SBCT(ストライカー旅団戦闘団)について語ろう。
空輸の可能性と制約条件、MGSの開発の可能性、C-130後継輸送機
各国の歩兵戦闘車の開発動向なども広く歓迎。
イラク戦争を振り返っての戦訓も歓迎です。
2げと
Some Stryker tiles fail under fire; maker rushes to fortify vehicles
h
ttp://seattletimes.nwsource.com/html/localnews/2001730931_stryker16m.html まずはイラク展開を間近に控えたこの時期に浮上した欠陥装甲騒ぎについて
全周14.5mm重機関銃に抗堪できるというのが仕様ですが
装甲を構成するセラミック板に欠陥があり、主契約社が急遽3mm鋼板を
内張りする補修を行っています。
セラミック板のメーカーは主契約社には製造変更により
板の形式が9から26そして36に増えた都度連絡済であったと主張しています。
(14.5mmはロシアなどの重機関銃の口径のこと。旧西側では12.7mmが
近い存在です)
続いて 96時間内に1個旅団が展開 という目標について。
この96時間の計測開始は、最初の輸送機が離陸した瞬間から、
計測終了は最後の輸送機が着陸した瞬間です。
つまり、展開を命令されて旅団が空港に装備を集積する一方で
輸送機部隊や空中給油部隊が準備を整える時間は含まれません。
また、2007年までに1個旅団を欧州に展開するという意図はあるものの
現在のところ、米本土のワシントン州(西海岸)、アラスカ州、
ルイジアナ州、ハワイ州、ペンシルヴァニア州にそれぞれ駐屯する部隊がSBCT化することになっています。
(現在は1個旅団が作戦能力を獲得、1個旅団が改編中 ともにワシントン州
フォートルイスに駐屯)
(ペンシルヴァニア州の旅団は州兵)
当初予定されている6個旅団のうち、4個旅団までは予算化されており
これらは、ワシントン州に2個、アラスカに1個、ルイジアナに1個
となっています。従って欧州展開の可能性はあるものの、
どこに展開するにせよ大陸本土かアラスカを出発地とすることに
なります。
出発地はこうして明らかなわけですが
一方、目的地がどこになるかで、輸送機に積んだ装備を下ろす空港が
どこかが決定されます。こうして搭載地と卸下地が決まると
飛行距離も決まり、上空通過国も決まります。
目的地とは、結局、米国の国益に影響のある紛争の起こりうる地域です。
太平洋縁地域、南西アジア、バルカン半島、などが思い浮かびますが、
ランド研究所の報告ではモザンビーグのキガリ、ユーゴのコソボ、
アフガニスタンのカンダハルを検討しています。っと落ちます。
さて、出発地の空港は米大陸本土かアラスカですので、滑走路長、照明、管制施設、
気象情報、駐機場の規模などはまず問題がありません。が、
目的地の空港は米国並みの設備を期待できるとは限りません。かりに米国並みの
能力であったとしても、紛争が勃発した地域の中にあったり付近にあれば
設備が破壊されていたり、十分に活用できないことも考えられます。
これはベトナム戦争時のケ・サン攻防戦、フランス統治時代のディエン・ビエン・フー
が極端な例としてあげられます。いずれも滑走路を敵重砲が射程内にいれ、かつ
周囲高地からは観測班が常に監視していました。このため、ケ・サンでは
航空機の発着は不可能で、負傷者後送ヘリのみの離着陸が可能だった時期があります。
これほど、極端ではなくとも、コソボ航空攻撃時のホーク支隊の展開に
使われた空港も例としてあげられる。これはランドで繰り返し使われている例
ですが、1時間に4機が受け入れられる能力しかなく、そのうち半分は人道支援物資の
輸送に割り当てられていました。
6に出てきた1時間あたり4機というのは、スループットという考えで 一時間内に着陸、卸下、整備燃料、離陸できる機体の数
という意味です。間違ってました。
6であげたようなディエン・ビエン・フーやケ・サンのような戦場にSBCTが
投入されるのかはまた別として、空輸の最大の制約事項は卸下する空港の能力に
あるということを空輸全体から順序立てて書いてみます。(ここいらは資料読み込み
足らないです)
まず、出発地と目的地が決まるとルートが選定されます。
そしてルートの長さに応じて、経由地を設けるか、空中給油で橋を掛けるかなどを
決めます。一方、輸送にあたる部隊の割り当て、人員と機体の確保が始まり、
SBCTは出発空港へと移動し、装備を搭載に備えて点検します。
さて、いよいよ、輸送機が離陸する段になると
まず、目的地の空港にモビリティパッケージを送り込みます。
これは設備の整わない空港の能力を引上げる為の機材で、内容は検索中です。
