「詠美、そんな格好じゃ風邪引くよ!」
スポーツブラとショーツだけでベット上で仰向けなっている姿を見兼ねた優香が注意する。
「ねぇ詠美聞いてるのぉ!!
風邪引くって…」
あのあと自室に戻ったものの、いまいち釈然としない。
(一体このメモにはどのような意味が…)
ベットで寝転がりながら先ほど先輩早苗から貰ったメモを眺める詠美。
真剣に考える詠美には優香の声は届いてはいない。
すると…
「ゆーことをきかない子はこーだぁぁ!」
「へっ?きゃぁ!!」
−バフッ
いきなり優香がベットで寝転がる詠美に馬乗りになる。
「ちょっと、優香ぁ!!」
「ふっふっふっ・…」
馬乗りになった優香が手をわきわきと動かす。
「なぁ〜んか、やぁ〜〜な予感が…」
詠美の怪訝そうな表情を見た優香がサディステックな笑みを浮かべる。
そして…予感的中。
-こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ
「ちょっ、ちょっとぉ…なにするのよぉ!!あははぁははぁ
あはははははははははははははははぁぁぁ」
「せんゆーのちゅーこくはむしするやつはこぉ〜なのだぁ〜」
「あはははぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、ゆか…や、やめてってばぁ、あははははぁ」
必死に逃れ様と体をくねらせるものの、しっかりと優香に押さえ付けられ詠美は脱出が出来ない。
そのうえ『脇の下、くすぐり方が足りないよ! 何やってんの!』と某艦長に言われたのか
は知らないが、詠美のくすぐり攻撃は次第に激しさを増す。
くすぐられぱなっしの詠美…流石に息が段々続かなくなり
「あはははっはっはっは・・・はぁはぁはぁはぁはぁ」
最後には肩で息をするまでになる始末。
呼吸困難のせいか、詠美の肌の色も心なしかうっすらと薄桜に色気づいてくる。
「詠美はここが弱いのだ」
「ひゃん。」
日頃の訓練のおかげで引き締まったバストに、綺麗な縦一文字のおへそ。
優香は脇を攻撃している右手を優香のおへそのあたりにツッーと滑らせる。
詠美は思わずへんな声を出してしまう。
…その拍子に早苗からもらったメモを落としてしまう。
「うにゃ、なんか落ちたぞ?
ん?これなに…アドレス?」
詠美の手から落ちたメモを拾いながら呟く。
「そうか、それだったか!!」
「へきゃぁ!」
いきなりガバっと起きる詠美。
詠美のせいで顔面から床に落ち、涙目で赤くなった鼻の頭を押さえる優香
の手から早苗から貰ったメモをひったくると部屋から飛び出る詠美。
「ちょっと、下にトレパンくらい履きなさいよぉ!!」
慌てて部屋を飛び出た詠美の後をトレパンを持った優香が、鼻の頭を押さえなが
優香が追い駆ける。
詠美らが来たのは防女内にある図書室だった。
図書館はもう閉館時間が近いこともあって図書委員を除いては数人しか図書館内
にはいなかった。
詠美は図書館に入ってすぐにあるカウンターに備え付けのWEB閲覧許可証に必要事
項を記入し図書委員にそれを提出する。
「まだネットは使える?」
「あと10分くらいで閉館ですけど…」
「それで十分よ」
「では学生証を…」
詠美は胸ポケットから防女の学生証を出す。
それを受けとった図書委員はパソコンのバーコード読取り機に学生書を通す。
「使用目的はなんですか?」
「う゛」
という図書委員の問い対し、返答につまる詠美
(まさか江畑のズラに関してなんていえないし…)
「あのどうかしましたか?」
「あぁ〜…宿題!! そう宿題のための資料探しぃ!」
「そう!宿題ぃ!宿題よぉ!!」
質問に即答出来ない詠美を怪しげな顔で見る図書委員。
仕方がなく適当なでまかせで詠美の援護射撃をする優香。
この優香のその場凌ぎで幾度と無く助かっている詠美。
「そうでしたか…では20番にどうぞ」
「ありがとう」
係員から学生書を受け取ると、新聞閲覧コーナーの横にあるWEBコーナー
に向かう詠美ら。
「あっ待って!」
-ビクッ!
