自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた 第16章

このエントリーをはてなブックマークに追加
386J隊SIDE
>103

「そう言えば名のってもいませんでしたね。自分は草鹿一等陸尉。
あなたは?」
出来る限りにこやかに敵意のないことを示しながら名のる。

「私は魔王領親衛隊長イリア=フォレスタル。
そしてこちらのお方が魔王領主、魔族王カイト=ヴァルナッシュ陛下である」

ヒーリングを掛けながらも、精一杯の見栄を張っていた。
イリアに頷き、FVに向かって声を掛けた。

「木梨二曹、担架があっただろう、持ってきてくれ」

「それではご案内しま−」

再び振り向いた時、イリアさんの顔には驚きと悔恨が一瞬にして流れ、
そしていつの間にか持っていた筒からひものような物を一気に引き抜いた。

音のない爆発。
視界が光と炎に覆われ・・・ほとんど熱くないことに気が付いた。
イリアさんと魔王さん、そして自分を含む1メートル半ほどの空間だけが炎に覆われていない。
 
何が起こったのかイリアさんは剣を抜き、辺りを見回す。
そして先ほどの物と同じような筒を取り出し、ボタンを押し、ベルトに納めた。

387J隊SIDE:04/02/23 01:50 ID:???
どうなっているんだ?
疑問がそのまま口に出た、ハズだった。
「−−−」
声が出ない。いや、音がしない。
そう言えば先ほどから無音じゃなかったか?

イリアさんは剣で自分から観て10時の方向を指し、構えて見せた。
急速に鎮火しつつある炎の向こうに6人の人影が見えた。
なるほどあいつ等がやったのか。

あいつ等にもこちらがやられてはいないことに気付いた様に一斉に行動に移った。

三人が駆け寄り三人が歩きながらこちらに向かってきた。
駆けてくる内二人は剣を、一人は棍棒を構えた。

歩いてくる方は軽装だが得物はまちまちだった。
一人は漫画に出てくるような魔法使い。杖にローブ、ついでに三角帽子。
一人は皮のベストのような物を着た金髪美人。弓を構えてこちらを狙って来た。
一人は普通の服の様なものを着た男。取り出したのは土瓶か?

明らかにこちらを狙っている。
そして我が小隊は混乱していて、こちらからは指示すら出来ず戦闘できる状態にない。
ではどうするか?

考える前に体は自然に89式を構えていた。
苦笑。あえて連射にセレクタを合わせる。
「正当防衛射撃!」
音のない叫びを上げながらトリガーを引いた。
388F世界SIDE:04/02/23 01:51 ID:???
サイレンス(静寂)の魔法だ。
クサカ=イットーリクイの声が不自然に途絶えた。
敵だ。隠れていたのは味方だけではなかった。
辺りを探すとクサカ=イットーリクイの後ろに人影が現れた。
6人、同時に火球の魔法を放った。強行偵察隊か?

とっておきの魔力障壁の魔法筒を起動する。
魔王様から頂いた物なのに・・・
着弾。
爆発。

火球は防ぎきった。
クサカ=イットーリクイが着弾の衝撃からやっと立ち直ったように見える。
私に話しかけようとしてまた驚いている。
こんな事も分からないのか・・・魔王様が命をかけてこの程度のやつなのか。
失望を戦意に換えて剣を抜く。

『魔王様は私が守る』その思いをのせて
389F世界SIDE:04/02/23 01:53 ID:???
効果が続いている内に今度は詠唱筒を取り出し起動。
風の障壁が出来たのを確認すると未だに敵を探すクサカに剣で指してやる。
魔王様の前に出て敵を待ちかまえる。

炎が収まり、その向こうに敵が見えた。
重装戦士がいるのか・・・苦戦しそうだな。

一尉が私の隣りに並び、武器を構えて・・・笑った。

いけない、敵が近いというのに。

敵があと数歩で切りかかって来るかと思った時,
光の粒が重装戦士を貫き血煙りを上げ倒れこむ。
あっという間に戦士も神官も前衛3人が倒れる。
あの重防御の戦士が、回復魔法を使う神官が攻撃すらできないままに。

愕然として振り向くと一筋の薄煙を出す武器を抱えたクサカの姿が在った。
まだ矢が向かい、火炎瓶が投げ込まれる状況にもかかわらず、呆然としたままその姿を見ていた。