佐藤大輔 62仕事せず

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165名無し三等兵
>>162 おそらく、あの時それのうpを頼んだ者だが、要望に応えて再うpする。ただし、その前にいくつか訂正しておく。

・これはRSBC短編「市民討論」の前書きであり、作中で、アメリカ合衆国が東西に分断されて久しい状況を前提として、分断国家の国民の心性について考察している。

・この文の筆者・佐藤大輔の念頭に、どこかの実在する分断国家が具体的に想定されているのは確かだろうが、文中、それが具体的にどこの国、民族であるとは一切指定されていない。
 あくまでも架空の国家を対象とした一般論であり、"民族性"なるものに一切係わり合いはない、歴史の偶然次第でどこの国・民族にも起こりうる事である。
(具体的には、<征途>世界の、南北分断された日本も、当然この議論の対象から逃れ得ない。後藤田と鹿内のやり取りあたりを見よ)

以上を弁えた上で、適切な使用を願いたい。繰りかえすが、"民族性"とは一切無縁だ。注意されたし。


分断国家たるの悲劇はまずもってその当事者の心理に内在している。
かれらはおおくのものを憎悪しすぎており、その感情に呪縛されている。
祖国を切り裂いた敵国を憎む。理由は述べるまでもない。
同盟国すら憎んでいる。同盟国の手厚い支援が存在しているからこそ、祖国の統一が果たせないとも考えられるからである。
かつて祖国を統治していたものたちも憎悪の対象である。
かれらの不手際が、現在の悲劇をひきおこしたからである。
そしてかれらは、別の勢力の影響下におかれたかつての同胞たちをもっとも強く憎む。
かつての同胞たちは、哀れむべき人々であると同時に、祖国へかつての栄光を取り戻すべき努力を直接的に妨害する裏切り者でもあるからだ。
しかしながら、誇りある人々はそれをけっして口にしようとはしない。
むしろ同情のみをあらわにする。みずからもまた裏切り者たりうることに気づいているからである。
かくして憎悪はおわりなき多重螺旋を描くことになり、増大の一途をたどる。
その終結は、よほどの幸運が重ならねば発生しない。けっしておこらないわけではないが、安易にそれを期待すべきでもない。