>>67 福岡防衛線外伝「サヨナラバス」(その21)
ぼくのそうした心の動きを見透かすかのように、近藤が薄く笑って続ける。
「実は、○○村にはもう一つ興味深い話があってね」
「・・・・・なんでしょうか?」
すっかり合いの手役に堕してしまった己の知性のなさをうらみつつ、ぼくはなかばうんざりしたような口調で尋ねた。
「テロが発生する数日前、○○村から10キロほど離れた山中に、自衛隊の輸送ヘリが一機不時着した。記者会見に
よれば、クルー4名のうち1名が死亡、2名が重態で、残り1名は無傷だったそうだ。原因は、航法ミスと燃料切れのダブルパンチ。
詳しい調査結果は後日だそうだ」
「事故という意味では、そう珍しい話でもないかと思いますが」
ぼくは、わざとそっけなく反応した。内心はけっして口調どおりではなかったけれども。
「単なる事故なら、ね。痛ましい話ではあるけど」
近藤は、出来の悪い生徒を諭す教師にも似た何かを声音に滲ませてぼくの抵抗を粉砕した。
ぼくは、きっと何かろくでもない話が続くのだと観念し、黙ったまま近藤に話の先を促した。
>>68 福岡防衛線外伝「サヨナラバス」(その22)
近藤は、しばらくぼくがなにか言うのを待っていたようだが、返事がないとみて、肩をすくめて話を続けた。
「自衛隊内部に何人か私の知り合いがいるんだが、彼等によれば、そのヘリは九州の"外"に何かの
任務を帯びて飛んでいったらしい。もちろん、積荷は極秘で、彼等にもそれが何かはわからないとのことだ。
で、それだけの予備知識を得ていた状態で○○村の人間にそれとなく事故の話を振ってみた。
あのときは大変だったでしょう。おつかれさまでしたとね」
「それで?」
「電話にでた村役場の担当者が、なかなかお人よしで、自分の見たままを正確に話してくれた。
事故の知らせが入ったとき、村でも消防団やら有志一同やらで山狩りの準備をしたらしい。が、直前に
なって行政府からストップがかかった。専門家を派遣するのでまかせてくれ、とね」
「専門家・・・・自衛隊ですか?」
「半分あたりだ。完全武装の一個小隊と、それから得体の知れない女性が一人派遣されたらしい。
彼によれば、中世ヨーロッパの坊主みたいななりをしていたそうだ。その女坊主が、具体的に何をした
かまではわからなかったそうだが」
そこまで近藤が話したとき、長い長い上り坂が終わり、緩やかな下り坂にさしかかった。
いくらかアクセルを緩めながら、カーナビに目をやる。○○村まで、あと2キロ。
この直線をひた走り、その先の緩やかなカーブを曲がれば、村が見えてくるはずだ。
空は相変わらず晴れていたが、ぼくの心にはどす黒い不安がさざなみのようにたちはじめていた。
70 :
名無し三等兵:03/05/10 23:59 ID:bPKqMvs4
うちあげー!
なんか1も見捨てたようだな、ここ。まあ当然ではあるが。
.:∵・(゚д(゚д゚ #)≡=− (( ___
. |71| _/| /|
73 :
名無し三等兵:03/05/11 12:21 ID:YFoNslkD
もういっちょ、うちあげ!
74 :
名無し三等兵:03/05/11 13:19 ID:otFVq/sY
突如として東の海に出現したニホンなる国については御存知であろう。
彼の国は軍事力ばかりが語られるているが、それは一面でしかない。
例えば硝子や陶器。エルフィールでは裕福層しか所有していないこれらを
一般市民が日常に使用しているのである。
また、山の民を悩ませる“痒い草”を塗料にかえ工芸品(漆器と呼称)を
造りだす。見た事のある者も多いだろう。
何より驚愕すべきは全国民の九割以上という識字率の高さである(中略)。
〜商工ギルドの派遣調査員の報告より抜粋〜
チョトSSを書いてみました。お目汚しでなければ幸いです。
まぁ、ageるなと。
76 :
ACE:03/05/11 19:02 ID:???
59>
…確かにあの発言は軽率だったよ。悪かった。
ただな、このスレを立て俺にSSの許可をくれた1だおー氏と
外伝の許可をくれたてさりすと氏がもし俺にやめろと言うなら
俺はおとなしく去ろうと思う、ということだ。
むしろ、だ。このスレの住民全体に火の粉を飛ばした貴様が俺に偉そうなことを
言うんじゃねぇ。強盗殺人犯が空き巣に説教するようなもんだ。
>>76 あんまし喚くな。
>>59が荒らしかどうかなぞ分からんだろ。誰だか分からん奴を荒らしと決め付けるなよ。
ちょっとは煽りに耐性を付けろ。それが出来ずに感情的なカキコを続けてる内はお前も
荒らしと一緒。
強盗殺人犯も空き巣も同じ犯罪者に変わりは無い。五十歩百歩だ。
78 :
名無し三等兵:03/05/12 02:55 ID:SodoTlaa
晒しage
79 :
CK:03/05/12 16:16 ID:???
とにかく落ち着いて下さい。
80 :
CK:03/05/12 16:30 ID:???
81 :
ACE:03/05/12 18:35 ID:???
