主翼単体での特性を求めるとき、風洞模型の取り付け角度を
変化させて測定します。
しかし実際の機体では、水平尾翼がダウンフォースを発生し、
これをテイルアームに乗じたモーメントによってテイル下げ
(機首あげ)を行います。
テイルアームが小さい(しっぽが短い)ほど大きなダウンフォースを
発生しないと機首上げモーメントが得られないことは梃子の原理
そのものです。
つまり、テイルアームが小さい機体は大きな水平尾翼で
大きなダウンフォースを発生しないとなりません。
主翼の揚力からダウンフォースを差し引いたものが全機揚力です
(胴体の影響は無視します)から、結論としては
「テイルアームが小さいほど、同じ主翼であっても揚力をロスする」
ことになります。
無尾翼機とはテイルアームを極端に短くして、
水平尾翼を主翼後縁に一体化させたものと言えますので、
つまり「極めて大きな水平尾翼を持っている」のと同じです。
そんなわけで、無尾翼機では通常の機体に比して揚力係数が小さくなります。
同一搭載力の機体を同一技術水準で製作すれば、無尾翼機は
通常形式の機体に比して
・大きな翼面積を持つ(XB-35、XB-49、B-2)か、
・極端に長い離着陸滑走距離を受け入れる(SR-71)ことになります。
そのどちらもイヤならば、
・搭載力(ペイロードなり、燃料なり)を犠牲にする
(ミラージュ)しかありません。
ただし、もしここで
「機首上げ時に、揚力中心を前に動かす」ことが出来るならば、
最小限のダウンフォースで機首上げが可能になります。
X-32のボルテックスフラップはこれに挑んだ事例でしょう。
より素直にカナードを付けてやれば、
「カナードのリフトで機首あげ」になり、全機揚力係数でむしろ
有利になります。