日本人は「うそつき」が好きだ。それが証拠に?戦後、流行歌の題名に「うそ」がついた歌は128曲。「うそつき」に限定すると36曲。
調べればもっと多いかもしれない。
戦後初の“うそつき演歌”は1950年12月に「ベティ稲田」という人物が歌った「貴方(あなた)は嘘(うそ)つき」。
続いて笠置シヅ子の「男はうそつき」、二葉百合子の「嘘つき地蔵さん」、松山恵子の「嘘つき波止場」……そこそこヒットしたが、
ついに最大の“うそつき演歌”が登場する。
♪ウソツキ鴎(かもめ)に今日もまた お船が来たよとだまされた……で始まる「ウソツキ鴎」(西沢爽(そう)詞・古賀政男曲)。
9歳の小林幸子が歌い、20万枚の大ヒットになった。
63年、小学4年生でTBS「歌まね読本」でグランドチャンピオン。これがデビュー曲だった。
大人顔負けの歌唱力。“女王・美空ひばり”をほうふつさせる天才少女歌手は「第二のひばり」ともてはやされたが…
…本家の「ひばり」に嫌われたこともあって、それから約15年間、鳴かず飛ばず。低迷する。
キャンペーンの毎日。昼間はレコード店や有線放送局。夜は飲み屋、キャバレーで泥酔客相手に歌い続けた。
芸名は所属レコード会社が変わる度に変わった。小林幸子→小林さち子→岡真由美……。
再び「小林幸子」(ワーナー・パイオニア)に戻った時、「あの人は今?」風の“消息記事”を書くためにインタビューした。
彼女が選んだ場所は東京・新宿コマ劇場の筋向かいの喫茶店。「必ず『ウソツキ鴎』を超える大ヒットを出してコマで歌います!」と決意を話した。
もちろん、コーヒー代は僕が払った。
「嘘」ではなかった。79年に「おもいで酒」が200万枚。紅白歌合戦に初出場を果たす。(
>>2-3へ続く)
▽毎日新聞 2012年04月17日 東京夕刊
http://mainichi.jp/opinion/news/20120417dde012070055000c.html http://mainichi.jp/opinion/news/20120417dde012070055000c2.html