WW2傑作戦闘機を論じる 7

このエントリーをはてなブックマークに追加
「敵味方ともに、本格的な航空撃滅戦を実施する条件、環境になかったのではないか。
 すなわち土地の広大なこと、飛行場の数は多いが、保有戦力が少ないこと、たが
いに補給が困難なため現有勢力は虎の子の貴重なもので、のるかそるかの決戦がや
りにくかったこと、地上協力から輸送妨害、哨戒、要地に対する散発的爆撃、防空、
掩護、敵飛行場など任務の範囲がひろすぎ、航空撃滅戦をおこなう余裕がなかったこと、
たとえ実施したとしても効果が期待薄であったこと、などの理由によるものだろう。
 とにかく両者とも、兵力をあまり消耗せずに各種任務をうまく遂行しようとしたよ
うに受け取れた。
 しかし、少数機によるゲリラ的活動はかなり活発で、ちょうど蝿を相手にしている
ような具合で、たたこうと思えば逃げ、ほおっておけばうるさくチョッカイをかけて
くるという、やっかいで気のゆるせない相手だった。
 もうひとつの特徴は、相互に情報網が発達していたため、これを十分に活用して、
きわめて上手な戦闘をやっていたことだ。たとえば、某基地に多数の敵機が集中して
いるという情報でわが方が奇襲攻撃をかけようとすると、離陸とともにその情報が
敵に伝わり、敵機はすばやく対比してしまう。逆に敵側がまとまった兵力でわが方
に攻撃をかけるべく離陸すると、まもなくこの情報はわが方に伝わる。そこで、わが
方が本格的な邀撃をおこなうべく大挙出勤すると、敵編隊はいちはやくそのことを知
って攻撃を断念、途中から引き返すといった具合で、双方がまともにぶつかって大空
中戦を展開する機会がほとんどなかった。
 しかし、パイロットたちはたびかさなる出勤で日を追って技量をあげ、戦場周辺の
地形、気象から敵の戦法にいたるまですっかり呑みこみ、初陣の若武者たちも戦争に
なれて戦果はしだいにあがっていった。
 やはりキ84は優秀で、米空軍のP47、P51などとは互角以上に、B25クラスの爆撃機
に対しては格段の差をもって戦うことができた」