軍事と台風

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32名無し三等兵
日本海軍では昭和10年、三陸沖で演習中の艦隊が台風に巻き込まれ、
新鋭特型駆逐艦2隻の艦首部切断という大事故を経験しました。
この後、海軍は台風の研究を進め、
「強大台風の第四象限では異常に高い波、それも三角波が起こっている」
という事実を発見しました。海軍は後にこれを軍機に指定、自然現象の情報が
軍機に指定されたのは大変珍しいことでした。
この意図は当たり、戦中、米軍の「ピッツバーグ」をはじめとする艦隊の
重大事故というかたちであらわれました。


注 しょうげん 【象限】
〔数〕 平面を直交した二直線で分けた四つの部分。goo辞書より


それだけ
33台風の秘密:04/08/05 14:24 ID:???
それまで船乗りの間では、
「台風や優勢な低気圧のなかでその進行方向にむかって
左側は可航半円、右手側は危険半円」ということがよく知られていました。
しかし、危険半円の後側の第四象限に異常に高い波浪域があるのは
日本海軍の大発見でした。

また、そこに発生するのが「三角波(ピラミッド状の波)」であることも重要でした。
この象限では、台風の中心にむかって吹き込む反時計回りの風による波と、
台風の外(南東)側から来る台風が残していったうねりとがぶつかりあって
巨大な三角波ができるのです。

まだつづく
34名無し三等兵:04/08/05 14:38 ID:???
はやく続け。
35風とたたかえ:04/08/05 14:51 ID:???
 昭和10年9月24日夜半〜25日早朝。
 海軍は、演習に際して米機動部隊を想定した赤軍艦隊として臨時に第4艦隊を編成しており、
函館より出航して、迎え撃つ連合艦隊(青軍=自軍)のいる海域を目指しました。
 ところが、その時グアムの北洋から台風が接近していたのです。
発達しながら、第4艦隊の出航した25日朝には小笠原諸島沖に達し、夕方には
960m(ヘクトパスカルと同数値)となり、毎時46kmで北上を続けました。
半径100km以内は猛烈な暴風域で、第4艦隊との衝突は必至となりました。
 演習統監部では戦時を想定した演習の絶好の機会ととらえる積極的な意見と、
艦艇への損害を懸念し中止を検討する慎重な意見とがありました。
激論の末、演習は続行することとなり、空母「龍驤」重巡「那智」をはじめとする
第4艦隊は三陸沖で台風に突っ込みました。

それだけ
36名無し三等兵:04/08/05 15:04 ID:???
OSOI.
37損害報告:04/08/05 15:09 ID:???
26日の損害
特型駆逐艦「初雪」「夕霧」艦首部切断流出
駆逐艦「菊月」「睦月」「三日月」「朝風」艦橋倒壊
空母「龍驤」艦しょう圧潰
空母「凰翔」飛行甲板前端圧潰
重巡(但し当時軽巡)「最上」艦首外鈑に亀裂
重巡「妙高」船体中央部外鈑に鋲接弛緩
特型駆逐艦数隻の舷側鈑に危険皺発生(切断一歩手前)

この時、波は最大で波高20m以上、波長150〜200mに達しました。
38連合艦隊対候最強理論:04/08/05 15:29 ID:???
 夕鶴と第4艦隊の事故とを教訓に改修された各艦船は、劇的に荒天に強くなりました。
 さて、艦船の設計においては必要とされる強さを定量的に求める必要があります。
波の険しさ=波高/波長=波の山から谷までの垂直距離/波の山から山までの水平距離
という式で求められますが、
これまでは、北太平洋では 波高/波長=9〜12/200〜250=1/35〜1/25
と考えられており、よくいわれる1/20を前提とした設計がなされていました。
しかし、26日1500「那智」での観測では13〜14/120=1/9に達していたのです。

この海軍調査研究の成果は戦後、英文で論文発表され、また、後に公刊された
海保水路部『航海参考資料その2、台風編』で知ることができます。

それだけ
ちょっと次はまとめてから
39名無し三等兵:04/08/05 15:30 ID:???
追記
半澤正男『<検証>戦争と気象』銀河出版より
403F(第3艦隊)事件顛末:04/08/06 07:45 ID:???
 米軍ネタで続き書こうとしたんですが>29とかぶるのでかなり省略

 ハルゼー率いる米軍第3艦隊は洋上補給時の安全を確保するため、
3度の会合地点変更を行いましたが、接近する「コブラ」台風を避けることはできませんでした。
台風位置の見積もりの誤りから「コブラ」台風と並進するルートを取ってしまったのです。
 台風遭遇時、将兵は当然、衝突や転覆を避けるため必死に操船を試みましたが、
比較的小型の艦では浸水による配電盤や電線がショート、操舵装置の故障が多発しました。
モナガンは転覆前、浸水による発電機の故障で注排水装置が動きませんでした。
 将兵の戦死、艦船の損害に加え、航空機は「ウィスコンシン」艦上の機を含め146機流出。

 米軍は後にトップヘビーの改善、海水による電線のショート防止策などを講じました。

 後にスプルアンス率いる第3艦隊(別名第5艦隊)は「バイパー」台風に遭遇。
数の上では以前の被害を下回ったものの、ある意味でより深刻でした。
原因はまたもや艦隊予報官の誤報。「バイパー」は「コブラ」より小型で弱いと
予測されたものの実際はより優勢で、これまたまともに突っ込んでしまいました。

それだけ