77>
了解した。すまんかったよ…。
ではまあ本日分を…。
「意外と変わらねぇな、未来の銃って…。」霧島は目の前の統自の隊員たちの
兵装を見て言った。「は、これは24式小銃であります。5.56mm弾を使用
します。ですが、銃身の下にこのようにランチャーやショットガンなど様様な
オプションを装着できます。」派遣部隊の分隊長、佐藤3尉は答えた。
先日制圧したリャド鉱山に向かった調査隊が消息を絶ち、柊たちは統自の陸上部
隊と合同で捜索に向かうことになった。その車内で柊たちは統自の兵装に興味が
尽きないようだった。
「へえ、ランドウォーリアってヤツと同じ思想か。でもその鎧みたいなプロテク
ター、重くないのですか?」鮫島は彼らのスターシップ・トゥルーパーズのよう
な鎧を見て言った。「ええ、見た目より軽い素材ですし、それにこの軍服には筋
力を増強する装置が組み込まれています。意外と速く動けますよ。」「まるでス
プリガンだな…。」霧島は言った。すると統自隊員の一人が目を輝かせた。
「え、スプリガンをご存知なのですか!?」「そりゃあリアルタイムで読んでる
世代だからな。全巻持ってるぜ。」「凄い、俺たちの時代じゃ古い名作としてす
ごく価値が高いんです!見せてください!」「ああ…生き残ってな…。」
82 :
CK:03/05/12 18:47 ID:???
>スプリガン
実はあんまり好みじゃない。(ア−カムの連中の思想がやだ。)
別にどうでもいいことなんですけど。
83 :
ACE:03/05/12 18:54 ID:???
「ここから発進できるのか?ホントに?」ゼンガー少佐はアルビオン艦内の
発進ゲートで言った。横の愛機タイフーン・トロンベにはアスガルドの整備兵
達の興味深げな視線が集まっている。
「空中戦艦から発進なんて…面白そうね。」レジーナ中尉は言う。
「カイル君、だったね。教えてくれないか。そのミストラスとかいうロボットに
ついて。」ゼンガーは横でミストラスの前に立っているカイルに訊く。
「はい。」カイルは振り向く。「この世界には、古代には進んだ文明があって、
今でもその遺産が残っていることがあります。」「ストーンヘッジのような?」
「ええ。ミストラスもその遺産です。今では生産能力はどの国にもありません。
古代文明が滅ぶきっかけになった大戦争で、多くの技術が失われたからです。
我がアスガルドは比較的破壊の度合いが小さく、運用ノウハウが残っているんで
す。故にアスガルドはオーラン以上の軍事力を持つに至ったんです。基本的にミ
ストラスは遺跡などを掘って出てきた分を使用しているんです。」「まさに掘り
出し物、だな…。」ラインハルト大尉は言った。「で、これが君の愛機、ええと
何…。」「『雷のリベリオン』、現在最強のミストラス『七大精霊機』のひとつ
です。この艦には現在そのうち3機があります。」「ほう!最強の機が半分近く
もあるのか!」ウラジミーは驚いて言う。
警報が鳴ったのはその直後だった。
84 :
ACE:03/05/12 19:19 ID:???
鉱山内を分隊は慎重に進んだ。スパルタン分隊と統自の佐藤分隊は一列になって
ライトで先を照らしながら歩を進める。
「佐藤隊長!」佐藤分隊の一人が言う。「調査隊をセンサーで感知。この先にいま
す。」その声で分隊は駆け出す。だがそこにあったのは、とんでもない怪力で引き
裂かれたかのような調査隊の亡骸だけだった。竜崎3尉が目を背ける。「これは…
いったい何が!?」柊は冷や汗を流しながら言う。そこに「佐藤隊長、動態反応を
確認!何かが来ます!!」佐藤分隊の一人がバイザー裏に映るセンサー画面を見て
言う。全員が今いる広場のような場所のいくつかの分かれ道の入り口に照準を合わ
せる。だが次の瞬間、横の坑道の壁面の土を破って何かが飛び出した。
まるで、鎧を着た戦士、といった感じだが、動きはロボットのようだ。剣を振り上
げて、襲い掛かってくる。統自の隊員たちは突然のことで対応できない。
「総員、撃てぇ!!」柊は襲い掛かる鎧に89式を浴びせる。そこに武藤のべネリ
M3が火を噴き、鎧は頭を撃ち砕かれて倒れる。鎧の中には機械のようなものが見
えた。竜崎3尉は剣をかわし、鎧に膝蹴りを打ち込んで体勢を崩し、89式を浴び
せて沈黙させた。霧島は鎧を上から真っ二つに切り裂く。アレクサンドルが施した
刀身強化魔法は恐ろしいまでの切れ味を発揮している。ミラー曹長に至っては、な
んと鎧を一本背負いで投げ飛ばし、M4で頭部を蜂の巣にする。
場慣れしたスパルタン分隊により、一人の死者も出さずに鎧は殲滅された。
85 :
CK:03/05/12 19:38 ID:???
