「紺碧の艦隊」はありえない

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187名無し三等兵
米=滝
日=本郷ライダー
ドイツ=ショッカー

新の方はこんな感じ
188名無し因果応報 ◆4dGOthLouM :04/01/20 20:50 ID:???
>187
君は何も分かっていないに等しいが、意外なことに本質を
突いている。

左様、後期の艦隊シリーズはまさしくそれに近いスタンスで
書かれた作品だ。
なぜか? これを語るには紺碧・要塞シリーズの根幹を流れ
る世界観を説明しなければならない。

そもそも、あの『荒巻ワールド』は何なのだろうか。軍事に造
詣の深い人間には頭痛をもよおさせ、しかし一般人からは支
持を受け、どこかつじつまの合わない箇所が点在するあの世
界は何なのだろうか。

最初に一つだけポイントを押さえておかなければならない。
リアリズムの観点から艦隊シリーズを評価する、いかなる試
みも無駄であり、徒労であり、的外れである。

よって、このスレで為されている殆どの感想は『読み方』を正
面から誤っている。
189名無し因果応報 ◆4dGOthLouM :04/01/20 20:52 ID:???
それでは、艦隊・要塞シリーズを読む上で留意すべきポイントを
幾つか挙げてみよう。

大前提
1.艦隊・要塞シリーズで描かれる世界(地球)は我々の世界と
完全に異なるものであり、巨大な論理・物理シミュレーター
『グロブロー』である。

2.艦隊シリーズに登場するキャラクター達(日本人)は『英霊』
である。
190名無し因果応報 ◆4dGOthLouM :04/01/20 20:56 ID:???
まず、大前提1について。

これについては、要塞シリーズを通読して頂いた方ならば
お分かりになるだろうが、まず要塞シリーズの物語は天体
的規模のシミュレーター、『グロブロー』上でなされる戦争の
物語である。

この世界観は実に独特で、明らかに物理的な側面を持ちつ
つも(物が壊れたり、肉体が欠損したりする)、精神的な部分
は論理的なアプローチ(心の完全な数学・コンピューター的
アプローチや、死んだはずのものもメモリーバンクから呼び出
されれば、次の物語で復活するなど)で描かれている。
完全なSFであり、ファンタジーとでも称すべき作品だ。

艦隊シリーズの世界も、この原理に近いものによって、
構成されていることが推測できる。

それはなぜか。
191名無し因果応報 ◆4dGOthLouM :04/01/20 21:02 ID:???
根拠
1・転生の概念
言うまでもなく、『紺碧の艦隊』冒頭において、高野五十六
(山本五十六)は後世世界へ記憶を残したまま、転生してい
る。

しかしながら、不思議なのはこの転生が日本海海戦のシーン
へのスリップであることだ。おかしいではないか、一生は長く、
その始まりに戻るなら分かるにしても、ある特定地点に転生
するなど(ましてや、記憶を残したままで)。

ここでポイントになるのは、あのシーンが『戦争中』であること
だ。要塞シリーズの世界でも、キャラクター達が『転生』して目
覚めるのは、ことごとく戦争の最中(もしくは直前)である。
そして、起こる一つ一つの戦いを『コード○○○○』と称し、
物語の区切りとしているわけだ。

さしずめ、高野五十六は『コード1904(日露戦争)』の途
中へ転生したのであろう。もっとも、艦隊シリーズのメイ
ンは第二次世界大戦であるから、『コード1941』(この存
在は要塞シリーズでも語られている。このことから、ます
ます艦隊・要塞の同一世界観の可能性が高まる)だが。
192名無し因果応報 ◆4dGOthLouM :04/01/20 21:05 ID:???
根拠
2・『消える』登場人物達
物語のラストを読んでいないとこれは分からないだろうが、
艦隊シリーズラストにて、登場人物達はことごとく消滅する。

それは『死』ではなく、まさに『消える』と表現するべきものだ。
世界が揺らいだように、大高弥三郎も高野五十六も居なくな
っていく。

では、どこに行ったのか。

ここで最終巻最終章で語られる事実をバラしてしまう。そうする
理由は、この点を踏まえないと艦隊シリーズは語り得ず、そして
この点を知らぬが故になされる無意味な非難が軍事板には多
すぎるからだ。

