」と「日本国自衛隊」に与えられた
広大な敷地( 巨人兵用戦闘訓練場。総合火器訓練場を兼ねる )の整備。

そして闇の中の実戦訓練。

民間でも有り得ない半年休暇の最中だろうが、
死ぬまで優雅な生活が約束されていようが、結局、そういう事をしている「3人」であった。
633名無し三等兵:2006/07/23(日) 01:56:37 ID:???
 今日の授業は、2時限より野外観察が組まれていた。
学年合同授業とでも呼んでいい代物である。
だから、樹たちの鞄の中身が軽くなっている訳だった。

 野外観察として学校側が選んだのは、本島から少しばかり離れ
た島の一つだった。
野外観察というからには、生物学を初めとする自然科学が中心となる。

 とは言うものの、まったくの手付かずの島という訳ではなく、既に
陸自施設科の手によって海岸付近が整備され、海保の手によって
水測調査がある程度なされており、また水産庁資源管理部及び増
殖推進部と水産総合研究センターの合同による、南方諸島におけ
る海洋生物の調査が大雑把ではあるが、行われている。

 そんな島に樹たちは引率の教諭ともども、フェリーに乗り込んで
向かったのだった。
そんな事情だから、ちょっとした遠足気分も混じっているのは否定できないが。

「いっこ、陸地が見えたよ」
「ほんとだ」
 友人の声に早瀬らが、島に眼を向けた。
フェリーが近づくにつれ、陸地が大きく広がっていく。
視線を上に向けると、緑に囲まれた山の頂が、視覚として飛び込んでくる。

 それほど、背が高いわけでもなく、どちらかというと中背――とはい
うもののこの年頃の女子としては、やや背が高いが――である樹は、
身を乗り出すようにして島をみつめた。

 船の前方から吹き付ける風が、樹のうなじのあたりで大雑把にまと
められた髪をなぶるように、吹き抜けていく。
634名無し三等兵:2006/07/23(日) 01:59:36 ID:???
             ___
××│|      /__     ヽ
××│|  /   |⌒ヽ\|      ヽ  「ドラえも〜ん。」
──┘|/     |+  |─l- 、     |
 ̄ ̄ ̄|     cーU #  ノ   / っ
      |  / ⊂_/ ⌒ヽ\ヘ/   っ
      |/         ⊂j ゙ .へ
 ̄ ̄ ̄|    (ヽ∩ヽ二二 // ヽ
      |  / 三   j ̄ ̄ ̄ )   l
___|/     ̄  ̄ ̄ ̄|      | ───
      |   /      ,−┼ー──|  ̄ ̄ ̄
      |  /  /´ヽ/ヽ_|.___ノ、_,− 、    ⌒ ヽ
___|/    ! //ヽ/    \  | |__  l ──    )
   /.       \ __ノ          ̄ ̄|ー  !  ̄ ̄(  ノ
  /                    `ー′
/             ::::::::::
      ____   /
    /   / ⌒ヽ⌒ヽ\  /    「新刊原稿の入ったミサイルが海に落ちちゃったらしいんだ!」
   /  , -|  (((|))) |-、ヽ  _
  /  /   ` ー ●ー′  ヽ           ,  -──- 、
 / /    二  |  二  ⌒ヽ       /___      \
 | | /⌒\─ |  ─ __.ノ     | ⌒ヽ\|        ヽ
 | ! /       ̄ ̄ ̄ ̄ / /       |+  |─|         ヽ
. | | |   (⌒ヽ⌒)   / /     _c 、_ ノつiヽ        |
  ヽ ヽ、______/ / ))   (_U   U_ ゙ | |)     /
((  >━━━━O━━ く        ̄ ̄  ヽー´\ ヘ /
  /  / ____ ヽ  ヽ             ⊂| #    l
  ◯  | ヽ    ノ | |◯        ヽ二二_ / ̄ ̄ヽ
   |  ` ー /⌒ヽ─′ヽ     /^rヽ    //  ̄ ̄`ヽ
   ヽ、    |   |___ ノ  ( ( l    ノ、  /⌒ヽ      \
      ̄ ̄ ` ー ′         ヽ、/  \/   l      l
      「 なんだって! 」
635名無し三等兵:2006/07/23(日) 11:59:31 ID:???
軍事板では、以下のスレ建て行為は禁止されています。