古代には進んだ文明があって、
>今でもその遺産が残っていることがあります。」「ストーンヘッジのような?」
「ええ。ミストラスもその遺産です。今では生産能力はどの国にもありません。
古代文明が滅ぶきっかけになった大戦争で、多くの技術が失われたからです。
我がアスガルドは比較的破壊の度合いが小さく、運用ノウハウが残っているんです。
アスガルドも運用だけでしたか・・・・・遺跡に頼っての最強というのが若干悲しいとこですが・・
・・・修理程度は出来るようにしてやって欲しいです。。
>刀身強化魔法
戦闘機など装甲も強化して・・・・・まあアレクサンドルなら大丈夫かも。
ところでもしかすると、鉱山からでてきたのって・・・・・ミストラス?
海皇紀(月刊マガジンかマガジンスペシャルだったと思う。)のロボット
みたいな出方だったな・・・・・。
のわわっ 前スレ容量overだったのですか…
いまさらながら 新スレ (・е・)ゞ
87 :
CK :03/05/13 12:43 ID:???
>空中戦艦から発進
空中戦艦の全長によるかも知れませんが、どうやって発艦するんでしょうか?
まさかスピ−ドがつくまでは落下しっぱなしだったりして・・・・。
あとこの空中戦艦はどうやって浮いているんでしょうか?
正直、CKマジうざい。SSの感想にしたって、なんか度を越してる気がするし。スプリガンの部分とか。
あと、1のホムペにもこのスレについて御注進にいってるし。
何様のつもりなんだろ?
89 :
CK:03/05/13 12:57 ID:???
>スプリガンの部分
感想ではないので無視してかまいません。
90 :
名無し三等兵:03/05/13 13:08 ID:9hEwY/KR
91 :
ACE:03/05/13 18:22 ID:???
>アスガルドも運用だけでしたか・・・・・遺跡に頼っての最強というのが若干悲しいとこですが・・
・・・修理程度は出来るようにしてやって欲しいです。。
いや、自分にとっての「運用」とは補修体制まで含めた一連の行動を
さします。アスガルドなら修理できますよ。オーランでも部品の共食い程度の
補修はできます。
>空中戦艦の全長によるかも知れませんが、どうやって発艦するんでしょうか?
まさかスピ−ドがつくまでは落下しっぱなしだったりして・・・・。
あとこの空中戦艦はどうやって浮いているんでしょうか?
実は落下しっぱなしでス。だからある程度高度をとって発進します。
ただ専用の装置を付ければミストラス射出用カタパルトを使用できます。
空中戦艦の浮力は「飛行石」ですw いわゆるファンタジー的動力で。
でも…スプリガン嫌いですか?自分はあの「凄くなさそうで凄い」オーパーツの
数々がかなり楽しいんですが。
おお新しい人も来た事だしまた昔のように華やかになったらいいなあ
ちょと荒れてたけど(もしかしたら現在進行形かも)・・
皆さんマターリがんばりませう。
自分も負けじと交信行きます。
シクヴァル海軍の最後の急降下爆撃を回避した直後、はるなのレーダーに突如として新たな機影が確認された。
まず北西方面から8機、続けて北から6機が現れ徐々に彼ら目掛けて真っ直ぐに向かってきていた。
「艦長!レーダーに感!!味方の航空部隊です!!」
西部劇でインディアンに襲われ絶体絶命の市民達の元に騎兵隊が駆けつけたようなその状況に
『はるな』のレーダーを担当していた隊員達が歓声を上げた。
『敵航空部隊第6次攻撃部隊が出撃しました。平均高度200、ドラグーン13騎、グリフォン14騎です。約15で戦闘空域に侵入してくるものと思われます。
全騎から強力な魔力の反応がありますので制空部隊と思われます。気をつけてくださいね。』
AWACS『エアキング』の管制官のクレアから続けて上がってきている部隊の連絡が速やかに各機に行なわれる。
『地上部隊の支援は後方のフランス空軍が行なってくれるので心配は要りません。
安心して敵航空部隊だけを倒しちゃってください。』
『OK、『エアキング』すぐに敵航空部隊を殲滅して見せよう。各機、我に続け』
『メビウス、了解』『『ゲルヒルデ 了解』『ヘルムウィーゲ 了解』
寺井に率いられた各機のレーダーがドラグーンたちをロックオンする。
直後 彼らは機体名以外の宣言を合したかのように一斉に宣言した。
『エンゲージ』そしてその数秒後『フォックス1』と。
ほぼ同時に発射された6発のAAM‐4と2発のAMRAAMが約20KM先の目標目掛けて一直線に飛び出していく。
この国産のAAM-4ミサイルは航空自衛隊が装備するミサイルの中では最も高性能のミサイルの一つである。
ミサイルの部品に民間部品を使用する事によって低価格化に成功した上に(この時点では量産効果がさほど得られていないので1発1億円前後の値段)
AIM−7以上の射程を持ち、何よりもAMRAAMと同じように撃ちっぱなしに出きると言うのがパイロット達にとってとてもありがたかったのだ。
いままで自衛隊が運用してきたAIM−7はセミアクティブミサイルである為、対空魔術である『レットタイガー』と真正面から同時に撃ちあった場合
アクティブミサイル的な対熱誘導方式を持つ『レッドタイガー』は発動した直後から術者が全力で退避行動に移れるのに対し
こちら側はミサイルが命中するまでイルミネーターで敵機を照射し続けなければならないため退避行動は取れない。
全力で回避運動を行なう敵とミサイルの後を追いかけるように飛行する戦闘機のどちらに先に互いの攻撃が命中するかは言う必要が無いだろう。
それでも今まで航空自衛隊が上空で圧倒的な戦力を誇っていたかと言うと敵が気付くはるか彼方から敵を発見し
敵の射程のはるか彼方から攻撃する事が出来たからであった。
