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たいていの場合、ヒトラーは実際家だった。窮屈な輸送スペースを使って、
ユダヤ人を抹殺するだけの目的で何百万と東に移送するのは、ヒトラーら
しからぬことだったろう。産業が労働力不足を叫んでいるのに、彼が喜んで
その労働力を破壊するはずもなかった。連合国のラジオが、ユダヤ人はみな
殺しされているとの発表を放送したときのヒトラーの腹立ちまぎれの言葉を
ハインリヒ・ハイムは想起している、「全くね、ユダヤ人は私がちょっとばか
り厳しい仕事しかさせないのを感謝すべきだ」と。ユダヤ人はヨーロッパから
「最終的に消え去る」必要があるとのヒトラーの命令を残忍な徹底さで解釈
しなのは、ハイドリヒと東の狂気じみた大管区指導者たちだった。ヒムラー
個人の役割はどっちつかずである。一九四一年一一月三〇日、彼はヒトラー
との秘密会談に“狼の巣”に招かれ、そこで明らかにベルリンのユダヤ人
の運命が話題になり、午後一時三〇分、ヒムラーはヒトラーの地下壕から
ハイドリヒに電話で、ユダヤ人を抹殺しないこととの明確な命令を伝えざる
を得なくなった。翌日ヒムラーは強制収容所組織全体の責任者SS将官オスヴァ
ルト・ポールに電話で命令した、「ユダヤ人はそのままにしておくこと」と。