・マルチポスト行為(複数の板での同一内容のスレ建て行為)

・1の本文に宣伝目的もしくは荒らし目的などでURL表記がされているスレ

・実況目的のスレ

・コテハン名がスレタイに含まれているスレ(一部例外あり)

・コテハン叩きを目的としたスレ

・エロや下品ネタのスレ

・軍事板の趣旨に関係があっても、軍事板利用者の気分を害する、または軍事板利用者を
 揶揄するために作られたスレ

・スレの立て直し行為(スレタイや1の本文が気に入らないというのはダメです。ただし、一部例外あり)

・軍事板の趣旨に関係のないスレ (初心者はスレ立て前に雑談スレ・質問スレで相談推奨)

・2ch削除ガイドラインに違反するスレ
636名無し三等兵:2006/07/23(日) 12:00:11 ID:???
軍事板スレ建てするときの注意事項  (簡単なまとめです。詳しくはローカルルールや削除ガイドラインなどを参照)

・スレ建てするときは、スレッド一覧で複数の類似キーワードで検索して、
 重複したスレ建てをしないように気を付けましょう。
 もし、重複しちゃったら次スレとして再利用するか、削除依頼を出しましょう。

・スレタイには 空 白 や★■◆●などによる装飾は極力控えてください。

・ここは軍事板です。2ch入り口の案内文にあるように
 >軍事に関係するなら時代を問わず、戦略・戦術・軍制・兵器・装具なんでもありの板。
 古代ローマや源平合戦など、いつの時代でも、どこの国の話題でもかまいませんが、
 軍隊、兵器技術、戦略・戦術、偵察・諜報・防諜、指揮命令、戦史、軍制、防衛問題など
 あくまでも軍事や戦争に関係する内容でスレ建てする必要があります。

・スレ建て時、1の本文には、スレの内容は出来るだけわかりやすく。どのような方向で話がしたいかも
 書き添えてください。また、旧スレッド、関連スレッドがある場合は、そのスレッドへのリンクもつけてください。

・単発ニュースでのスレ建てはご遠慮願います。
 軍事に関係するニュースの話題は、速報・雑談スレでお願いします。

・単発質問でのスレ建てはご遠慮願います。
 ふと疑問に思った事があったらスレを立てる前に、初心者質問スレで質問しましょう。

・アニメ・映画などの話題は単独スレを建てず、できるだけ総合スレを利用してください。
 どうしても単独スレを建てたい場合は、アニメ・映画関連の板を利用しましょう。

・自身の政治信条を押しつける、または政治運動・印象操作を目的とした
 スレ建てはご遠慮願います。話題にしたい方は政治板や政治思想板へどうぞ。

637あぼーん:あぼーん
あぼーん
638あぼーん:あぼーん
あぼーん
639名無し三等兵:2006/07/23(日) 12:03:32 ID:???
スレ削除依頼の注意点


削除依頼を出すときは、依頼スレ内で検索して
重複した依頼を出さないようにしましょう。

板違いと重複スレを理由にするときは、ちゃんと誘導レス番号を表記しましょう。
板違いのときは、本来どこの板が相応しいのか板名も表記しましょう。

それと誘導表示はスペースを入れましょう。
http://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/army/*****/   (誘導**)  ○
http://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/army/*****/(誘導**)     ×

削除はガイドラインの第何項でどのような削除理由なのか
依頼時にちゃんと明記しましょう。

l50表記はちゃんととりましょう。
http://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/army/*****/l50 ←l50表記を取る

なお、削除対象以外(補足情報添付等)のリンクには、先頭のhを抜き、括弧などをつけて必ず区別してください。
ttp://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/army/*****/

640名無し三等兵:2006/07/23(日) 12:18:08 ID:???
『願い  既にかなっている
 待人  来る        』
                                              
すぼめて巻いてある傘は、空を指して挑んだり、路面に不規則な曲線を描く道具であり、事実そのようにして指揮者になる
伴奏はまた降り始めた雨                       
                                   
拍子を秒針に合わせようと覗いた腕時計は内側に結露してよく見えず、諦めて手の甲を掻く
どちらにしろ雨は拍を遵守しないものね                    
                                        
この時節地下鉄では電光掲示の行き先に『次発 彼岸 行』と悪戯してあったりするらしいが、あえて確認することはしない
                                      
まもなくこの都市を嵐が掃いてゆく予定なのだけれど、軒下であくびをした猫の歯牙の奥の喉の奥にはよく晴れた星空が見えていた
                                         
早く帰ろうと思いついたときには、もう既に黒い衣類を身につけている部分がさざ波立つ路面に吸収されて、舗装のわずかな凹凸になり果ててしまっていた
                                                   
仕方ないので顔だけを薄く濡れた道路に浮かべて、いつまでも空を見上げて嵐を待つことにした
641名無し三等兵:2006/07/23(日) 12:19:11 ID:???
星の祭祀が一年の幸運を柄杓で掬い上げ、
空全体に 散りばめる夜が来た。
                    
