さて、久々に長文妄想でも書き込むとしましょうか。
面倒な国際情勢になったときに、適当な場所から離陸して敵国軍事施設を焼き払ってくる機体を考えます。
滑走距離3000ft
着陸速度180kt以下
最大マッハ数1.8
M0.9からM1.5への加速は30秒以内
最大荷重倍数は4.5
GBU-28を2発搭載
ミッションプロファイルは、一番厳しい条件として空中給油なし、とある島の飛行場を離陸して
とある大陸沿岸部の施設を爆撃して帰ってくるものとします。
亜音速巡航 超音速巡航 戦闘 超音速巡航 亜音速巡航
400nm 50nm 最大スラスト、3分 50nm 400nm
ルール。
まず、主翼のジオメトリーから。
アスペクト比は大きいほうが巡航にも離着陸にも維持旋回にも有利なのは判りきったことですが、限度があります。
その限度は、
係数×(最大マッハ数)^指数 で表されます。
以下のリストは過去の経験則による数値です。より詳しく知りたい人はレイマー先生やロスカム先生の教科書など買ってください。
係数 指数
航空優勢戦闘機 5.416 -0.622
戦闘爆撃機 4.111 -0.622
爆撃機 5.570 -1.075
要求マッハ数、1.8としましたので許容最大アスペクト比は4.111×(1.8)^−0.622、つまり2.852となります。
前縁の後退角は48度以上ないと、衝撃波の内側に収まりません。
推力重量比、これも同様に経験則から決まります。
係数×(最大マッハ数)^指数 で表されます。
係数 指数
航空優勢戦闘機 0.648 0.594
戦闘爆撃機 0.515 0.141
爆撃機 0.244 0.341
要するに戦闘爆撃機であれば、総重量の56%の推力があればマッハ1.8出せます。後に詳細を付け加えてゆくとこれでは足りなくなる場合、
あるいは余る場合もありますが初期段階ではこれで進めます。
ルール。
翼面積あたり重量(翼面荷重)
上述の着陸速度制限に余裕があるように、1.2で割った値を失速速度とします。T−33みたいに着陸速度と失速速度に数ノットしか差がないのは、危険です。
超音速機では、最大揚力係数はがんばっても1.8そこらです。というわけで、着陸時の条件で560kg/平米あたりが上限になります。
今後、性能算定を進めていけばこの値を超えることでしょう。超過分が、着陸までに消費すべき燃料、あるいは捨てないとならない搭載品の重量となります。
高精度かつ高価な今日の搭載兵器は使わずに捨ててくることは許されませんので、このことは覚えておく必要があります。
離陸滑走距離:これはもちろん、最大重量で算定します。もし最大重量で離陸滑走距離制限に収まらないなら、離陸直後に空中給油することになります。
まぁ、3000ftの離陸滑走距離を許されるなら算定するまでもなく収まりますが。
航空優勢戦闘機の場合、離着陸条件を満たすだけでは翼面積が足りない(空戦性能が満たせない)ことになりますが、
戦闘爆撃機や爆撃機では離着陸の条件さえ満たせば巡航、戦闘に必要な面積が得られます。
というわけで、翼面積あたり重量の算定は離着陸条件だけ考えることにして省きます。
空虚重量の算定
航空優勢戦闘機も戦闘爆撃機も、荷重制限は等しいものとします。というか、荷重制限を下げると爆撃機になってしまいます。
空虚重量/総重量比は、
切片+係数×総重量^指数1×アスペクト比^指数2×推力重量比^指数3×翼面荷重^指数4×最大マッハ数^指数5
です。
複合材で構成する場合、古い教科書には0.9を掛けるとありますが最近なら0.85くらいを掛けて大丈夫です。
切片 係数 指数1 指数2 指数3 指数4 指数5
-0.02 2.16 -0.1 0.2 0.04 -0.1 0.08
つまり、ここで検討している機体では1.6678×総重量^-0.1-0.017というわけで、
総重量(ポンド) 比
40000 0.561
45000 0.554
50000 0.548
55000 0.543
60000 0.538
てな関係が出てきます。これを用いて、「所要の機体規模」の目星をつけます。
燃料がどれだけ必要か(総重量のうち、どれだけを燃料で占めないといけないか)算出してみます。
詳しく書いているとスレッドが埋まるので各セグメントの結果だけ書きます。
始動&離陸 0.98 離陸するまでに、初期重量の2%ぶんの燃料を消費することを意味します。
上昇 0.977 離陸総重量の3.3%ぶんの燃料を消費して巡航高度に到達します。
亜音速巡航 0.944 作戦空域に到達するまでに、巡航開始重量の5.6%ぶんの燃料を消費して(略)
