自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた 第20章

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777田中魔王の中の人 ◆5GBapmFDjc
我が軍は三日に渡る強行軍を行い、国境付近での迎撃に成功しました。
野営をして我が軍は英気を養い明くる日の決戦に備えたのです。

明けて5の刻、我が軍は布陣を終えて200m程の距離を置いて敵軍と対峙しました。
魔王領の黒旗がはためき、揃いの鎧を身につけた兵が整然と立ち並ぶなか、
例によってお互い罵りあいから始まりました。

「あなた方魔王領は我らが聖賢王が哀れに思い、自由にさせていたにもかかわらず、
それを裏切り我が国民に害為した。また邪神を奉じ邪な性を現した。その罪許し難く征伐を為さん。」

「あなた方イースペリアは聖賢王を自称する王を抱きながら、
虚偽を持って軍をたて我が国に、近隣の国々に武力を持って無理を通さんとする。
これを破りこの地にやすらぎをもたらさんとす。」

「「いざ、武を以てこれを問わん」」
778田中魔王の中の人 ◆5GBapmFDjc :04/04/02 02:21 ID:???
互いの軍使の声と共に百人長は右手を上に差し上げた。
軽装歩兵の長弓が一斉に引き絞られ、緊張が高まる。
軍使が自陣に駆け込み、それに僅かに時間をおいて戦闘開始を告げるラッパが鳴り響く。
それとほぼ同時に矢が放たれる。
腰の矢筒から矢を引き抜き、つがえ、一歩踏み出すと共に胸当てまで引き絞る
次から次へ矢筒から引き抜いてはつがえ放つ。
狙いもなくただ、敵陣へより多く送り込むそのために。

次々に放たれる矢は放物線を描き互いの陣に降り注ぐ。
矢除けの紋も気休めにしかならない。
魔法は効果を求めるならばそれに見合う代価を必要とする。
そしてこの矢の雨から完璧に身を守るには倒れるまで気力を振り絞っても足りるものではない。
よほどの業物でなければそれは為しえず、そして戦闘の前に気力を根こそぎ奪われるような装備を兵に許す事はないからだ。
盾を上に掲げるも合間を縫って矢が突き刺さる。
じりじりと歩み寄りながら、死体を踏み越え、倒れ伏す者を置いて。
ひたすら弾雨の中を進みゆく。槍を抱え、大盾をかざして、攻勢を待つ。
今はまだその時でない。

779田中魔王の中の人 ◆5GBapmFDjc :04/04/02 02:22 ID:???
ラッパの響きと同時にゴーレム付きの魔導兵は背中のハッチに手を伸ばし、一挙に魔力を送り込む。
めまいがするほどの疲労感と引き替えの魔力がゴーレムを起動させる。

今まで「物」だったゴーレムが「者」に、今だけは、今の限られた時間だけは強大な鋼鉄兵に変わっていく。
片膝を立て両手を地に付いた姿勢から立ち上がり、右手の弓を力強く引き絞り射撃体勢にする。
それを待っていたゴーレム付き歩兵がへたり込んだ魔導兵の横を駆け抜け、
一抱えもあるような壺を装填し、導火抗に点火。

矢が降り始めた中、胸を張りゴーレムは進み出す。
へたり込んだ魔導兵を置いて、一歩一歩、ゆっくりと、しかし確実に。
ゴーレムの腕から油壺が唸りを上げて飛んでいく――新兵器、火炎壺だ――敵兵の上で壺が割れ、
敵上広範囲に油をまき散らす。同時に打ち込まれた火矢がまかれた油に点火。
炎が上がりゴーレムが、歩兵が火達磨になる。
すぐに火を消すも倒れた者、錯乱する者が陣形を乱す。

ゴーレムの後ろでは戦闘用魔法杖を構えた魔導兵が電光を、火球を放つ。
自らの身長程もある戦闘用魔法杖。
詠唱筒が唸りを上げて回転し、大量の体力と精神力と引き替えに増幅された魔法を放つ。
火球が敵集団を吹き飛ばし、電光が盾を掲げた敵を貫く。
レバーを切り替え、防壁を展開する。
780田中魔王の中の人 ◆5GBapmFDjc :04/04/02 02:23 ID:???
敵からも石弾が、矢が、電光が、火球が放たれ、盾であるいは魔法で防御していく。
何度かやり取りが繰り返し、急速に魔法の勢いが衰えていく。
互いの魔導兵が消耗し、間合いもつまり、その時を見計らいイースペリア側からペガサス騎兵が駆け上がり、
右翼からゴーレム部隊を越えようとしたその時。
それに呼応するように我が方の飛竜、龍編隊が迎撃する。

ペガサス騎兵が投げ槍で、飛竜が火炎の息で、龍が魔法で熾烈な空中戦を繰り返す。
あるところではペガサスが飛竜の横を駆け抜ける瞬間、騎兵が鉾鑓で斬りつける。
またあるところでは投げ槍を騎手の居ない身軽さで、身を捻り、かわして火炎でペガサスごと火達磨にする。

お互いに一歩も引かず、僅かに我が方優勢ではあるが結局は対地攻撃に参加出来ないままついに双方、騎兵投入に至った。