一年分の幸運は、祭祀の大きな銀色の鍋の中で
ぐつぐつと湯気を立てて煮込まれている。
祭祀は、このたった一夜のために半年をかけて幸運の材料を捜し歩き
残りの半年をかけて、じっくりと煮込んでいく。
                          
今年は、よい弟子にめぐまれて材料がふんだんに集まった。
ー祭祀は終身役ではあるのだが、3人の弟子を抱えることになっている。
いずれ、時が満ちたとき、3人は一人の祭祀へと融合するー
                             
一等星の欠片、 黒色惑星の影、 宇宙の狭間を飛ぶ鳥の羽、
ブラックホールの蓋、白鳥座にいる最古の賢者の爪、星が生まれた瞬間の花火、
銀河の回りを巡るウロボロスの鱗、全ての太陽の微笑み、
水のある惑星の朝の雫、 重力嵐の吹きすさぶ雲。
                                   
どれ一つとってもやっかいこの上ない材料が柔らかな色彩の光りを放ちながら
鍋の中でぐるぐる回り、やがて細かな結晶へ変貌していく。
                          
鍋の光りが薔薇水晶の破片のようになった瞬間
祭祀は柄杓で祝祭の鐘を打ち鳴らし、
一年の幸運が全世界の空へと飛び出していく。
                                    
祭祀の星の住民たちは、その瞬間を見逃すまいと星の祭祀の階段の前へ集まっていた。
晴れやかな音響が鳴り響く時、                       
無数の光りが空へ向かってまるでケープを翻すように広がっていくのだ。

642名無し三等兵:2006/07/23(日) 12:20:13 ID:???
「堕ちてゆく」                  
いなせな美顔 撓るような手 青褪めたように痩せた筋骨
青い夜 むせる果実のような匂いに染まりながら、
あなたの肉体に包まれることを夢みながら 陶酔しながら
落ちてゆく 落ちてゆく             
                        
禁断の地帯へと              
いつの日か?この紺青のような陶酔
僕自身でさえ知り得なかった領域
それは月夜のように拡がっていた
                   
ああ、月夜の中で しなるような女の考え
法悦 剃りのこした髭のある     
くちびるに接吻することを 夢みて
                           
女たちによって会得された 鋭い、やわらかな愛撫によって、
もったいぶったような愛撫によって ぼくは犯される。
犯されながら あなたの毒が全身にまわる。また法悦

643名無し三等兵:2006/07/23(日) 12:20:56 ID:???
高橋睦郎風 ゲイ。
どうかなあ、実感が足りないような気がします。つかまあこの時点で実感はまだなくて
予感というか想像の楽しみなわけだけど、、、どうせならもう一歩?
644名無し三等兵:2006/07/23(日) 12:22:32 ID:???
>>642
一言で言うなら、感傷的。あまりに、感傷的過ぎるというところです。。
まるで、感傷的な自分に、そんな自分の書いた素晴らしく感傷的な詩に酔っているように見えます。
一つ言っておきましょう。人間は、他人が感傷に浸っている様を微笑ましく見ていられる程心の広いものではないのですよ?
                                                    
…と、言うのはここまでにして。                     
まず何よりも、このSSに出てくる言葉全てが余りに、不必要なくらい抽象的です。
禁断の地帯とはどこですか?それと紺青のような陶酔、または知りえない領域との関係は?
月夜の中で女は何を考えているのか?“法悦”、あなたは、どんなときに法悦を感じるのですか?何を法悦として捉えるのですか?
手っ取り早く見つけられた言葉でもこれだけ、細かく捜せばもっと出てくるでしょうが、これらすべてに必然性が無い。
例えば、紺青であるなら紺青である必然性をこの詩において感じさせなければならないでしょう。
このままならば、別段紺青でなくとも、ビリジアンだろうが、緋色だろうが一緒でしょう。
わかりますね?この言葉たちには重みが無いのです。確かに『落ちる』や『撓る』や『法悦』という言葉は格好良いし、綺麗に見えるでしょうが、いったいに存在感が無いのです。
645名無し三等兵:2006/07/23(日) 12:23:52 ID:???
この時間が嫌いだ
この時間が怖いんだ
          