見たくないという人は次レスをあぼーんして下さい
193名無し因果応報 ◆4dGOthLouM :04/01/20 21:09 ID:???
大高弥三郎は別の世界へ転生し、子供達を相手に教師
をしている。

『時空人、大高弥三郎は念願を果たしたのである』
艦隊シリーズ最後の一文である。分かるだろうか。ここに
最高の証拠があるのだ。

艦隊シリーズの登場人物達は、「戦争は嫌なものだ」といい、
「戦争がない世界に生まれ変わりたい」と言う。
しかし、そういった会話になると決まってなされるのが「我々
軍人は罪深いから、何度転生しても戦い続けるのでしょう」
という論だ。

要塞シリーズの登場人物達は言う。「なぜ我々が目覚める
世界は戦争ばかりするのか」「世界は戦争をしなくてはなら
ないのか」
この時の答えは「それはグロブロー(地球)がそのようにプロ
グラミングされているからです」「この天体が戦争世界だから
です」というものだ。

大高弥三郎は登場人物達の念願をまさに果たしたのだ。
194名無し因果応報 ◆4dGOthLouM :04/01/20 21:13 ID:???
さて、続いて大前提2について

>2.艦隊シリーズに登場するキャラクター達(日本人)は『英霊』
>である

これは最終巻のあとがきで明らかにされている。

初期の頃、マッカーサーとウィロビーの会話でこんなものが
ある。
「奴らは我々に医薬品や食料の差し入れをしているそうです」
「なんだそれは。そんな軍隊があるのか」
「はい、現地の部隊でも不審に思い、訊いてみたところ「我々
はArayだ」と答えたそうです」
「『Array』のことか?」
荒巻氏曰く「これを『エーレイ』と読むと本世界の謎が解けます」
とのことである。
195名無し因果応報 ◆4dGOthLouM :04/01/20 21:17 ID:???
もちろん、この点を取り上げて「要塞と世界が共通ではない」
と言われる方もいるだろう。

その可能性も正直、ある。だが、リアリズムの否定という点で
はまったく変わりのないことであり、どちらにせよ「日本の経済
力が……」とか「こんなトンデモ……」といった観点からこの作
品を非難するのは意味がないことなのだ。

トンデモである。荒唐無稽である。そのように開き直った上で、
エンターテイメントとして物語を作り上げ、けれど何かを表現し
ようとしたのが艦隊シリーズなのだ。

その流れの中で、>187が言うようなコミカライズとでも言うべき
現象も起こっている。

多くの人は違和感しか感じなかったと思うが、あの状態を表現
するのに絶好の言葉がある。要塞シリーズで使われたものだ。

「グロブローのバクだ!」

天体シミュレーターが暴走していたのだ。
196名無し因果応報 ◆4dGOthLouM :04/01/20 21:23 ID:???
さて、評価した上で今度は艦隊シリーズの『アラ』について
突っ込んでいこうと思う。

艦隊シリーズ・負の側面

1.もう少しリアリティを持たせられなかったのか?
いくら荒唐無稽ワールドとはいえ、いくら後世世界とはいえ、
あり得ないことが多いのが艦隊シリーズの世界である。
レシプロエンジンに点火する『アフターバーナー』や、旭日艦
隊建造の資材問題など、詳細な検討を加えれば回避できた
問題点は数多い。

もっとも、ここに作者側の事情を考慮する必要も生まれる。
紺碧10巻、『日米講和成る』は初めて戦闘シーンがなかった
巻だが、この前後のあとがきを読んでいると編集サイドから
派手な戦闘シーンを求められていたことが窺える(実際、10
巻は戦々恐々の出版だったようで、「意外なことに売れ行き
が変わらないそうです」という発言が見られる)。

だが、この点を除いても度を過ぎた荒唐無稽ぶりは改善の
余地が多い汚点であり、見識ある諸氏の鼻をつまませる
ものであることは否定できないだろう。
(もっとも、既に述べた理由から作品の根幹を否定する理由
にはなり得ない。もし、そうするのだとしたら、あなたはリアリ
ズム至上主義者なのだろう)
197名無し因果応報 ◆4dGOthLouM :04/01/20 21:28 ID:???
2.オカルト多すぎない?