図書委員の待ったの声にビクっとなり、思わずきょどってしまう二人。
「もう印刷出来ませんけど、大丈夫ですか?」
「あ…あっいや大丈夫よお構いなくぅ〜」
図書館には新聞コーナー閲覧コーナーの横に20台のパソコンがありWEB
サイトが閲覧できるようになっている。
これはあくまで防女内での噂であるが…
WEB閲覧者の記録は全てPCに記録されていて、個人データに誰がいつどうい
うサイトを閲覧したかが記録され、もし好ましくないサイトを閲覧した場合
は憲兵や学校側からマークされるという噂があった。
故にこのWEBコーナーを使用する生徒は少ない。
「ねぇ!一体こんな時間にここに来ていったいどぉーしたのよ!」
「し!」
優香の口に人差し指を当て黙らせる詠美。
パソコンを立ち上げ、デスクトップにあるInternet Explorerをクリックし
早苗のメモにあるアドレスを打ち込んでいく
「www.gazo-box.com/entrance/img/2049.gif…っと」
アドレスを打ちこみEnterキーを押す。
・
・
・
・
「しょ、触手ぉ!!?」
「触手ぅ!!!!??」
一定の読込後に現れたのは一枚の江畑タソのお辞儀する動画だった。
んが…ヘヤーが…なんちゅーか…あの…その…動いてる…。
「20番終わりました」
パソコンの使用終了を図書委員に報告しようとカウンターに来た二人だっ
たが、カウンターにはさっきの図書委員の姿はなくブロンドの女性が直接
カウンターに腰ををかけていた。
「自分らあかんで、そーゆー怪しげなもんを手回しなしで見とったらぁ〜」
優香と詠美は二重で驚いた。
まず、なぜ自分達しか見ていないはずの怪しい江畑タソ画像を閲覧していたのを
この外人は知っているのか…
そして、なぜ風貌に似合わず怪しげな関西語もどきを話すのか…
(殺るか…)
(…殺ろうか)
優香と詠美はアイコンタクトを互いに送る。
敵か見方かすら知れない謎の外人もどきが自分達の弱みを握っている。
このままでは将来に禍根を残す…
優香がカウンターにあったセロハンテーブを土台ごと、相手に悟られないよう
に後ろからそっと詠美に渡す。
「ほれ、ここみてみーぃ」
怪しげ外人がカウンターにあるパソコンモニターを指差す。
鈍器を後ろに隠しながらモニターを見るためにカウンターに近づく二人。
モニターにはWEBコーナーの簡単な配置図があり、さっきまで使用していた
20番の所が赤く点滅していた。
「自分が気付いたからよかっけど
こーゆーのほッおいたらセンターにちくられる…ぞ、っと」
怪しげな外人がそう言いながら何やらコマンドを打ちこみ、画面の点滅を消す。
「あ…あの?」
「あぁ〜そっちが憲兵一年の沖田詠美で、そっちのちっこいのが1年3組のクラス
長、近藤優香やろ」
「そうだけど…」
まったくの初対面の人間の口から自分の名が出てくる。
構内広しといえども無駄に顔が利くっていったら…
「へくしょ」
「あら、智美様風邪ですか?」
ボロタオルを雑巾にすべく裁縫に励むみさきが三条に尋ねる。
「湯冷めかしらね…
今日は寒いから早く寝る事にするわ。
じゃおやすみ」
「はい、お休みなさいですぅ」
「あっそうそう。自己紹介がまだやったな
自分は中等部2年のグラバーや。
まぁ『食料コマンドー』っていうた方が通りはいいけどな」
「食料?」
「こまんど?」
詠美と優香は思わずグラバーの言葉を繰り返してしまう。
この学校の組織には『食料コマンド』という組織は無いからだ。
「なんや、最近の一年は食料コマンドの事も上から教えてもらわんのか…
難儀な学年やのぉ〜」
「なんです?『食料コマンドー』って?」
「まぁ…そーゆーことはいずれ分かる事やろ
…そうそう、自分らこの貸しどぉーするんか?」
「借り?」
「そぉーや。怪しげなサイトをここのPC使って閲覧して危うく軍歴に傷が
つく所をうちの機転で防いだんやから、それなりのもんで返してもらんきゃなぁ〜」
「…」
「そんないきなり、そんな言われても…」
黙り込む二人。
沈黙が辺り支配する。
「あ〜もうええわ!
二人とも初心者さかい、明日の鯵フライで勘弁してやるわ」
「へっ?」
「鯵フライ?」
「そうや、鯵フライや!」
グラバーはカウンターにあった図書委員用メモ紙を一枚失敬すると、それを縦に2枚に割り、
一枚づつ優香と詠美に渡す。
「まずここにや、品名と自分の署名を書く…あと日付を入れて終わりや」
「はぁ?…」
言われるままにアジフライという品名と自分の名前、そして今日の日付を書いた紙をグラバー
に渡す。
「おーきに」
二人の紙を受け取ったグラバーは記載内容をちゃっと確認するとグラバーは図書館を後にした。
その姿を狐に摘まれたような感じでグラバーを見送る二人。
「一体なにがどぉーなってんの?」
「さぁ…?」
「寝よっか…」
「そうね…寝ようか」
‐翌朝、食堂にて‐
「ぬぉぉぉーーーーーーーーMY鯵フライがぁ!」
思わず叫んでしまう優香。自分の席にある朝食のおかずから綺麗さっぱりと鯵フライだ
けが消えていた。無論詠美の鯵フライもである。
「やっぱり昨日の食料コマンドーの一件かなぁ〜」
鯵フライの添えだった刻みキャベツにソースをかけながら詠美が答える。
「やっぱり、世の中にはXファイルみたいなもんがあるんかねぇ…」
「そうね…世の中には触れてはいけない真実ちゅーもんがあるんだろうね。」
とメインのおかずなしの朝食をゆるゆる食べ始める詠美と優香であった。
「www.gazo-box.com/entrance/img/2049.gif…っと」
アドレスを打ちこみEnterキーを押す。
・
・
・
・
そして
GAGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAGAG…
「OK,ブラクラGET…」
「流石だな詠者…」
翌日…
「早苗先輩!あれブラクラじゃないですかぁ!」
「釣れた(゚∀゚)アヒャ」