時計は休む暇も無く
地獄へのカウントダウンを始める
           
ああ 神様なんていない
           
だって時は流れる
人だって苦しむだけ
        
苦しみ
やがては死ぬ
          
こんな感情いらないのに
          
寂しいなんて
伝わんないのに
      
どうして神様?
      
どうして
     
どうして?
646名無し三等兵:2006/07/23(日) 12:24:44 ID:???
君と出会ったのは夏休みの砂浜
絵を描いていた君のそばにいくと
              
僕に見える同じ夏が描いてあった
               
でも昨日君とケンカしてしまって、、、
ほんとバカだ           
               
だから、、          
仲直りしよう!        
夏休みももう少ない            
明日僕は君の肖像画をプレゼントするつもり
                  
たとえそれが           
ありふれた決まり文句だったとしてもね
647名無し三等兵:2006/07/23(日) 12:25:35 ID:???
汚い私に
       
誰か水を掛けて
         
泥水でも良いわ
             
それでも体には水が掛かるから
             
     
汚い私に
    
誰か
     
寄り添って
       
お化けでもいい
      
絶望でもいい
               
それでも寄り添っていてくれるなら
648名無し三等兵:2006/07/23(日) 12:26:39 ID:???
何をしたいというわけじゃなく
ただ技術に酔っているだけ
            
まるで機械がつむぐ言葉
感情の無い文章         
とんでもなく不透明なコンセプト
何のために書いているんだか
分かりゃしないぜ
                
僕はこの人種を文字狂いと名付ける
ああ、噂をすれば、ほら
          
文字狂いがやってきた
文字狂いがやってきた
          
お前は狂人
変人以下だ
649名無し三等兵:2006/07/23(日) 12:27:31 ID:???
目をとじて
君は殴られる
まぶたの裏に光がひろがる
目をとじて       
君は抱きとめられる
しっかりと、やさしく
           
君の胸の中にある         
白く、明るい、真四角のテニスコート
悲しみなんか額にかかった小さな影
君が動けば形をかえる
          
たとえば、祈りを胸に
どこまでいけるだろう
目をとじて     
ぼくは殴られる            
大学は、そっと未来に祈りをささげる場所
                 
その僕の胸に立ち上がる あの体育館
僕は毎週 そこのプールで泳いでいる


650名無し三等兵:2006/07/23(日) 12:28:25 ID:???
ぼくは抱きとめられる
しっかりと、やさしく
神様に抱きしめられ
その腕の中のこの場所に
無造作にあつめられたぼく達は
であって チームを作り            
二人一組になって ボールを投げたり 屈伸したりして
この施設の中で                
                    
                  
きみは歩かされる          
顔を上げて、ゆっくりと、かくじつに
きみの歩いている姿を見た人々はみな
いつのまにか見たこともない体育館の話を始める
その夜の夢の中で             
見たこともない体育館の姿を思い出す
               
目が見えなくなり            
耳が聞こえなくなり 口が聞けなくなって
体中がしびれて そのまま 殴られ続けるだけの
抱きしめられ続けるだけの          
                    
ぼくは残らない            
空白の中にあの体育館だけが残っている
651名無し三等兵:2006/07/23(日) 12:29:22 ID:???
ぼくは抱きとめられる
しっかりと、やさしく
神様に抱きしめられ
その腕の中のこの場所に
無造作にあつめられたぼく達は
であって チームを作り
二人一組になって ボールを投げたり 屈伸したりして
この施設の中で                 
                       
                    
きみは歩かされる           
顔を上げて、ゆっくりと、かくじつに
きみの歩いている姿を見た人々はみな
いつのまにか見たこともない体育館の話を始める
その夜の夢の中で              
見たこともない体育館の姿を思い出す
                 
