自衛隊がファンタジー世界に召喚されました 38章

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632分家228 ◆st/L1FdKUk
えっと、技能を活かすって話で作ってみました

 我々が召還された世界は奇妙としか言いようがない。この世界には火器のたぐいが存在しない。だが、電力は都市に供給されている。都市とは言っても中世の名残を残す城壁つきの奇妙な都市だ。そのシンボルとも言える建物には漢字らしき文字が書かれている。
この世界での協力者曰く、この都市を象徴する文字と言うことだが、そんなこと我々には関係がない。
 この都市が奇妙なのはそれだけではない。都市の住人は幼少の頃から義務教育と同じように単一の授業を受ける。それは日本の小学校のようなものではない。彼らが習うのはこの世界の奇妙な技術だけだった。その成績で彼らの将来が決まる。
「こんなエキセントリックな世界はありえない・・・・」
 文化人類学をかじった隊員がうめいたが、わたしも同意見だった。都市の住人はすべからく、この「アカデミー」とでも言うのだろうか、妙な教育制度で妙ちきりんな授業を小学校、中学校とほとんど同じ期間受けることになる。
だが、都市にはラーメン屋や客商売の居酒屋などが並んでいる。彼らが、このような技能をどこで学ぶかというのは今もって不明だ。我々は彼らの生態系にさして興味を抱いていない。それは彼らとて同じ事だ。彼らの興味はただ一点。我々の持つ道具に関してだった。
 歴代のアメリカ大統領の像がアメリカ西部の地方にあるが、それと似たようなモニュメントがこの都市にも存在する。この都市が周辺の勢力に何かしらの分野で大きな貢献をしているのは理解できた。そうでなければ、歴代の指導者はこのようにまつられることもないだろう。
633分家228 ◆st/L1FdKUk :2005/07/28(木) 02:03:50 ID:???
 「俺は火影になるんだってばよ」
 実地調査という名目で彼らの言う「任務」に付き合わされたときに知り合った少年がわたしに言った言葉だ。どうやら、全市民が義務として修得している分野は、我々の世界で言うところの特殊部隊の技能に近いようだった。
「仲間なんて甘ったるいものに縛られるくらいなら俺は力を求める!」
 これは、前出の少年と同じ「班」にいた少年の言葉だ。このように幼少期から強制的に軍事教練を義務づけられその成績でランキングされる社会に育つと、こんな屈折した青少年を量産するのだろう。我々には関係ないことだが、
外野として見ていても気持ちのいいものではない。事実、わたしはこの教育制度が生み出したとしか思えない内輪もめ=彼らの言うところの「任務」に数回かり出されていた。食料支援の見返りとは言え、イヤな仕事だった。
 しかも、「任務」のたびにうんざりすることばかりだった。精神的に屈折した敵の親玉にまつわるエピソードを延々と聞かされるし。やっと遭遇した敵には「必殺」という枕詞をつけた「キモイ」としか言い様のない魔術を使われた。
「おい!吹っ飛ばせ!」
 一度はある少女の「義兄」を助けたいと言うことで敵の拠点に潜入したらゼリー状のお化けが出てきた。しかも、そのお化けが少女の探す「お兄ちゃん」とか言うのだからたまげた。
「俺はもう、おまえの知ってるお兄ちゃんじゃない」
 お化けはそんなわかりやすい説明をしていたので、カールグスタフをぶち込んでやった。崩壊する拠点でそのお化けが最後の最後で都合よく我に返るものだから、少女を連れ出すのにこっちが死ぬ思いをしたくらいだ。
まったく、これだけ派手にやらかして何が「隠密の任務」だ・・・・。
634分家228 ◆st/L1FdKUk :2005/07/28(木) 02:04:40 ID:???
 そもそもこの世界では中学生くらいの青少年が「任務」と称してこのような危険な状況に放り出されている。しかも、自ら「上忍」とかいうランクを目指して志願するのだからやっかいだ。
