自衛隊がファンタジー世界に召還されますた 第二章

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700青木原精神病院
>>218-227
>>578-583の続き。

「おかしいと思うわけだ、近藤が山登りたいなんていうわけねえじゃねえか!!
あの野郎、さては桐野一曹とつるみやがったな!!」
近藤士長への怨嗟の言葉を吐いた後、大和三曹はあの台詞を思い出した。
『お前も(オマエモ)飯食いに(メシクイニ)来い(コイコイコイコイ)・・・』
桐野降下長の声が不気味なエコーがかかって聞こえたのは恐怖のせいか。
すなわちこの飯を食った瞬間、大和三曹は神話のイザナミと同じように
「あちらの住人」にされてしまうというわけだ。
「いやだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
鬼の空挺レンジャーが泣きながら降下するという光景も珍しいだろう。
しかしそれよりも不可思議なものを大和三曹は目にすることになる。
「・・・なんだありゃあ・・・・?」
これから大和三曹が登ることになるであろう富士山、その遥か天空には天使のような
光輪が、つつつと描かれつつあった。先端部分は淡い光を放ちながらかなりの速度で
飛行し、瞬く間に輪は完成する。輪の直径は相当に大きい、裾野のなかばまで
達しているだろう。輪が完成した後も、なおも光は図形のようなものを描きながら
飛行を続ける。
「ユーフォー・・・?」
呆けた顔で大和三曹はつぶやいた。
(ユーフォーだと・・・?)
心中でもう一度唱えてみる。
「ありえん。」
701青木原精神病院:02/12/22 03:22 ID:???
ばっさりと否定してのける。大和三曹にはユーフォー、オカルトその他諸々の趣味はない。
どうせ空自か航空科がなんか展示飛行でも始めたのだろうとたかをくくった。
「っと、いけね。」
戦闘降下における着地までの時間は極めて短い。自分でもまあよくあそこまで頭が
まわったもんだと苦笑しながら、大和三曹は荒れた大地への着地に備え始めた。
瞬間、視界がブレる。
「!?」
同時に平衡感覚までもが失われる。そして霞む視界一面に突然現れる、うっそうと茂る
森に大和三曹は驚愕した。慌てて開けたところを捜してみるも、貧血をおこした時のように、
まるで目が見えない。
「ちくしょう!!」
もうこうなれば記憶だけが頼りだ。開けた場所はない。ならば木にあたる寸前に
落下傘を操作し、落下速度をゼロ近くにまで落とすしかない。失敗すれば串刺しだ。
生か、死か。
「やったろうじゃねえか!!」
すばやく計算し自分の高度を求める。
「今だ!!」
ぐっと落下傘を操作し、落下傘を地面と出来うる限り平行に飛行させる。
「!・・!・・!・・!!」
702青木原精神病院:02/12/22 03:22 ID:???
ばきばきと枝をへし折りながら、大和三曹は森に降下した。
「いてててて・・・」
体をまさぐってみるが、大事には至っていないようだ。感覚も徐々に戻ってくる。
ちゅうぶらりになりながら、大和三曹はほっと息をついた。
「にしても、なんなんだよ?」
見回してみても、下生えに邪魔され何も見えない。視界はせいぜい十数メートル程度
といったところか。高い針葉樹林を中心とした、暗い森だ。
「東富士演習場にはこんな森ないよなあ・・・」
とにかく愚痴っていても始まらない。怪我と弁当は降下につきものだ。痛む体をさすりながら、
落下傘を切り離して地面に降り立つ。
「みんなここに落ちたんかなあ?」
地図とにらめっこしてみてもこんな森はない。
「まあ集合地点の方向に行ってみるか。」
コンパスを取り出し、大和三曹は見知らぬ森の中を集結地点目指し,歩き始めた。

続く。