AC Character Battle Royal 7th
しかし、その疑念はすぐに払拭した。
あの音は突発的、そして偶発的なものだった。
あらかじめ爆発させる前提で動いた自分とは違う。
まだ二人ともあのデスクの後ろにいるはずだ。
そう思って何発か銃弾を撃ち込む。小さな衝撃音が響き、また消える。
反応は、ない。
しかしヴィレンは確信を強める。これは罠だ。
沈黙することで俺が疑念を抱き、確認しようとするアクションに対して攻撃をしようとしているに違いない。
ならば、今は動くべきではない。
が、心配の種を取り除くことも確かに大事だ。
ようは、動かずに仕留めればいい。合理的な思考である。
ヴィレンはポケットのひとつから先ほど投げたのと同じ手榴弾を取り出す。
ピンを抜く。
そして、彼らがいるはずのデスクの「後ろ側」目掛けて投げた。
近づいたのはそもそもこのためだった。
埒のあかない銃撃戦を作り出した要因であるバリケード、それを飛び越して爆発物を投げ込む。
それができれば敵のバリケードは途端に自分のバリケードへとかわり、安全だったはずのその向こうに死体が転がる寸法だ。
死を呼ぶパイナップルが床に当たる音。
爆発までおそらく1秒。
一瞬のカウントダウン。
1
0
ヴィレンは自分の耳を押さえた。
爆音が響くのが手を隔てても聞こえてくる。
それを確認して開放した耳に飛び込んできたのは
断末魔でも、苦痛の呻きでもない
咆哮だった。
「イィィリヤァァァァァ!!」
撃ちぬかれた足に強く巻いた肌着、そこに大きく広がる血を滴らせながらエッジが突進していた。
「何ッ!?」
ヴィレンは動揺した。生きていたということよりもまず、エッジがそこにいたことに動揺した。「ネオではない」ことに動揺したのだ。
彼ははなから「エッジは移動していないもの」と思っていた。
あの轟音の中で一瞬顔を出した自分を狙ってきたのはナイフだった。だからエッジはそこにいると考えた。
もし、そのあとに大きく移動するならばあの足では無理だろうと思ったからだ。
しかしそれは違った。あのナイフを投げたのはネオである。
偶然、狙いはそれなりによくついたがそれは布石に過ぎなかった。
ビルの破壊音が響いた瞬間エッジはナイフを一本置いて体を躍らせ(といっても不恰好に転げながら)、近くのデスクへと移った。
残ったネオはそのナイフを投げて牽制する。
その間にエッジは次々とデスクを渡り歩き、ヴィレンの近くでチャンスをうかがっていた。
そしてネオもまた、牽制の直後から移動を始めていた。
つまり、ヴィレンが狙ったバリケードの後ろはとうの昔に空であった。
エッジとネオ、二人は屋上に向かった仲間を信じていた。
だから、音が聞こえた瞬間に思ったことは「やってくれた」である。
それのルガールへの有効性に関わらず、もしもそれがたとえルガールの攻撃だったとしても関係はなかった。
信じていた以上、それは「やってくれた音」だと思えたのだ。
ヴィレンにとってそれは「異常音」でしかなかった。だからこそ、警戒せざるをえなかった。
そして今、エッジのナイフがその腕を大きく切り裂いた。
「ぐっ…クソ!」
「観念しろイリヤ、ケーブルのおっさんの仇…!」
鮮血を滴らせてなお、ヴィレンは銃を放さない。その引き金が引かれると、ナイフを掴んだエッジの腕から血が噴き出す。
「チクショウ!チクショウチクショウ!」
エッジもまた、ナイフを放しはしなかった。まるでそのナイフが己の復讐心そのものであるかのように強く握る。
ナイフは応えるかのように血に濡れて煌く。
振り上げて、斬りつける。
また、ヴィレンの体に僅かに傷がついた。
「…クッ…クククク…ハハハハハハハ!」
その傷を見て、狂ったかとも思えるほどの笑い声を発したのは当のヴィレンだ。
笑い声に戸惑い、一瞬固まったエッジの腕をあいている手で掴む。
撃たれたあたりを強く握られ、うめき声をあげるエッジと、なおも笑うヴィレンが対照的だった。
690 :
支援:2008/04/06(日) 21:23:39 ID:PaTt8yedO
「チクショウ!放せ!何笑ってんだ!」
「コレが笑わずにいられるかよ!」
そう言って、銃口をエッジの顎に押し当てた。
「ぐ…」
熱を帯びた銃口に触れてエッジの表情が歪む。ヴィレンはそれを満足そうに見て振り返る。
「撃ってみろよ!」
その視線の先にはクリムゾンを構えるネオの姿があった。
もちろんヴィレンが言外に「お前が撃つなら俺もこいつを撃つ」という意図を含ませていることにネオも気づいているから、
突然撃つような真似はしなかった。
「カカカ…やっぱりお前もそうか…」
ヴィレンは笑う。
「何がだ…」