目が見えなくなり            
耳が聞こえなくなり 口が聞けなくなって
体中がしびれて そのまま 殴られ続けるだけの
抱きしめられ続けるだけの        
           
ぼくは残らない           
空白の中にあの体育館だけが残っている
652名無し三等兵:2006/07/23(日) 12:31:30 ID:???
題名どのようかに関わらず、決定は甘い。「あなたは墓で直接にどのように報告するべきですか?」
                                          
私には文脈に社会的に存在する1つの物質がないかもしれない、あなたの意見、言わばそれを
解釈するのは、ロマンチックな意見です。                      
、確かに、私の答えは長い時代です。 経済は人生の半面です。           
基礎では、衣食住でいっぱいにされるかもしれません。          
-注文してください。規則。例。敬意。威厳。迅速。回復してください。義務。
しかしながら、試みることです。 もちろんテストされた思惑があっても、気にかけませんが、
相手にそれをわからせないでください。 次に、そうするかどうかが良い、     
非常に、できるだけ具体的に話します。 そのような風に行くなら、         
相手は文脈を追いかけます。 きわどい態度から活発に分かるとき、それは確実にそれに触れています。
                                             
その悲しい「夢」それはそうです。                       
..起こる-愚かな愛に伴う男性における                    
瞬間の熱の発作から、いくつかを愛しているとき、                
それに加えた人生と死の運命の意味しか私たちが得た答えはおもうようになるなら難しく、
捕らえられないでしょう、そして、あるからなる人々の数は増加します。       
したがって、具体的である、缶、議論、よりコンクリートの半面をそれがすべてにもわらず
コンクリートについて議論し、それがすべてですが、より多くのコンクリートであっても...
653名無し三等兵:2006/07/23(日) 12:32:05 ID:???
お互いであるのにもかかわらずの、解釈がメッセージに残されるということです、
そして、それはあなたによって尋ねられます、そして、それを受け入れます、そして、
私は風としてさらに、それを置きます。                    
いったい何が私に返しているか、私、それ言いますが、あなたの態度を変えない限り、
当然、私がそこで理解しているが強い動機でないという
約束である
654名無し三等兵:2006/07/23(日) 12:34:08 ID:???
どこへ行くの?            
あなたの背中を追ってはだしでとびだした
ねぇ、おいていかないで          
ちゃんと帰ってきてね       
いつからだろう、壊れだしたのは
笑っていられるだけで幸せだったのに
どうしてそんなに嫌い合うの?
聞こえてくる割れる音
また?            
いいかげんにしてほしい         
今じゃもぉ、心の中も粉々だよ        
大好きだった背中はあたしを置いて、どこかへ行った
ずっと帰ってこない            
今じゃもぉ、好きなのかさえわからない
あの背中は           
あの温もりは            
ほんとに在ったのかな?        
いっそ長い長い夢ならよかったのに
655名無し三等兵:2006/07/23(日) 12:35:07 ID:???
【夢に醒める】
          
遠い昔、天空を見つめた
                    
そこにある何かを求めて我武者羅に手をのばす
                    
幼い好奇心の塊の僕ら何があるかも分からずに
                    
ひたすら手をのばす
         
後ろも見ずに夢中になってる
               
           
気づいた頃には遅かった
            
           
雛菊の花びらが宙を舞い
                      
つかんでしまった手の平の温もりを離せずにいる
656名無し三等兵:2006/07/23(日) 12:36:15 ID:???
どうして君はそんなに一人で立とうとするの?
もうこんなにも服が汚れてるのに
血と涙が混ざり合って流れてるのに
ため息をつくと 人は言う 「幸せが逃げてくよ」と
でもね 本当はため息を吐くと「肩の荷がひとつ落ちる」んだって
君は誰かのために 犠牲をしてでも助けようとする
痛いほどにもらった 君の優しさ
僕は 今 そんな君をどれだけ癒せるのだろう
その微笑みに裂けそうな傷がついてる もう本当は限界なんだよね
気付いてるのに守れなくてゴメン   無力なのに側にいるだけでゴメン
                              
君の存在は僕の全てなのに  僕の存在はあまりにも価値がない
                              
ねぇ君は何を望む?君のためなら愛を壊してでも救いたい
思いばかりが先走るけど この言葉に嘘はない
                   
真実しかない              
                   
一人で抱え込むより二人で半分こしようよ
苦しい痛みを声に変えて 出して 全部吐き出して
鏡は割って そこに映るのは本当の君じゃないから
ねぇ 笑顔が虚しい 波のように歪んでる
もういいよ 自然に零れるまでは笑わなくていいから
                      
僕は君が大好きだよ いつもの君も明日の君も
657名無し三等兵:2006/07/23(日) 12:37:25 ID:???