しかしながら逆にやられた例も存在する。オーラン軍が誇る精鋭部隊の隊長たちは風の精霊たちの支援の元はるか彼方から近づく自衛隊機の進行方向目掛けて
数え切れないほどの防空魔術を放ったのだった。
運良く魔術を認識できる『グリーンエンジェル』つまりクレアのような管制官が搭乗するAWACSに支援されていれば回避も出来たが
運悪くそういった管制官に支援されていない部隊は運が悪ければそのまま自分が狙われた事に気付くことなくあの世行きになった部隊も少なくなかった。
オーラン軍精鋭部隊『黄色中隊』にいたっては上に書いたような方法や正面からの攻撃を用いて
既に合計15機の戦闘機と輸送用に使われていたB−747が5機、ついでに輸送、戦闘ヘリふくめて11機、その他の航空戦力に関しては数え切れないぐらい撃墜していた。
その黄色中隊がこの空域にいるとの情報を受けたため比較的貴重な・・どのミサイルも貴重だが・・さらに貴重なAAM−4を使用する許可が下りたのだった。
幸いな事に黄色中隊に代表される精鋭部隊は存在しないらしくミサイルが彼らの目前に迫ったと言うのに2隻の護衛艦を攻撃するのに夢中でミサイルの接近に気付いていなかった。
そして爆発、すぐにAWACSから報告が入った
『敵航空部隊10騎がレーダーから消失。敵攻撃部隊の編隊が崩れていきます。』
前スレがヤヴァくて静観していたら復旧スレッドが
遅くなったけどまとめて前回からの続きをば・・・
みなさんの作品がますますレベルアップしていて見劣りしますが、
広げた風呂敷は自らたたむ気合いで逝ってみますw
とりあえず、今までのあらすじです。
詳しくは「保存庫」で
沖縄を含む九州が魔法世界に召還された。ノビル王国への侵略をもくろむコルバーナ王国が
戦略拠点を作るために召還したためだった。
九州のフリージャーナリストの原田はいち早く現地のコクーン卿と接触する。
自衛隊は石油などの物資確保のためにノビル王国と同盟を締結。コルバーナ軍の首都攻撃を撃退。
その後も西部方面隊主力部隊を続々とノビル王国に送り込む。
主人公原田は現地で出会ったエスタを助手に常に最前線で取材を続ける。
コルバーナは精神的支柱、グロスドラゴンランサーを撃墜され降伏する。
半年後、コルバーナの油田を確保し、平和を取り戻したかに見えたが「黒の教団」を名乗る組織が各地でテロを開始。
首謀者の1人とされたノビル王国枢機卿ボルダー卿はSATの突入の甲斐なく逃走。
彼はただちに、九州とノビル王国に対し宣戦と黒の教団による報復を通告。
一方原田はコルバーナ油田に旧知の対馬警備隊隊長村本尋ねる。彼と共に黒の教団捜索に同行するが、
教団とコルバーナ残党、そして謎のゴブリンの群に奇襲されて油田を撤退。
隊長の村本も壮絶な殉職を遂げる。
ではその続きです。(覚えてくれてる人がいればいいんだがw)
この戦いで自衛隊は60名近い死者を出し、コルバーナ油田を失陥した。幸い、産出量の多いことから九
州本土の石油備蓄は大幅に増加して約3年分にまで増えていたが、油田失陥と隊員の大損害は官民問
わずにショックを与えることになった。
自衛隊は前線を約50km後退させざるを得なかった。コルバーナ油田から最寄りの基地はヘリの緊急着
陸用に建設された仮設飛行場だけだった。この飛行場を失陥すれば、ノビル王国の制空権の確保はノビ
ルバーナの航空自衛隊しか遂行できない。急遽、19普連と玖珠戦車大隊が増派され、飛行場は鉄条網
と塹壕で囲まれることになった。
ぼくはヘリでそのままノビルバーナへ戻った。隊員たちはみな失意のどん底だった、60名近い仲間と信
頼すべき隊長であった村本を失い、生命線とも言える油田も放棄せざるを得なかった。すでにヘリポート
には情報を聞いた衛生科の救急車やら負傷者を収容する仮設テントやらが用意され撤退した隊員や衛
生科でごった返していた。さすがに、取材する気力もなくぼくは事務所に戻った。
事務所で留守番をしていたエスタは、もう情報を知っていたのだろう。何も言わずにソファーに座り込んだ
ぼくに冷えた缶ビールを渡してくれた。
「ありがとう」
それだけ言ってぼくは一気にビールを流し込んだ。今まで味わったことのないまずいビールの味だった。
何も言わずにぼくを見つめるエスタと視線が合った。彼女は青い目をしていると思っていたのだが、よく見
たら緑がかった色をしているんだな・・・・。まったく関係ないことが頭に浮かんだ後、不意に涙が抑えられな
くなった。
「大勢死んだよ・・・。村本隊長も、ここに来た時に知り合った隊員も大勢。なんで・・・」
何も言わずにエスタはぼくを抱きしめてくれた。
「マスター、あなたのせいじゃありません。」
「違うんだ。この戦争も、前の戦争も、全部ぼくたちのエゴで始まった戦争だ。石油が欲しい、鉄が欲しい。
こんなことになったのに、みんな今まで通りの生活がしたいからってだけで始めた戦争なんだ!ぼくたち
のエゴが隊員たちを殺したも同然なんだよ。」
エスタはぼくが早口で何もかも言うのを待ってからやさしく言った。
「それはマスターの国の事情です。この国の人はみんな感謝してます。コルバーナを倒し、この国に平和
をもたらしました。それだけじゃなくて、電気や今まで見たこともない力を与えてくれました。マスターの国も
ノビルも仲良くやっていってるじゃないですか。それでいいじゃないですか」
彼女はそう言うとぼくの頭を自分の膝に乗せてやさしく頭をなでた。
「マスター、今日はゆっくり寝るんです。眠りの世界は全てから解放されて安らかです。」
確かに、肉体的にも精神的にもぼくは疲れ切っていた。
「すまない・・・・」
それだけ言うとぼくは急速に眠りの世界に堕ちていった。
「いいんです、私はあなたがいるだけで・・・・」
眠りにつく瞬間、エスタが何か言ったのが聞こえたがそれを聞き返す気力もなかった。
ドンドンドン!
