90式戦車2

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712名無し土方 ◆cDIj6u5gc.
>>698
装輪車輌を、装軌車両に準じた形で使えるかどうか、それではちょと考えてみようか。

まず、装輪車輌の売り物であるところの、装軌車両よりも高い路上機動力と、長距離走破能力、というものを考えてみようか。
車輌の足回りで故障しやすいと言われているのが、トランスミッションと起動輪への動力伝達機構だというのは、有名だね。
つまり、装輪車輌よりも装軌車両の方が起動輪にかかる負担がどうしても大きくなるし、動力の伝達経路も複雑だから故障しやすくなるわけだ。
第二次大戦のティーガーシリーズが戦場間機動を自力でやろうとすると、それこそ30分走っては停止して点検してまた30分走っては点検してを繰り返してなんとか機動していたとか、そういう話も伝わっているね。
ところが現代では、例えば湾岸戦争で60t級のM1戦車が、路外を戦闘機動しつつ240kmを走破してほとんど故障が出なかった、なんて話もある。

つまり現代の戦車の動力機構は、エンジンが発揮する大出力が伝達されまた急激な負荷の変動が加わる動力伝達機構の一つ一つのパーツが、設計能力の向上や、冶金技術や材料工学の進歩によって非常に高い耐久性を持つに至ったわけなんだな。
例えば、ファイナルドライブなんかを例にあげると、パンテルのそれは150kmも走行すれば確実に故障したといわれるけれども、90式のそれはキャタピラの破損の方が頻繁である、というくらいの耐久性を持つに至っているわけだ。
つまり現代の動力伝達機構は、それだけの耐久力の余力を持っているわけで、単純に装軌車両はすぐに壊れるとは言えないわけだね。
713名無し土方 ◆cDIj6u5gc. :02/11/14 19:48 ID:???
では何故に装軌車両は故障しやすいと言われるのか。
それは、装軌車両は多数のパーツで構成される履帯を使って地面を移動するからなんだろう。

極論するなら、装輪車輌は、起動輪がタイヤを介して直接地面に接触し、エンジンの出力を利用して移動することができるから故障の確率が少ないんだと言えるのだと思う。
だが装軌車両では、起動輪は、履帯の上を移動していくのであり、地面と接触しているのはあくまで履帯なんだね。
要するに、装輪車輌では、地面に接触しているタイヤが故障、つまりパンクしたりなんなりで破損すれば、これはすぐに交換できるわけだ。
ところが装軌車両では、一々履帯の切断部分のパーツを交換し、再接続を行わないといけないわけだ。

タイヤの交換と、履帯の修理では、どちらがより大変かは言うまでも無いわけだね。
しかも、極論を言うならタイヤがパンクしたって車輌は移動できなくなるわけじゃないが、履帯が切断したならば即移動不能になってしまうのだから、さらに面倒は大きいわけだ。
装輪車輌なら、タイヤがパンクしました、ではちょと路辺へよってタイヤを交換します、で済むところが、装軌車両はその場で停止して履帯交換をしないといけなくなる。
路辺へ寄せようと思ったら、僚車か回収車を呼んできて移動させてもらわないといけない。

この、故障の発生時の部隊機動の阻害の問題が、装軌車両よりも装輪車輌の方が戦場間機動性で優位にあると言われるに至った原因なのではないかと、俺は考えているよ。
714名無し土方 ◆cDIj6u5gc. :02/11/14 19:49 ID:???
さて、次には、移動途中の障害物への対処能力について考えてみようか。

装輪車輌が、地面上の障害物をどこまで越えていけるか、という話になるんだけれども、これは装軌車両には絶対にかなわないのは明らかだよね。
まず装輪車輌は、履いているタイヤの半径よりも大きな垂直段差障害物は、基本的には乗り越えられない。
つまり、タイヤの半径よりも大きな高さの垂直段差障害物にぶつかった場合、タイヤはそれを超越することができず、車軸に対して衝突したときの衝撃がそのまま伝達されることになるからだ。

モワグが小松に対してアクティブサスペンション等の最新技術と引き換えに渡した技術とは、このタイヤの半径よりも大きな障害物の乗り越えるための装置の情報なんだね。
実はこれは非常に簡単な技術で、車輪よりも前方に緩やかな傾斜をつけて車体を延長し、橇状にして障害物をタイヤの半径より下に誘導する、というものなんだ(爆
なんて事は無い、あのLAV3の車体前部のとがった形状は、前部車輪の車軸保護と、障害物超越のためにあったわけなんだね。

