死刑確定囚の中から次の執行者を予想希望するスレ3

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115名無しさん@お腹いっぱい。
【二月二十一日 ある死刑囚の記録】
殺人者からの手紙
半世紀前に建てられた赤屋根の礼拝堂は周囲の家々に溶け込んで、あまり目立たない。
二〇〇二年五月四日、名古屋市東区の「日本福音ルーテル復活教会」。
礼拝堂わきの小さな執務室で、牧師の戸田裕は郵便受けから取り出したばかりの手紙の封を切った。
宛先には教会の名前しか記されていない。「武藤恵喜」。差出人の名にも覚えはない。
B5の便箋二枚、黒のフェルトペンで書かれた中身を読み進めると、すぐに目が留まった。
「私は殺人という大罪を犯し中警察署で取り調べを受けています…」
このとき、戸田は六十八歳。牧師になって四十年近く。二年後には所属教団の定年を迎える。
十年近い米国での伝道も含め、これまで、信徒からの数え切れない相談に応えてきたが、
殺人者からの手紙は初めてだった。

◆開口一番「神頼みですよ」
牧師の戸田裕が封を切った手紙。後に差出人の武藤恵喜(ぶとうけいき)自身が戸田に明かしたところでは、
出したのは「聖書の一冊でも、もらおうかという安易な気持ち」で、戸田の教会を選んだのも
「たまたま」だった。
確かにこのころ恵喜は名古屋・中署の留置場で同房だったクリスチャン沢田竜一(仮名)の聖書
に興味を覚え、読みふけっていた。自分の一冊が欲しかったのかもしれないが、それにしては随分
と心中を吐露している。
「逮捕時は何も考えず、たんたんとした日を過ごしていたのですが、気持ちも落ち着き、自分の
したことやこの先を考え始めました(中略)私のような人の道をはずした人間にも、生きていく
希望を見い出す事ができるのでしょうか。残された人生の過ごし方、私の犯した罪に対しての
考え方などご指導いただければ幸いです」
一カ月半前、名古屋・栄で二人目の犠牲者となるスナックママを殺(あや)め、逮捕された恵喜
のことを戸田は知らなかった。「殺人」や「死刑」。戸田が尊さを説き続けてきた「命」と表裏
の重い言葉が身を駆り立てた。
手紙を読んで一週間足らず。戸田は返信よりも先に中署五階の留置場の面会室へと足を運ぶ。
アクリル板の向こうの男はボサボサの髪を肩近くまで垂らしていた。
「困ったときの神頼みですよ」。開口一番、恵喜はぞんざいに言い放った。
困ったとき、つまり、都合の良いときだけ助けてほしい、とも取れる。教えを請う相手への
一声としては失礼すぎるが、戸田は逆に恵喜と向き合う糸口をつかんだ気がした。
窮地に陥り「神も仏もあるもんか」と捨て鉢になる−。そんな人間は大勢見てきたが、
目の前の男は違う。どうやら「神頼み」の気力ぐらいはあるらしい。

「良かったですね、あなたには困ったときに頼れる神様がいて」。老牧師と殺人者、二人
の問答がこうして始まった。=続く
http://www.chunichi.co.jp/article/feature/feb21/list/CK2014011102000200.html