翌朝、激しいノックの音で目を覚まし、ソファーから起きあがった。いや、ソファーと言うより一晩中ぼくに膝
枕してくれたエスタの膝といった方がいいだろう。
「はい・・・?」
ドアを開けた瞬間、ぼくの眠気は一気に吹き飛んだ。
「原田さん・・・ですね?」
ぼくの目の前に立っているのは身長190センチはあろうかという巨漢、というだけではない。黒のスーツ
にサングラス。短髪の強面。つまり見るからに極道の男が立っているのだ。
「原田さん・・・ですね?」
もう一度、静かだが含みを聞かせた声で男が問いかける。「は、はい」。間の抜けた声でそう答えるのがや
っとだった。
「姐さん・・・」
男が一歩下がる。ドアの影から上等な和服、おそらく京都の老舗のモノだろうを着た女性が現れた。
「あ、あああの・・・?」
女性と例の巨漢、同じ様な黒のスーツを着込んだ極道たちがずかずかと事務所に入り込む。この騒ぎで
ようやくエスタも目を覚ました。合計5名の黒服に着物の女性はぼくの前に立ちはだかると、無言でぼくを
眺めている。
、いきなり
「このたびはまことにお世話になりました」
女性の言葉を合図に一斉に極道たちが頭を下げた。ぼくは状況がさっぱりつかめずに目を白黒させるば
かりだ。
「私、村本の妻、聡子と申します。このたびは主人の最期を見届けていただいたそうで遅ればせながらご
挨拶に参上した次第でございます。」
村本隊長・・・・あなたは一体・・? その心の中の疑問に答えるように聡子が言葉を続ける。
「私の実家は島田と申しまして、世間様には顔向けできない生業でございますが、主人はそんな私を妻に
して、対馬に渡りました。私もあの事件(この世界への召還らしい)以来、夫に言われて博多の実家に戻っ
ており、ご挨拶が遅れましたことをお詫びいたします」
博多の島田といえば、泣く子も黙る島田組だとすぐにわかった。ということは村本隊長の奥さんは島田組
長の娘ということか・・・・。
「そ、それは、大変なときにわざわざおこしいただいて・・・・恐縮です」
ぼくはとりあえず、聡子を応接イスに案内して、状況をつかめぬエスタにお茶を用意させた。応接イスに座
った和服の30後半の女性。その後ろに直立不動で立ちすくむ喪服の極道は、どうしてもぼくに威圧感を
与えないはずがなかった。
「今日は原田さんにお願いがあって参りました。」
茶を飲んで一息ついた聡子はぼくに言った。
「主人は次期島田組組長のイスを蹴って対馬警備隊に赴任しました。父も堅気を守る商売にかわりはな
いと快く見送ってくれました。そこで・・・」
ここで聡子は目つきを哀れな未亡人から一気に、極道の妻の目に変えた。
「主人が常々言っておりました対馬警備隊のみなさんにご挨拶したいのですが、ご同行願えますか?」
「いや、警備隊は再編成されて前線の空港にいますが、その、民間人を許可なく連れまわすことは・・・・・」
ぼくの返答を待たずに聡子は後ろの組員を振り返った。組員は持っていたアタッシュケースから書類を取
り出し聡子に渡した。
「西部方面隊総監部の許可証です。よろしゅうございますね?」
事務所の外に出たぼくとエスタはあっけに取られた。黒塗りのBMWが6台。20名以上の喪服の組員が
整列して待機していた。ノビルバーナの市民たちはあまりの光景に遠巻きに見守るばかりだ。
「主人の話を聞いて破門覚悟で私に同行してくれた親衛隊です。」
そう言うと聡子は喪服の親衛隊に鋭い声で命令した。
「お前たち!支度しな!」
6台のBMWのトランクからジェラルミンの盾と手に手にイングラムが運び出され、聡子にはこれまたクラシ
ックな、ドラムマガジン装着のトミーガンが渡された。さすが、博多の島田組だ・・・・。
「原田さん、お嬢さん、こちらの車にどうぞ。」
強面の組員に案内され、ぼくとエスタは最後尾のBMWの後部座席に乗ることになった。
「シートベルトはしなくてもいいですよ、ここには警察はいませんからね」
若頭だったという木元が笑いながらぼくに言った。
「すごい車ですね、自衛隊の車より全然乗り心地がいいです」
何も知らないエスタは高級車のクッションや外観を珍しがっておおはしゃぎしている。人間、何も知らない
方が変な気を使わずにいいんだろうか・・・
「ははは!このBMは姐さんや組長を守るための特別仕様だからね。ライフルくらいならどうってことない
んだよ!」
エスタの極道にも物怖じしない態度を気に入ったんだろうか。木元は豪快に笑いながら言った。
「出発するよ!」
聡子の声が無線のスピーカから響いた。静かに、高級車らしい軽やかなかすかな震動がBMWの車列が
出発を開始したことを告げていた。