この世界に国連人権委員会があれば一発で警告ものだ。さらに、効率的な近代教育のシステムをなぜか持っている彼らは、そのシステムで効率的にそんな「上忍」志願者を量産していくのだからたちが悪い。
「俺は力が欲しい!」
 先日も、わけのわからない内ゲバで一族がみんな死んでしまった少年がそんなことを言って都市を去った。それを追いかけたのも少年たちだ。わたしも部下と同行したが、見るに耐えない状況だった。脱走した少年を迎えに行く少年たちに、同じ年頃の少年たちが挑むのだ。
「おろち丸様・・・・・」
 これが敵の親玉らしいが、わたしに言わせれば破滅的マキャベリスト以外の何者でもない。そんなキチ○イに心酔する連中だ。当然まともではない。土をどういう仕掛けかわからないが盛り上げて牢獄にしてしまった。
同行した少年たちは、
「チャクラが奪われて行く」
 とか焦っていたが、わたしは部下に命じてカールグスタフで大穴を開けてやった。彼らの上司である「上忍」も出動したのだが、何をかっこつけているのか、木の枝をぴょこぴょこ飛んでばかりだという。
しびれを切らした90式戦車の戦車長が木々をなぎ倒してわたしたちのところに駆けつけた。駆けつけついでに何か撃ち合わせていた「おろち丸」とかいうキチガ○の部下を2人ばかり轢いてしまった。
635分家228 ◆st/L1FdKUk :2005/07/28(木) 02:06:08 ID:???
 結局、この作戦で負傷した少年を収容して都市に戻ったのだが、その少年の同期とかいう妙な少女が現れた。
「ごめんな。サスケを連れ戻すって約束を・・・・」
 とか病室で言い出すものだから、こんな茶番に付き合わされたわたしはブチ切れ寸前だった。
「サクラ」とかいうこの少女は脱走した「サスケ」が好きなようだが、重傷の少年の気持ちも知っているようだ。
つまるところ、「サクラ」とかいうこの役立たずの少女が片思いしている「サスケ」。
そしてそんな「サクラ」にいいところ見せようとして怪我したこの少年。それに付き合わされた我々はいったいなんなんだ?
「ほ、火影様!」
 火器がない割には妙に近代的な病室に最近「火影様」と慕われ始めた年増の女がやってきた。なんでも医療の天才だそうだが、医務官が対話するとミトコンドリアの存在も知らないと言う。
その程度の知識しかないのに、「チャクラの力」がどうこう言うモノだから医務官が思わず近代医療の歴史を小1時間問いつめたそうだ。
おおげさに「手術室」なんて札を下げる暇があれば、ミクロン単位で衛生管理しろと言ってやったそうだ。その話を聞いたときは本当に清々とした気分だった。
636分家228 ◆st/L1FdKUk :2005/07/28(木) 02:07:17 ID:???
 そう言えば、こんなこともあった。「上忍」とかいう少年たちから「先生」呼ばわりされる男に同行したことがあった。おろち丸とかいうキ○ガイになびいた元同僚を連れ戻すとかどうとかで。
まずは小1時間、その男と元同僚の思い出を語られた。語られたところでどうしようもない。
 その上、竹林で遭遇した元同僚というのも同じようにうだうだと演説する。わたしはしびれを切らしてしまった。
「おまえ、病院行った方がいいんじゃねーか?」
 その言葉がかんに障ったのだろう。「みずき」とかいう元同僚は「上忍」を暗闇の塔におびき寄せた。わたしはその間散々「これは罠だ」って言ったんだが、彼は聞き入れなかった。
「どういうことだ、みずき!」
 この繰り返しだった。壊れたテープレコーダーじゃないんだから・・・・。そして誘われるがまま建物に入ってみれば真っ暗闇。
「わかるか!暗闇で生きていれば並の忍者には身に付かないことも身に付くんだ!」
 どうやら暗闇でモノが見える見えないのことを言っているようだが、わたしには馬の耳に念仏だ。彼が暗闇で姿が見えないのに自信満々に演説をぶっている間に、わたしは赤外線暗視スコープを装着して彼を射殺した。

 もうこんな茶番はごめんだ。いつ元の世界に帰れるかはわからない。だが、この世界だけは1分と長くいたくないことだけは確かだ。