加速 0.984 マッハ1.4まで加速するために、戦域到達時重量の(略)
超音速巡航 0.924 超音速を維持して爆撃進入点に到達(略)
戦闘 0.954 爆撃を終えて(略)
加速離脱 0.984 ボムベイを閉じて再度加速し(略)
超音速巡航 0.924 超音速でターゲットから離脱し(略)
亜音速巡航 0.944 ホームベース近くまで(略)
降下 帰路の巡航に入れるので省きます
待機 0.977 着陸の順番待ちを行います。
降下 0.993 アプローチ
着陸 0.995 着陸の順番待ちを行います。
トータル 0.6495
要するに、那覇か嘉手納のエプロンに帰り着いてエンジンを停止したときには、初期重量の65%まで軽くなっています。
言い方を変えると、初期重量の35%を燃料で占めることになります。
これは、F−111やMiG−25に近い数値です。
おっと、ルール。
規模の決定
本当は、「カーペット・プロット」を行わないといけません。
しかし掲示板へのテキスト書き込みで出来ることでもない(教科書そのものになってしまいます)
ので、ここまで求めた数値から実施します。
>309
にある、総重量60000ポンドの機体ならば1-0.538=0.462が利用可能重量となります。
総重量の35%を燃料に充てて、残り11.2%でペイロード重量を満たせるか?
60000ポンドの11.2%は6690ポンド。バンカーバスターを2発載せる(ラックを含めて9000ポンド)には足りません。
もう一度、>309に戻ってプロットすると
総重量(ポンド) 空虚重量比 ペイロード比 ペイロード
72500 0.528 0.122 8838.574
73000 0.527 0.122 8926.846
73500 0.527 0.123 9015.286
というわけで、総重量73500ポンドの、F−111やSu−24よりはちょっと小さな機体ということになります。
ルール。
翼面積は、前もって離着陸条件によって決まった翼面荷重と総重量の単純な割り算となります。
およそ60平米ということですな。アスペクト比も決まっていますので、全幅も決まります。
約、13mになります。
主翼を後退させたF−111やSu−24よりは幅広く、MiG−25やMiG−31よりは狭い、てなところ。
平面形もこれらによって決まってきます。ピュアデルタとすることはまず無いでしょう。
航空優勢戦闘機ならクリップドデルタか菱形デルタとなりますが、戦闘爆撃機ならば高迎角特性よりも超音速巡航性能を
優先してクランクトアローにしたい、というのは私の好みに過ぎません。
胴体の長さ等は、レイアウトを進めないと決められませんが、規模から類推するとF−111系よりやや短いくらいの長さに収まるでしょう。
しかし、書き込んでみると意外なほど短い文章になりましたな。
ここまで作成するのに1時間ばかり掛かってしまいましたので、続きは気が向いたときに行います。
ルール。
面倒になってきたので、概論を書いて見ましょうか。
上述したように戦術機のサイジングを行う場合、最近では複合材の使用による軽量化(途中で0.85を乗じた箇所)を
ステルス対策によって帳消しにしてしまう場合もあります。
要するにステルス性の追求によって搭載量を減らすか機体規模を増すかということです。
F/A-117では、非ステルスの同一ペイロードレンジの機体の倍ちかくもありました。
F/A-22では1.2倍くらいと言われます。
日本で開発するとするなら、この「ステルス重量比」をいくつに設定すべきなのかは私には判りません。
ただ、いくつか言えることはあります。
護衛戦闘機、SEAD機、電子戦戦術機の随伴なしに単独で重要ターゲットへの爆撃に行けることは、
たとえ機体規模が倍増しようが、あるいは一機あたりの搭載量が半減しようがメリットが勝るのだと。
ベトナム戦争当時、F−111はまさにそのように運用されました。
そのような、高い目標到達能力と生還能力を持つ機体の存在意義はここにあります。
特に日本のように、ストライクパッケージを組むだけの戦術機を抽出しにくい国において
爆撃任務を追加するならば、それはハイエンドの機体でしか成立しないと言えます。
同時に、F−111やF/A−117のような機体は不経済でもあります。上述した超音速巡航戦闘爆撃機と同じ
搭載量と航続距離を、亜音速巡航戦闘爆撃機に与えるなら総重量は45000ポンド程度に収まります。
もちろん、滞空時間においては亜音速巡航機の方が有利です。少数の高価値/重防護ターゲットを破壊する
任務のみが、この機体規模と価格の差を正当化します。