BMWの車列は通りの市民の視線を集中されながらノビルバーナ市街から郊外に出て、2時間ほどで川
沿いの田園道路に出た。川沿いにこのまま3時間ほどで空港に到着する予定だ。
「ちょっと一息いれようか」
聡子の号令以下、車列は道の脇に停車した。律儀にハザードランプをつけて止まるBMWもあった。ぼく
は木元の気さくさでだいぶ緊張がとれていた。エスタは元々極道に対する先入観がないせいか、まったく
緊張していない。いい気なもんだ。
「ちょっと失礼」
トイレをしようとぼくはBMのドアに手をかけた。木元は煙草をくわえて外を眺めている。ぼくがドアを開け
て外に足を踏み出した瞬間、木元のすごみのある声が耳に飛び込んできた。
「待てい!外に出るな!」
思わず、車に駆け込んでドアを閉めた。彼の叫び声は他の組員に向けられたモノであったが、さすが若頭組員は彼の命令通りすばやく車内に戻っていた。
「いったい、何が・・・」
ぼくの問いに答えることなく木元は無線のマイクに向かって叫んだ。
「姐さん!変な野郎が飛んできます。」
窓から見ると、100m程先に例の空飛ぶ騎士が1騎、こっちを伺っているのが見えた。どうやら、初めて見
るBMWを警戒しているようだ。空飛ぶ馬、我々の伝説に習ってペガススと呼ぶようになったが。そのペガ
ススにまたがり、全身鎧に身を固めた騎士は明らかに警戒しつつ、敵意を見せていた。
「若頭、撃ち落としてやりましょうか?」
運転席の若い組員がイングラムを構えて窓を開けようとする。助手席の木元も何も言わない。
「やってやりましょう」
「やめろ!」
組員が窓を開けようとするのをぼくは思わず止めた。戦闘モードに入った血走った目がぼくに向けられる
思わず、声を出したことを後悔する。
「原田さん、どうされました?」
いきり立つ組員を目で制しながら木元がぼくに尋ねてきた。
「原田さん、どうされました?」
いきり立つ組員を目で制しながら木元がぼくに尋ねてきた。
「あいつはおそらく飛び道具で攻撃してくるでしょう。今、窓を開けるのは危険です。それに相手がダークエ
ルフの場合魔法攻撃をかけてから突進してくるでしょうから。」
「なるほど、実体験に基づいてってわけですな」
そう言うと木元は無線のマイクを取り出した。
「全車、しばらく様子を見ろ。くれぐれも先に手を出すな。何してくるかわからんぞ」
木元が言い終わらないうちに目の前が光に包まれた。
「うわっ」
「きゃあ!」
「なんだ!」
BMWが巨体を揺らす。例の騎士はダークエルフのようだ。射程数キロの悪魔の雷を食らったようだ。ぼ
くは思わず身をかがめる。BMWが爆発すれば一巻の終わりだ。
だが、BMWはその巨体を揺らしただけでそれ以上なんのダメージも受けていないようだった。いくら防弾
加工を施したと言っても人間を炭にしてしまう程の威力の魔法を受けてこれですむなんていったい・・・・。
「よし、緒方。かましてやれ」
木元のお墨付きをいただいた緒方と呼ばれた運転手の組員は、待ってましたとばかりにパワーウインドウ
を開けた。騎士は魔法が効果がないことを悟ると槍を構えて突進を始めた。
他のBMの組員もパワーウインドウを開けてイングラムの銃口を騎士に向けている。マイクを持った木元
が聡子に確認を取る。
「姐さん」
BMWに搭載された全ての無線のスピーカから聡子の冷酷な命令が響いた。
「やってやんな!」
至近距離から十数挺のイングラムから発射される9ミリ弾を受けてペガススは瞬時に肉片となって、ぼとっ
という感じで地面に落下した。ダークエルフは被弾を免れたが手綱がからまって地面でもがいている。緒
方がサイドブレーキの横に隠していた日本刀を持ってBMWから飛び出した。ダークエルフの側まで走
ると、蹴り上げて兜を吹っ飛ばし、日本刀を大きく振り上げた。首をぶった斬る気だ。
「見るな!」
これから起こるであろう惨劇を見せるべきでないと判断したぼくはエスタにあさっての方向を向かせた。
「待てい!緒方!殺すな!」
中世風の田園に響きわたる木元の声で、緒方は日本刀を振り下ろす直前でかろうじて手を止めた。聡子が
トミーガンを持ってBMWから降りてくる。緒方は先走ってしまったことを今更ながら自覚し、聡子を呆然と
見つめている。
「緒方・・・・」
いかなる叱責も甘んじて受けようとしていた緒方に彼女から意外な言葉がかけられた。
「よくやったね」
「は、はい!」
直立不動のまま、思いっきり緒方は頭を下げた。そして、組員たちに取り押さえられたダークエルフに向き直った。
「おのれ、異世界人め。いい気になるなよ」
「やかましいわぁ!おんどれは!」