さらに、この橇を使った乗り越えだって、地面の状態がタイヤがきちんと噛めるならともかく、軟弱な地面なら、穴掘り状態になって前進することも出来なくなってしまうわけだ。
715名無し土方 ◆cDIj6u5gc. :02/11/14 19:50 ID:???
これが装軌車両だと、話は全然変わってくることになる。
装軌車両の障害物超越能力は、極論するなら、誘導輪の半径より下に障害物があたるなら、それに履帯が接触し引っかかって移動することが可能になるというものだからだ。
装軌車両は、装輪車輌が地面の上を車輪を転がしながら進んでいくのとは違って、履帯の上を移動していっているわけだね。
つまり装軌車両は、履帯という道路を次々と地面に敷いて行き、その上を移動することで、不整地であろうとなんであろうと移動できているということになるわけなんだ。

そうなると、穴ぼこの超越能力も、同じような理由から装輪車輌は装軌車両に比べて決して高いとはいえなくなるわけだ。
装軌車両は、極論を言うなら穴ぼこのへりに履帯が引っかかってくれるなら、そのまま乗り越えて進んでいくことができる。
だが、装輪車輌は、タイヤが地面を噛んでいてくれないと進むことは出来ないわけで、へたに穴ぼこに車輪が落ち込み、他の車輪が地面から離れてしまったら、そのまんまスタックしてしまうわけなんだね。

つまり、装軌車両の障害物超越能力というのは、履帯という移動補助装置を敷けることが出来るかどうか、であって、車輪で乗り越えるのとは違うものなわけなんだ。
716名無し土方 ◆cDIj6u5gc. :02/11/14 20:01 ID:???
さて、言うまでも無いわけだが、戦上から戦場へと機動する際に、路上に障害物が無いならば装輪車輌の方がより少ないコストで移動することが可能であるわけだ。
問題は、路面が常に整地状態で、障害物が無い場合なだけなんだね。
つまり、敵が幹線道路や高速道路への攻撃を一切せず、避難民などが自動車その他を路上に一切放置しなかった場合、という、戦時では極めて稀なケースでのみの話になるわけなんだ。
例えば、車道と歩道を分けるコンクリートブロックを、車なりバイクなり自転車なりで連続して乗り越えてご覧。
たった10cmかそこらの障害物ですら、こいつがどうしようもないほど装輪車輌に対して威力を発揮することが自分の尻で実感できるから(笑)

そして、それでも装輪車輌が到達できるのは、戦場の手前であって、戦場ではないことに留意して欲しい。
戦場では、とにかくあらゆる兵器から弾が発射されている。
兵士の死傷の一番の原因は、あくまで流れ弾であり、榴弾破片によるものであって、それからの防護が軽装甲車輌の装甲の理由なんだね。
敵部隊の集積地への擾乱射撃なんてのは、砲兵による全般支援の中では一番当たり前の任務だね。
そうなると戦場の直前の地域は、榴弾破片はそこらじゅうに飛び交い、地面は穴ぼこだらけで、各種の障害物が散乱しまくっている状況になっているわけだ。
タイヤという、榴弾破片や小銃弾ですぐにパンクしてしまうような代物で移動する装甲車輌が、そうした戦場に進入することは、果たしてだろうだろうか?
717名無し土方 ◆cDIj6u5gc. :02/11/14 20:01 ID:???
となると、装輪車輌が進入できるのは、あくまで弾の飛んでくる確率の低い、もしくは無い場所までであり、それも整地状態の路面だけという話になる。
つまり、装輪車輌に装甲を搭載する理由そのものが、非常に少なくなってしまうわけなんだね。
敵の弾が飛んできたら、下手すると移動できなくなってしまうわけで、そうなると弾が飛んでくるところへは進入することが出来ないということになる。
もし進入させたならば、かなりの確率で機動が出来なくなり、回収できるならともかく、出来なければそのまま遺棄ということになるわけだ。

そして、この車輌遺棄の可能性は、後退を行う場面では非常に高くなるという事が、第二次大戦の東部戦線の事例からも明白なわけなんだな。
戦場では、弾が飛んでくるところでも自力で機動できない車輌は、戦場加入しても移動不能になって遺棄される羽目になりやすい。
装軌車両が戦場機動性に優れるというのは、金属製履帯の耐弾性能が、かなり高いということも理由には入っているわけなんだね。

戦場へ進入できない装甲車輌は、はっきり言って装甲車輌としての機能を発揮できているのか、という話になるね。
ならばトラックで人員物資を輸送し、荷台に装備を搭載すればいいじゃないか、という結論に落ち着くことになるわけなんだな。

後方連絡線として設定され、施設科によって常時路面状態が整備されている道路を使用するという前提だとすると、それはあくまで装甲トラック以上の意味は無いわけだね。
というか、ドイツ軍のフクスなんかは、そうした使用法を前提とした車輌なわけだ。
だが、それはあくまで補助用兵器であるが故の見切りによるものであって、そうした見切りをどこでつけるか、それが重用だと俺は考えるよ。