艦隊シリーズに独自性を加えた最大の要因でもあるこの点。

この世界に登場するヒトラーは魔術かぶれである。おまけに
それが現実の力として作用する。敵の侵攻地点を予測する
など朝飯前。世界を裏から牛耳る組織『海の目』の使者と対
話するシーンでは、念視のような技によって、本拠地の景観
を言い当てている。

オーディーンの化身だの、日本は龍国だのとその筋に近い
うさんくささプンプンの説が次々と飛び出してくる。ここに幻滅
を覚えた人も多いだろう。

とはいえ、あくまでこの世界の構造を考えるとあり得ない話
ではない(要塞シリーズでは『神』が存在している。サイコキ
ネシスすらも兵器化して使用する!)。天体シミュレーター
『グロブロー』は明らかにオカルト的超能力を容認しているからだ。
198名無し因果応報 ◆4dGOthLouM :04/01/20 21:31 ID:???
3.展開、単調すぎない?

巻の冒頭で敵の堅固な守りや侮れない攻撃軍を提示、
中頃でそれをうち破る新戦法・兵器を見せておいて、
ラストで大殲滅というパターンが艦隊シリーズの王道
である。

特に後期のシリーズは、シベリアからトロツキー軍が、
アフリカや中東からアメリカ・日本連合軍が、もちろん
ヨーロッパでは英国がひたすら攻めまくるという構図
であるため、単調さが助長されたようにも思える。
199名無し因果応報 ◆4dGOthLouM :04/01/20 21:35 ID:???
その他の理由として

4.売れすぎてない?
5.お前のせいで仮想戦記が変なものになった
6.川又千秋とかの方が先なのに、パイオニアとか言うな

などの反論もあろうが。

4.に対しては、どうでもよいこととして。

5.に対しては、正統派戦記で艦隊シリーズを超えるヒットを
生み出せない他作家陣が頑張るべきであり、

6.に対しては、実際のところ世間に広めたのは間違いなく
荒巻氏であり、紺碧の艦隊を知っている人とラバウル烈風
空戦録を知っている人の比率は、比較のしようもないほど
大きいものである。

他、批判は幾つかあろうが、自分が今まで軍事板のスレ・
レスを眺めてきた限り、まともな批判はなされていないよう
に思える。
200名無し因果応報 ◆4dGOthLouM :04/01/20 21:43 ID:???
『紺碧の艦隊』『旭日の艦隊』は間違いなくイロモノである。
それはアールグレイティーにも似て、合わない人にとっては
存在自体が許し難い悪臭であり、そうでない人にとっては素
晴らしい独自性を持った、他に類を見ない作品である。

だが、一つだけいかなる暴論をもってしても、誰も艦隊シ
リーズについて否定出来ないことがある。
それはこのシリーズが仮想戦記ジャンルにおける、最初
の大ヒット作品であることだ。

それは世間にジャンルを知らしめたエヴァンジェリストであ
り、美点を広めた宣伝屋であり、悪点をさらけ出したならず
者である。
けれど、その首には金メダルがかかっている。この作品は
一番乗りであり、仮想戦記というジャンルが存在し続ける限
り、語られ続ける偉業を達成した証なのだ。

文章の世界に限定しても、表現の方法は多彩であり、物語
のジャンルは無限に存在する。
だが『〜〜みたいな話』と人に説明できる『〜〜』になれる
作品は絶望的に少ない。

例えば、ゲームでいうRPGは当たり前に知られた形式だが、
『ドラクエ』『FF』以外の例を出して、あなたは最大多数の人
に説明してのける自信かあるだろうか。

艦隊シリーズはなるほど、賛否両論ある作品だろう。罪深い
作品でもあろう。軍オタからは永遠に評価されない作品だろう。
だが━━断じて偉大なのだ。

                                  おしまい