          
                
レトロな風が吹きカーテンを揺らす
              
瞳を閉じてあの頃に帰ろう
            
                 
ゆっくり進んで行く真っ白な光の中
              
どこからか聞こえる君の声が
懐かしくて 泣けてきた
            
                   
届かない物でも ここでは簡単に触れられるから
逆に気付いてしまう
             
「このままで居られたら」と
ふと願ってしまう
       
安らぎが崩れてきた


658名無し三等兵:2006/07/23(日) 12:38:11 ID:???
>>652
読んでて感動したよ。
659名無し三等兵:2006/07/23(日) 12:39:04 ID:???
見る 誰も彼の名前を知らないし 誰も知ろうとしない 見られ 覗かれ 触られ 汚され 
洗浄され 閉じ込められ 少しだけ解き放たれる 彼           
見る 動物園のなかを隈なく 棲んで久しく世界を見ないが       
初めからなかったのかも知れない 覗き込み 喰い散らし 少しだけ閉じ込められる 私
                               
                               
 見られたものは 忽ちに疵を得            
 見るものは 昏い愉悦と罪悪感を曳航する船          
                            
                              
見る おまえの名前も知らずに 金属の名札を 誰も読もうとしない 
ぼくは何処から来たのだろうか 見るために来て いつのまにか見られている 
視線を移すことなんか幾らだって出来る しかし出来ない 見返してしまえば 一瞬におまえの番なのだが
                                  
                                            
見る 見られる その両方から私達は遁れられない おまえもそれを知ることになるだろう しかし それでいいかと尋ねられてぼくは是と答えるか? いいや 答えは必ず否だ
                                     
                                        
見る ぼくが今見るのは 何処を行っても寂しい国道一七六号線 橙色の灯りが点り 踏み散らされたあの土地にはもう誰も来ない 
誰もいない動物園 人々は 新しいものを見ようと出て行ってしまったのだ 
見られることを嫌悪しながら そして見られることをひどく愛しながら
                        
見られてる 秋の前触の夜 おまえがぼくを見ている
660名無し三等兵:2006/07/23(日) 12:40:19 ID:???
さようなら、と恋人が言った
さようなら、と恩師が言った
さようなら、と友が言った
さようなら、と上司が言った
さようなら、と父が言った
さようなら、と妻が言った
さようなら、と母が言った

やっと帰ってきたのだ

おかえりなさい、と僕は言ってやろう
661名無し三等兵
             ,. - ─── - 、
             /    ,       `ヽ.
            /〃//,. ,ィl/|l ト、 !、 、  ヽ
          ー'´| | l |1 | !l. l| ! | l.|ヽ ! !、 ',   おじちゃんたちは
             YレV!ヒエ「! |l.「_ト!Ll」| l l  l   どうしてはたらかないの?
           ! lハイJ |  ´|_jヽ. リ,! ! l. l |
             |l |l.} ー ,   L _,ハl.lトl l. | l
             |l ilト、   n  ''  ,1l|ィ| |l l |
           _ 二,ニ^tュ--ェ_t1」l.|l !リ|_lノ
       r7´   f r┐| 〔/ミヽ>,-、 ̄´
       Y       ー个‐'t  ハ-、_'ゝ、
        ヽ ._・ rく ̄ヽト-'丿  ヽ l
        / (・__,)ゝi┬'´ハ`     '`|
          |ヽ, イ   ノ┴くヽヽ、    /
        `´ ゝ┬ヘ`ヽ   |  `ー‐1
           ゝノ-‐^ー'一''丶  ヽ ヽ
           ト、_       `ーァ'¨不ヽ
            | | 「 ̄「 ̄l ̄ト、,イトヒi′
             l l. l   l  !  !└' l |
             └ L 」_,|__l_l.__L.l′
             |   |  |   |
              l   l   !   !
                l   l.   l   l
            ト--┤   !--‐1
              f‐t央j.   ト央ァヘ
              |  甘l、  / 甘  |
             l  ,.-‐ヽ レ'⌒ヽ/
            `く.__ ノ ゝ--‐′