【双発雷撃3】九六陸攻・一式陸攻・銀河・四式重爆

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487の続き
 「副操縦席の藤原一飛曹には高度100で水平飛行を保つように命じてあったが、知らず
知らずに高度が下がってくる。高度は30m位か。富田一飛曹の「2,000」という声に「発
射用意」と大竹一飛曹は叫ぶ。藤原一飛がメインとサブの操縦席の間にある魚雷の投下把柄
を握り、安全ピンを解除した。「1,000メートル」に反応するかのように「落とせ!」の命令
に魚雷が胴体から離れた。時に1314。ふわっと機体が浮く。その瞬間、激しい震動が機を
襲った。被弾したのだ。ガタガタと激しく機が揺れる。魚雷が当ったら死んでもいい、と
思っていた大竹一飛曹は投下が終わった途端、急に命が惜しくなって、何としてでもこの
弾幕を抜けて帰りたいと念じた。機はレパルスの艦首付近を右傾して背を見せる格好で突っ切
った。甲板の上を走り回る白いセーラー服が眼に入った。
 記録によれば、大竹機の所属する石原大尉指揮の元山空第1、第2、中隊の17機が日本
海軍史上初となる動的目標に対する雷撃を試みたのは、岩崎二飛曹の美幌空が水平爆撃の
1航過めを終えた所であったという。大竹氏の記憶では、レパルスはすでに白い煙を吐いていた、
ということから25番爆弾が命中した直後であった、と判断される。ウェールズには石原大尉直率
の第1中隊が、レパルスには高井貞夫大尉指揮する第2中隊が向かった。第1中隊の大竹機が途
中レパルス攻撃に転じた為、結果8機がウェールズに、9機がレパルスに相対した事になる。
 この元山空の攻撃でウェールズには2本の魚雷が命中し、レパルスはイギリス側の資料によると,8本
全部を回避したことになっている。日本側は石原中隊第1小隊3番機、すなわち大竹機と同じ小
隊の3番機川田勝次朗一飛曹が被弾撃墜された。日本機初の被撃墜である。その他5機が被弾した。
 元山空の攻撃から殆ど間も無い1320、今度は高橋勝作大尉の指揮する美幌空第4中隊の雷装の
九六陸攻8機が戦場に到着した。この8機は2番艦レパルスに向かった。中隊長の高橋大尉機は
魚雷が投下器の不良により落ちず、2回雷撃をやり直したが、その大胆な複航やり直しぶりに
僚機は度肝を抜かれたという。ワイヤー索による九六陸攻の魚雷投下装置は故障が起こり易く、次
の一式陸攻では爆弾倉が設けられると同時に、投下装置が電磁式に改められた。高橋隊によって
投下された7本の魚雷は全て回避された。」