思いっきり方言丸だしの啖呵に意味がわからないはずのダークエルフも思わず黙り込むほどの迫力だった。
「おのれはよそ様の車に傷ばつけて何を偉そうなこと言いよるとかい!」
聡子はそう言ってぼくたちの乗っていたBMWを指さした。確かに、悪魔の雷が直撃した部分の塗装が剥
げてボディがこぶし大凹んでいる。それとこれとは関係ないんだが、あまりの迫力にダークエルフも黙り込む。
「おのれは、どこの者じゃ?」
「我は魔の帝国の主、大魔道士ジャルバ様の配下・・・・、後悔せぬうちにこの地を去れ!」
鼻血を流しながら精一杯の虚勢だろうか、大魔道士の名前を出したダークエルフだったが、眉毛一つ動か
さない聡子にかなり動揺しているようだった。
「おんどれは、博多島田組を脅迫するんやのぉ・・・」
聡子はぐいっとダークエルフの胸ぐらを掴んで顔をくっつけんばかりに近づけた。
「博多の極道なめたらいかんけのぉ・・・・・・木元!」
木元を呼びつけ何か命じた。木元と緒方がダークエルフを引っ張って連れていった。
「奥さん・・・・」
ぼくはちょっとタイミングが悪いかなと思いつつ、気になっていたことを聞いてみた。
「さっきの魔法を跳ね返す装甲なんていったいどこで・・・・」
「ああ、あれですか・・・・ハインツ!」
ハインツと呼ばれた男がぼくの前に姿を現した。ぼくより早く、エスタが「あっ」と声を上げた。
「ハインツと申します。お見知りおきを・・・」
彼が直立してぼくに頭を下げたときにぼくも気がついた。彼の耳は大きくとがっていたのだ。エルフだった。
「ハインツはコルバーナ軍の魔法使いでしたが、嫌気がさして九州に流れてきたところを私どもが面倒を
見てあげていたのです。」
「はっ、姐さんはじめ皆様のお気持ちにお答えすべく、今回微力ながらお役に立てればと・・・」
極道になったエルフ・・・。しかし物言いといい、身のこなしといい。まさに極道のそれそのものだった。エル
フは本来は適応能力が高いのかも知れない。
「姐さんがこちらに渡るということで、私の魔法が役に立てばと思い、車両に魔法防御をかけさせていただ
きました。恥ずかしながら、私コルバーナ軍で1級魔法使いをやっておりましたので・・・」
なるほど、コルバーナ軍の上級の魔法使いだったらこの強力な魔法防御も納得できるというものだ。博多
島田組、まさに未知の魔法世界でも敵なしになるかもしれない・・・・。
「さあ、出発しましょう。木元と緒方は後で追いつきます。ハインツ、お二人を車にご案内しな」
聡子はきびすを返すと彼女専用のBMWに颯爽と乗り込んだ。ハインツはもう一度ぼくたちに頭を下げた。
「姐さん方のご指導を受けまして、何とか半人前というところです。いろいろとご指導お願いします」
ハインツに彼の車へ案内されながらエスタがぼくに耳打ちした。
「マスター、あの女の人、かっこいいですね」
ぼくはもはや、緊張でパンツまで汗をかいていて彼女に説明する気力もなかった。
「今度吉川に、「極道の妻たち」ってビデオを君に送ってもらうように頼んでおくよ」
数日後、ノビルバーナを流れる川の川岸に、簀巻きにされたダークエルフの水死体が上がった。
空港に到着したBMWの車列は当然、現地の自衛隊員の注目の的だった。自衛隊の前線は空港から3k
m先、ちょうど、山岳と川で平地が狭くなっている部分に橋頭堡が置かれ、空港周辺は特科と第2防衛ライ
ンとなって、大陸中部における自衛隊の軍事的イニシアチブを維持する最期の拠点として最大級のレヴ
ェルで防御されていた。
「対馬警備隊はどこですか?」
隊員たちの余計な詮索を避けるためにぼくが代表して19普連の連隊本部に問い合わせにうかがった。
「あんた、あのBMWの人たち?困るんだよねぇ」
新任の本部員であろう、ぼくの顔を知らない幹部がいかにも迷惑そうに言った。そりゃそうだろう。
「許可証はあるの?ここは民間人が入れるところじゃないんだよ」
「はぁ」
「まったく、鉱山ができて商社が入りだしてからこれなんだから・・・・、だいたいねぇ・・・・・」
横柄な幹部の言葉が途中で止まった。ぼくの後ろには追いついてきた木元が立っていたのだ。
「西部方面隊総監部の許可証です。対馬警備隊はどこにおられますか?」
木元は静かにだが、これ以上うだうだ言わせないという気迫のこもった声で幹部に問いかけた。
「あ、あ、あの。前線の左翼あたりで再編成展開中であります」
幹部にはこれだけ言うのが精一杯だった。木元は無表情のまま一礼すると連隊本部を後にした。
対馬警備隊の戦区に到着した我々は、当然ながら奇異の視線の洗礼を浴びることとなった。
「おい、あれ。原田さんじゃないのか・・・」
「エスタちゃんもいるぞ。どーなってんだ・・・・」