Engineers Pave New Paths in Afghanistan
<Mobiliy Package
TRANSCOMなどやAMCなどには触れているところがあるはずなのですが
あちこち読まないと分からないかもしれませぬ。
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ttp://call.army.mil/products/NFTF/marapr03/ENGINEER/engineers.htm 陸軍の戦訓センターからの記事。
アフガニスタンのカンダハル国際空港を第82空挺師団第307工兵大隊が修理した作業を伝える記事です。
修理にあたってのまず解決した問題
・先行部隊はアスファルト舗装にコンクリでパッチを当てた。これは短期的には初期投入戦力と補給には
十分だったが、長期的にはコンクリ周辺のアスファルトがコールドジョイントによりダメージを与え
られひび割れ始めた。これはFODの原因となること。
・昼夜での激しい気温差と乾燥した大気のためひび割れは促進されていた。
・対策 該当部分を除去し、周囲のアスファルトと同じ深さまでコールドパッチでアスファルトを舗装した。
・手順
ダイヤモンド刃コンクリソーでコンクリを直線に切断
サブグレードまでボブキャットトラックローダーで掘削
サブグレードを固めて、コンクリパッチが8インチ〜10インチの厚さになるように砂利を敷く
300平方フィートを超えない大きさでセルを切り分ける
中央に10インチ、中央側面?に16インチ、#5 Rebarをさらに敷く
コンクリの水が蒸発しないようシートを被せる
タイプTコンクリを打つ (州兵第769工兵大隊がConcrete Mobileを操作)
震動固締め機も使用
砂袋を上に載せて数日間、水をやり養生する
既存のアスファルトとの間隙に砂利をアスファルト高さまで敷き、コールドパッチで
アスファルトを敷き、固める
最後に水の浸入を防ぐ為アスファルト密封剤を既存のアスファルトとコールドパッチした
部分の上に敷く
#土木関係の内容ですが、モビリティパッケージの中身を考える手掛かりには
なるかも。
8の記事の続き
ダートパッチという方法を導入した経緯
カンダハル空港は地域のハブ空港であり、高度が高く夏季の乾燥した薄い大気では
航空機は発着に滑走路を一杯に使って離着陸するために作業に割り当てられる時間が
わずかであること
手法
掘削するまでは上と同様。2インチのスランプコンクリートを2インチ盛り上がるまで
敷き、レーキを掛けて大きすぎる骨材を取り除く。その上にコース砂を敷く。
これを既存アスファルトの高さに達するまで繰り返す。
EK35を数回、薄い層状に表面に溜まるまで散布する。これは砂塵防止剤であり、耐久性向上
効果もある。
・DEUCEブルドーザーに変えて、ボブキャットの使用、 runway repair matting
の代わりにコンクリと仕上剤を使うことで、 Light Airfield Repair Package
を減らすことができる。
#ということで、ダートパッチで成功した。C-5も問題なく離着陸できたと
言っております。
考察 AMCでなく、陸軍工兵が作業している。モビリティパッケージについても
陸軍関係で探すと良いかもしれない。が、管制支援設備などを含むと想像していた
目論みからすると外れている。
これまでの話の展開
SBCTが目的地に展開するに際して、空輸と海輸の二通りに事前集積の組み合わせが
研究では述べられているが、空輸の際は何が問題かについて研究をもとに整理してみる。
そこで、モビリティパッケージ(空港設備向上用装備と人員の一揃い)
がまず投入されるとMR1606では述べていますが、その中身を調べています。
現状
ランドが空軍のスポンサーで研究発表している一連のシリーズから
遠征航空宇宙軍の展開について概説的に述べたものを選んで何とか読んでいるところ。
このシリーズは細かくて、エンジン整備、ランターンポッド整備、F-15のアヴィオニクス
などについて述べている提言もあったりします。
また、空港の設備についても日本語サイトで大まかに把握しているところ。
ただ、航法支援設備となると、空港から離れて点々と20km間隔でビーコンが
設けられていたりします。こういうのは軍用飛行場の設備に必要なのかなどは
まだ分からなかったり。
現在の疑問 覚書き
・10月のイラク展開では、ワシントン州フォートルイスからイラク国内の空港に
空輸されるのか、それともタコマ港やシアトル港から海輸されるのか
・MGSの最新情報について続報
・議会への報告書は9月までとサイトでは言ってましたがこれを捜索中
SBCT自体は純粋な戦闘部隊だよね?