「この期に及んで、人を殺すのが怖いのかよ。エッジは斬るばっかりで刺そうともしねえし、お前はお前でこいつを気にして
絶好のチャンスに何もしやがらねえ」
「撃て!いいから撃っちまえネオ!」
「黙れよ」
銃をひねるとエッジの顎でごりごりと音がした。
「いやはや、本当、いい気分だぜ。人間の命なんてゴミともおもわねえような連中と散々会ったあとだ、
お前らみたいなお人よしと会えてよかったよ。おかげで人間らしさを取り戻せた」
「お前が、人間らしいもんかよ!」
「黙れっつったろうが!」
腕を捻りあげるとエッジはたまらず膝をついた。
エッジが苦痛に一瞬瞑った目を開くとヴィレンの足が見えた。
蹴られる、一瞬エッジはそう思った。顔面を蹴られ、血を流す姿が脳裏に浮かぶ。
が、それは来ない。瞬時にエッジは理由を悟る。そして、首を反らす。
ネオは黙っていた。
黙ってクリムゾンを構え、決して視線をヴィレンから逸らしはしなかった。
彼には2つの覚悟と1つの信じるものがあった。
どれだけ復讐に燃えても、エッジに人殺しは出来ない。これまで同行してそれに気づいていた。
だから、彼の代わりにヴィレンを殺すつもりだった。これがひとつ目の覚悟。
信じるものは先ほどと変わらない、ただひたすら、「仲間」である。
かならずエッジが隙を作ると信じて、それを見極めようと目に力を込めていた。
「くらえよぉっ!」
エッジの頭突きがヴィレンの体を揺さぶる。
狙った足は骨折しているほうだったらしい、バランスを保てず小さな呻きをあげヴィレンは崩れ落ちる。
「うおぉぉぉぉぉ!」
駆け出すネオは疾風を纏い、腕を振り払うエッジは炎を纏うかのようだった。
そして、倒れたヴィレンは閃光を纏った。
「な、なんだ!?」
一瞬、ほんの数秒だっただろう。
ヴィレンが投げたスタングレネードに完全に意識を飛ばされたエッジは視界が回復するのを待つのももどかしく闇雲に手を伸ばす。
ナイフを握ったままの拳が、何かに触れた。人の体であると感覚で分かった。
「ネオ?ネオか?」
「残念だったな」
絶望する。それは紛れもない仇の声。
「ネオは!」
徐々に取り戻される視界のほとんどを占めるのはいやらしく笑うヴィレンの姿。
その後方、机の影にうずくまるひとつの影が見えた。
「さあな?」
無事ではない、それは確実だろう。
ならばどうするか。決まっていた。
「イリヤァァァァァァァ!!!」
生死など考える間もなく大きく振り回したナイフは、空を切った。
「くそ!」
避けられたと判断したエッジはとっさに視界を巡らす。しかし、そこにヴィレンの姿はなかった。
「どこだ、どこ行きやがった!」
前にも、後ろにも、横にも上にもヴィレンはいなかった。
いたのは―――下だ。
「…バカが」
足元で、相変わらず人を馬鹿にした男が血塗れで倒れていた。
胸から湧きだすように溢れる血がその衣服を全て赤く染めていくのがわかった。
「イリヤ!?」
「チクショウ…俺は死ぬ気なんてなかったのによ…全部ぶっ殺して、生きる気だったのによ」
「おい、お前…」
エッジは思わずその体を抱きかかえてしまった。
あの閃光の中、おそらく二人は撃ちあったのだろう。
何が起こるかわかっていたヴィレンと、何があってもと覚悟していたネオ。
互いが目測だけで、狙いもつけずに何発も何発も撃ったのだろう。
その一発が、たまたま当たったに過ぎない。
しかし、たまたま当たっただけの凶弾は、偶然の名の下にヴィレンの命を終わらせようとしていた。
「エッジ…」
「お前は、お前は俺が!!」
「てめぇにゃ殺れねえよバカが。ぬくぬくと生きてるてめえにはな…」
その言葉は嘲笑ではあったが、しかし賞賛のようであった。
「どうしてもってんなら、この死にかけの胸でも突くか?できねえだろ?」
「…!?」
その時ようやく、エッジは自分がナイフを落としていることに気がついた。
「ケッ」
そう言って、ヴィレンは中指を立てた。
立てたまま、事切れた。
エッジの絶叫が、続いて嗚咽が響いた。
ネオはうずくまったままその光景を見ていた。
満足そうに微笑む。
彼の二つ目の覚悟は見事に貫徹されるだろう。
それは、「自分も死ぬこと」。
わき腹から流れ出続ける血が砂時計のようにその体の限界を告げる。
これでいい、そう思った。
ネオもまた、ここまで狂った世界の中ですら殺人を認められない男だったのだ。
何度も死ぬ目にあい、目の前で何人も死に、いくつもの死体を見てすら、その優しい男はそれを当たり前だとは思わなかった。
だが、エッジがその復讐心をあらわにした時に二つの覚悟をした。
自分よりももっと優しい男が戦おうと、人を殺そうとしている。させてはいけないことだと思った。
