自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた 第17章

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601間違った世界史
>>358-360の続き

 エルフの政体の一つ、判定者同盟が兄弟地球の半島につくった実験前進基地は、こちらで言うところの韓国、ウルサン付近にある。
 必要な物資は現地調達が基本だが、一部は人間の船団によって運ばれ、建造も人間の手を借りて行われた。
 建築物の多くはドーム状か球状で、竹を骨組みとし河川敷に堆積した粘土にドラゴンの繊維糞を混ぜて壁材とする。
 恒久的に使用する前提なので乾性油による防水も施されている。
 ここに約400人のエルフと2000人ほどの人間技術者が派遣され、活動していた。
 今は多くのエルフが駆けまわり、召喚された列島への先行偵察から持ち帰られた試料や情報の処理に追われている。
 人間たちは平静を保っている。政策には関われず、運搬や工作を担う彼らの出番はまだ先だ。
 先に帰還したトルオールは連絡や報告を済ませ、半球状の竜舎の外壁によりかかり、自分の相棒の診察が終わるのを待っていた。
 手には帰還時に渇きを癒せと渡された西瓜を一切れ持っているが、堅く引き結ばれたくちには無用のものだ。
 表情は堅い。不安で診察に同席する勇気が出ない。ただ、竜医の足音がいつ出てくるかと注意を払っている。
 追跡者阻止に残った仲間のこともそうだが、かの島の人間に何かをかけられ、目を傷めた大事な相棒が気にかかる。
 地面を擦る音とともに竜医が出てきた。普段から優雅なたたずまいで知られるエルフ女性だ。
 髪は一束に編まれて、先端が腰のあたりでゆれている。
 いつも疑問に思う。なぜ長い髪を邪魔に感じないでいられるのか。あれはあれでマナの整流効果を担っているらしいが。
 髪の長さは年齢の証し。重要な部署には彼女のような経験豊富な年長者が配置されていた。
 それが今は眉根を寄せて、目は赤く充血し、くちを押さえている。不安に駆られ、つっかえながらも声をかけた。
「パっ、パルミチン竜医士、わたしのドラゴンの具合は、どっ、どうなんでしかっ。ですか」
「問題ないわ。薬用油と温水で目を洗浄したから、刺激物の除去とともに視力も回復している」
602小官 ◆qG4oodN0QY :04/03/01 23:39 ID:???
>>594-597
 …毒は自粛だ。際限無く噛み付き、コテを『厨官』にせねば収まりが着かなくなる為るだろうよ。
うむ、悲壮感漂うエロ、だな? 演って見よう…。丁度、路線がアレだしな? 丁度良いな?
 で、気を付けィ! 腕立て伏せの姿勢を取れィ! …1! そのまま腕を下げた姿勢で放置の刑!
新教の時受けた罰則だ。助教も一緒に腕立てするのがデフォだ。新教はな? ククククク…。
 有難う。感謝する。好きな様に演らせて貰うとするか。まあ、雑談していて呉れ給え。 
603間違った世界史:04/03/01 23:39 ID:???
 ほっとするが、だったらなぜ顔をしかめていたのか、疑問をぶつける。
「目の周りに付着していた液体を舐めてみたの。これが刺激的でね、まだ舌に沁みるのよ」
 挑戦者だ。性格に問題ありとうわさされるだけはあると、あきれ半分に感心した。
 具体的には妹と不適切な関係を持っているらしいが、よくあることだし、エルフ社会的にも許容範囲内ではあった。
 ともあれ、彼女の言葉に安心する。
 エルフが一線を退く理由の多くは愛騎との離別だ。
 体力的に問題なくとも所領に引きこもり、一族の指導に努める。
 たいてい新たなドラゴンを持つが、騎乗するより世話を焼くことに喜びを見いだすことが多い。
 トルオールと相棒は十の誕生日に渡された卵からのつきあいだ。まだ四百年は現役でいるはずなのに、別れるなど考えたくもない。
 竜舎に踏み込む。初夏の日の下から入った日陰は暗いがすぐに慣れ、漆黒のドラゴンが目に入った。
 それはトルオールに気づき、あいさつ程度の大気干渉場を展開する。
 こちらも同様に展開し、ゆっくり近づきながら双方の力がつりあう状態を保つ。
 彼女の手がドラゴンの鼻先に触れると同時に干渉場は対消滅した。
 エルフとドラゴンが互いを確認する儀式だ。たとえ暗闇でも間違えるなどありえない。気を許せる距離を測る行為でもある。
 これまでよりずっと抵抗が少なかった。ドラゴンがこちらに合わせてくれたのだ。
 あんな目に遭わせたのに、前より信頼してくれたことが何よりうれしい。
 ふと、手に持つ西瓜のことを思い出す。
 西瓜はドラゴンの好物だ。水分の多い植物質は下痢を起こすので避けるべきだが、一切れくらいなら問題ない。
 ふだんは皮しかやらないのだが、今回は赤い身もつけたまま鼻先に差し出すと、ひとくちで吸い込む。
 咀嚼するくちの端から果汁が漏れるが、竜舎に常備してある布で拭いてやる。
 行儀悪いと怒る気にもなれない。本当に無事でよかった。

次回に続く