>>8-9のような工兵部隊は当然別に展開することになるということでよろしいか?
>12
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ttp://www.globalsecurity.org/military/agency/army/images/ibde-1.gif 工兵部隊は案の段階で中隊1個が入っています。そして現在編成完結した1個旅団では
1個中隊が入っています。現在の陣容については
sbct unit fact sheetを検索すると出てまいります。
さて、問題の空港建設、補修、保守などを行う工兵についてですが
陸軍工兵隊、または空軍技術者、海兵隊工兵隊の3つの可能性があると思います。
これらのうち、アスファルト道路の敷設をできる能力があるのはどれか
ということですが、陸軍工兵隊については8−9の記事を見る限り
自前で出来るようです。そして、SBCT直属の工兵隊も同じ陸軍であり、職種も
異ならないでしょうからその能力はあるでしょう。
では、問題はSBCT本隊が展開するに先立ち、モビリティパッケージの一部として
先行展開するのか、また、空港の受け入れ能力の調査に、工兵偵察として
部隊が展開するのかについてですが、これは不明です。
そもそも、モビリティパッケージという用語自体、ランドの研究報告で
使われている概念で施設が元々無い、或いは破壊された空港の運用を向上される
ための装備の重さと容積を計算するために導入されているものだからです。
編成については以下にあげますので見て頂けると幸いです。
(SBCT UNIT FACT SHEETが出典)
SBCT旅団(3614人)
歩兵大隊×3
騎兵大隊(偵察、捜索、目標捕捉)
砲兵大隊
支援大隊
軍事情報中隊
工兵中隊
通信中隊
対戦車中隊
歩兵大隊(歩兵中隊×3)
本部及び本部中隊
偵察小隊
迫撃砲小隊
衛生小隊
狙撃分隊
火力支援班(原語ではelement)
歩兵中隊×3
本部
歩兵小隊×3
機動砲小隊
迫撃砲班
前進観測班
狙撃班
衛生兵
大隊全体の装備
ストライカー65両 ジャベリン27 対戦車ミサイル9 120mm迫撃砲10
81mm迫撃砲4 60mm迫撃砲6 M24狙撃銃5
#問題は、ハマー(高機動車)の定数が出てこないこと 相当数装備されているはずで
旅団の車両全体の8割だとランドは指摘しております。
17 :
12:03/09/22 23:32 ID:???
>>16氏
サンクスです。
もうちょっと伸びてもいいスレのような気もするが。
やはり装輪は人気がなさそうだ(苦笑)。
SBCTの具体的な想定戦場はどの程度のもんか気にはなりますね。
MEUとの差別化は歩兵の頭数で図るとして、エアカバーはどれくらいのものを考えているのか、とか。
今まで提示してもらったものを見ると、少なくともAEFの展開は当てにしていい状況なわけなんでしょうが、
(そうじゃないと対空火器が少なすぎる)やはり事前投入で紛争を未然に抑止する方向なのか?