古参の隊員たちの怪訝そうな視線と言葉を気づかないふり、聞こえないふりをしてぼくたちは指揮所に
向かった。
たしか、村本隊長の後任が先日派遣されたらしい。前田という人物らしいのだが・・・。
「こんにちわぁ!」
近所に回覧板でも持ってきたかのような緊張感のない声でエスタが指揮所になっているノビル風の農家
に入り込む。こんなときほど、彼女の存在がありがたいことはない、と心から思った。
「わぁぁ!エスタちゃんじゃないかぁ!」
古参の幹部が喜びの声を挙げる。それを確認してぼくも指揮所の農家に入り込む。とたんに、幹部の顔
色が変わる。
「あ・・・・、原田さん・・・・・?」
そりゃそうだ。ぼくの後ろには十数名の完全武装の極道がいるのだ。
「前田さんはいるかな?」
可能な限り申し訳なさそうに、苦笑いを出しながらぼくは幹部に質問した。彼もそのぼくの表情を察した
のか、面倒に関わりたくないと思ったのか、すぐに前田隊長を連れてきた。前田は50前後のひょろっとし
た感じの男だった。だが、その外見とは裏腹に意外と肝が太いようだった。聡子たちの一団を見ても顔色
一つ変えずに、
「ああ、村本隊長の奥様ですね。話は聞いてます。ささ、どうぞ」
という感じで聡子を応接間にしている離れに通した。
聡子と前田の間でなにかしらの協定が結ばれたようだ。聡子と島田組親衛隊は対馬警備隊戦区におい
て行動の自由を得たようだった。
「総員、傾注!」
塹壕陣地に残すべき最低限の歩哨を除いて対馬警備隊が指揮所前に集合した。急ごしらえの演題には
前田がのっかって部隊員におきまりの訓辞をしている。その後ろには聡子以下、20名の島田組親衛隊
が直立不動で控えている。
「では、前隊長の細君であられる、島田聡子様にご挨拶をいただきます」
指揮所の幹部が聡子を演台にお勧めする。聡子は隊員たちに深々と一礼すると静かに語り始めた。
「皆様、わが夫村本を慕っていただき・・・・」
ここで彼女の言葉が途絶えた。耳を切り裂きそうな爆発音と爆風が周辺で立ち上がった。
「悪魔の雷だ!」
歩哨の叫び声がかろうじて隊員たちに届く。どうやら、対馬警備隊戦区に集中的に攻撃が浴びせられてい
るようだ。敵の反撃が近いのであろう。
「総員退避だ!」
実戦経験がないであろう前田が軽装備で集合してパニックの兆候を見せている警備隊隊員に号令しよう
とした。その時だった・・・
「あんたたち!」
爆音と怒号を切り裂くような甲高い声が戦場に響いた。
声の主は聡子だった。戦場で予想もしない高音の声に思わずパニックになりかけた隊員も耳を傾けた。
「あんたたち!それでも主人の部下かい!?うちの主人はねぇ!あんたたちをねぇ!休暇のたびにあた
しに向かって誉めまくっていたんだよ!こんな優秀で勇敢な部下はいないってね!」
聡子の発言が続いている間も、悪魔の雷は降り注いでいたが、隊員は彼女の声に回避運動も忘れてそ
の場に立ちつくした。
「主人があんたたちを守って死んだって聞いて博多から来てみればなんね!この情けなさは!あんた
たち!それでも自衛隊ね!?」
聡子の言葉はなおも続く。
「たかが、わけのわからん魔法使いの魔法くらいでびびってから、そんなこつで自衛隊なんち名乗りなさ
んな!」
聡子の言葉が途切れて数秒。逃げ出しかけた隊員に沈黙が訪れる。そして次の瞬間。聡子は和服の袖を
まくり上げた。
「おお!」
隊員たちからおどろきの声があがった。むき出しになった聡子の左肩には、それは見事な「登り龍」が描
かれていたのだ。
「あんたたち!九州男児の根性見せないやぁ!!」
「うおおおおお!!!」
戦国時代の兵士たちのような鬨の声が対馬警備隊の面々から響きわたった。
こんなところでご勘弁を
まさか皆様がさらに突っ込んだ議論をしてるとは・・・
その息抜き感覚でぼくの作品を楽しんで下されば幸いですw
>158氏といい893色が微妙に濃いスレかも(;・∀・)
もしかして九州って血気盛んな893さんの多い場所というイメージがあるのかなぁ…?
いや、実際多いんだけどね( ;´∀`)
まあ、エスタたんがいれば気にならないですけど(゚д゚)
個人的に、「サヨナラバス」の更新が楽しみで仕方ない今日この頃…
114 :
CK:03/05/14 06:57 ID:???
>オーパーツの 数々がかなり楽しい
オーパーツは好きなんですが、ア−カムの連中の思想はあまり好きになれないわけでして。
ちなみに、私の好きなオーパーツはYAMAです。
115 :
CK:03/05/14 07:16 ID:???
116 :
名無し三等兵:03/05/15 17:57 ID:Fphw+Ko0
あけ