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名無し三等兵:
泣けるかどうかはわからないが、良い話であると思うエピソードを1つ。
戦後、自衛隊の発足に伴い、自衛艦に掲げる自衛艦旗をどうするかが問題となった。
結論は簡単に出ず、そこで米内光政海軍大将の親戚で海上警備隊(海自の前身)の良き理解者でもあった画家、米内穂豊画伯に旭光をモチーフにした新たな旗の製作を依頼した。
米内画伯はこれを快諾したが、画伯が提出したのは帝国海軍の軍艦旗と全く同じ図柄だった。米内画伯は、
「旧海軍の軍艦旗は、黄金分割による形状、日章の大きさ、位置、光線の配合等実に素晴らしいもので、これ以上の図案は考えようがありません。
それで、旧軍艦旗そのままの寸法で1枚描き上げました。これがお気に召さなければご辞退いたします。
ご迷惑をおかけして済みませんが、画家の良心が許しませんので……」
と申し出たという。
その後、この旧軍艦旗と同じ図案に関して議論が重ねられたが、吉田茂首相に最終的な判断を仰ぐことになった。説明を聞き終えた吉田首相は次のように述べた。
「世界中で、この旗を知らない国はない。どこの海に在っても日本の艦であることが一目瞭然で誠に結構だ。旧海軍の良い伝統を受け継いで、海国日本の護りをしっかりやってもらいたい」
かくして、昇る太陽をかたどった旭日の軍艦旗は、今日も護衛艦の旗竿に堂々と翻っているのである……。
出展は「行進曲『軍艦』百年の航跡」(谷村政次郎著 大村書店刊)から。