基本的には、軽師団では対応に苦慮する敵対勢力の存在する地域だと思います。
ユーゴ軍が活動しているコソボ州などが例として挙げられています。
ユーゴスラビアからの遺産である戦車を保有して運用していたユーゴ軍相手に
は軽師団だけでは心許ない場合、SBCTの1個歩兵大隊を連れて行けばぐっと
安心が増します。MGSの開発が無事にこれからは進み、配備が予定通り
いけば、地上に降りたらばトラック歩兵の軽師団よりも装甲化されており、
砲兵も手厚い部隊はそれなりに使いどころがあるはずです。
<MEUとの差別化
MEUの場合はアフガン展開の例もあるので微妙なところです。常に待機状態で
両用群に乗船している部隊数が少ない一方でSBCTは本土に待機していて直ちに
旅団1個を展開できるのが強みと言えるでしょうか。
<対空部隊
実は9月に提出される議会報告書がこの点に触れてこの点で増強される可能性も
あると、7月の議会予算局報告書は述べていました。そうなるとさらに旅団全体の
トン数が増加し、展開に際して必要なC-17のソーティ数が増加し、補給負荷も
増大するということはありますが。
戦域内輸送でのC−130の能力にも疑問が提出されています。条件次第では
空中給油無しに搭載して飛行できるのは200マイルとか700マイルとかいう数字が
出ています。容積も厳しいですから海兵隊のLAVと異なり、25mm機関砲搭載の砲塔
ではなく、RWS(車上武器を車内から操作できるシステム カメラがついてます)
となりました。
<AEFの展開
ルワンダやモザンビークで起きた大量虐殺、迫害の阻止という場合には
遠征航空軍の展開は必要とされないかもしれません。
そもそも戦力投射、政治が投入を決意するのはどのような段階に
おいてかという問題もあります。
ともかく、装甲車両があり、都市環境での作戦にも対応できるのならば
1993年10月3日にソマリアで起きたブラックホークダウンのような目に
軽師団をあわせることはなくなります。
21 :
12:03/09/24 18:36 ID:???
丁寧なレスサンクスです。
上のFM読み始めてみました。
>>20 >そもそも戦力投射、政治が投入を決意するのはどのような段階においてかという問題もあります。
ここが今一番興味のあるところです。
それこそルワンダ等での鉈や棍棒まで持ち出しての民族紛争にSBCTをわざわざ突っ込むかという疑問も
ありますし。明確な敵がおらず、軽歩兵による治安維持向きですから。
紛争地域からの自国民救出なら、それこそMEUでいいわけだからな・・・。
>21
ランドの研究報告とGAOの7月の報告とで世界各地にどれだけの時間で
展開できるのかを具体的に計算しているのですが、アフリカ奥地展開の例として
取り上げています。
これらは海岸からの陸路距離があり、空輸が現実的な選択肢となる例として
扱われているのだと思います。というのは、港湾や穏やかな海の沿岸では
海輸でも空輸とはそれほど時間的に異ならない、ことに事前展開をディエゴガルシア
やイタリア、グアムなどにしている場合は本土からの空輸よりも早いということも
あるためです。
<事前展開 事前集積
ランド報告では、高価なストライカー装甲車は本土から運び、安価で車両の大部分を
占めるハマーは事前集積をするという可能性について触れています。
GAOの7月の報告では、この方式によるかどうかは触れず否定的だと
しています。
<戦力投射の時期
MEUの場合は、両用群を沖合いに待機させる(例が最近のリベリア)
或いは空母にヘリを載せて待機させることもしています。
ハイチ侵攻や、アフガン航空攻撃などでも空母を用いていました。
ハイチのときは陸軍師団。アフガンのときは特殊作戦部隊の展開基地として
でしたそうですが。
ストライカー旅団の場合は、第2装甲騎兵連隊を除いては自前の航空戦力は
ないようです。第2装甲騎兵連隊は、改編に際してヘリを含めるという話ですので。
訂正
これまで議会予算局といってきたのはGAOでした。すみませぬ。
他のレポートと混同しておりました。