軍事板書籍・書評スレ6

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712眠い人 ◆gQikaJHtf2
当面、此処には足を向けない方が良いかなぁ。

三宅立著「ドイツ海軍の熱い夏 水兵達と海軍将校団 1917年」(山川出版社)

西洋の海軍に於いて、将校と水兵の身分差は隔絶している訳だが、ロシア海軍
のそれは、「ツシマ」にも描かれているように、相当の格差が生じ、水兵は特に
食事に対する不満を募らせていた。

それは、ヴィルヘルムII世即位後に行った海軍大拡張後のドイツでも同じで、水兵
たちは屡々、クリスマスの寄せ書きという形で、糧食に対する不満を表している。
この本は、そうした不満が高じて、彼等を独立社会民主党支持に走らせ、その党の
指導で、糧食委員会という水兵達の自治組織が大海艦隊各艦で結成され、糧食
の改善を集団で要求したのに対し、海軍当局や将校団がどの様に対応したのか、
そして、対立がエスカレートしていった結果、遂には1917年夏にストライキを引き
起こして、当局に弾圧されるまでを追ったものである。
本書では、これが、キールの叛乱の遠因になったとする立場ではなく、単なる生活
改善運動の一環だったと言う立場からものを見ているのが新鮮。

研究が丁寧にされているのは好感が持てるのだが、著者が文学部の教授だからか、
妙なところまで訳が入っているので、軍ヲタ的には?な部分が散見されるのは惜しい
ところ。

ちなみに、海軍の兵科将校と機関将校、准士官と水兵の四竦み状態に関しては、
Canadaのハーヴィグの「ドイツ海軍将校団の社会政治史 1890〜1918」が参考に
なる。
こっちも興味深い本ではある。