だから、命を等価交換するという覚悟をもって、それを肩代わりしてやろうと思ったのだ。
もしヴィレンの銃弾が当たらなかったとしても、いずれ自殺するつもりだった。
泣きながら、エッジがようやく近づいてくる。
負傷した足を引きずりながら。
ネオの脳裏に人生最後の4択が浮かぶ。それはいつか聞いた難問だった。
しかし、ついにそれに解答をすることなく、彼のラストクイズはタイムオーバーとなった。
【ネオ:死亡】
【ヴィレン:死亡】
【山田栄二(エッジ)(左肩負傷、首輪解除)
所持品:衣服類、サバイバルナイフ(残り2本)、調理器具、魔銃クリムゾン、食料等、
使い捨てカメラ写ルンDeath、弾薬(残りは通常弾のみ)、外した首輪2つ 目的:なし】
【備考:落ちていたナイフ1本回収。ネオの荷物はエッジが引き継ぎ。ヴィレンの持ち物はエッジには扱えないので放置】
同時刻、某国クイズシティ。
事務所でジオがパソコンを叩いている。
ネオからの連絡により軍へと通報しようとした彼の元に、いち早く連絡を入れた者がいた。
その者達と専用回線で何度目かの通信しているところだった。
[Geo:状況変化なしです。そちらは]
[Ralf:突入まであと2時間ってとこだ、ただ…]
[Geo:ただ?]
[Ralf:準備ができても突入できないかもしれねえ]
[Geo:なんでです!?]
[Ralf:上空、宇宙にキラー衛星のでかいヤツがある。1基はさっき発射が確認されて、次回発射までは12時間ほどかかるとの見込みだ]
[Geo:”1基”…は?]
[Ralf:そういうことだ。今うちのハッキングチームが全力で”そっち”を沈黙させにかかってる]
[Geo:下手に突入したら全滅ってことですか…でも!]
[Ralf:わかってる、そうならないように今やってる。まあ、俺はそれでも行くけどな]
[Geo:あ、メールです]
[Ralf:ん、一旦落ちる。また1時間後に定時連絡を入れてくれ]
[Geo:待ってください!]
[Ralf:どうした?]
乙!
上野とネオさんが散ったか……
そこで、通信はしばらく沈黙を保った。
異常を感じ取ったのか、相手はその沈黙にそれ以上追求することはなかった。
5分ほどたっただろうか。
画面が更新され、ジオの打った文章がそこに表示される。
[Geo:相棒が、ネオが]
[Ralf:ああ]
[Geo:死にました]
[Ralf:連絡があったのか!?]
[Geo:いいえ…]
それきり、今度は完全に通信が途絶えた。
ラルフはそれまで敵にかぎつけられぬよう遠巻きにしか配置していなかった仲間の兵士に、
ネオ&ジオの事務所に突入してジオの身柄を保護するように命令した。非常事態と判断したのだ。
数分もたたずに、扉を破り突入した兵士が見たのはディスプレイを真っ直ぐに見据えて只ひたすら涙を拭う青年の姿だった。
「大丈夫か!」という兵士の問いかけにジオは「ええ」とだけ短く答えた。
ディスプレイで開かれていたのは一通のメールだった。
-------------------------------
送信者:
日時:
宛先:
[email protected] 件名:
答え
4
-------------------------------
たったそれだけ。
件名はもとより送信者も日時も表示されない「ありえないメール」。
その文面を見てジオは思う。
アイツはやりきったんだと。
それは確か、ジオが酔った時に唐突に出したクイズだったはずだ。
『ねえネオ、一番カッコイイ死に方ってどんなだと思う?』
『あ、お前あの映画見ただろー。確かにありゃ名作だけど、俺たちに当てはめるにゃあ…』
『いいから、ほら』
『うーん、せめて選択肢をくれよ』
『しょうがないなあ。じゃあえーと、
1.後世に名を残す偉業を成し遂げて死ぬ
2.自分の大切な物を守って死ぬ
3.愛するものに看取られて平穏に死ぬ
4.ただ笑って死ぬ』
『んー……』
『僕はやっぱり2かなー。ハードボイルドって感じがするよね』
『んー……』
『あ、でも1もかなあ。やっぱり探偵業やってる以上は名探偵として名を残したいよね』
『……んー…』
『4はまあ、適当に思いついたんだけど。抽象的過ぎるかな』
『……』
『3は平凡かなー、でも普通が一番とも言うし…』
『zzzz…』
『あれ?ネオ?ネオ?静かに考えてると思ったら寝ちゃったの?もー』
「もー!」
ふわふわと漂う少女の姿は実体を伴わず、常人にはそれを感じ取ることすらできなかっただろう。
「うるせーな、死んじまったもんは仕方ねーだろ」
男が同じように少女の隣でふわふわ浮かぶ。
スネたような顔で、手を少女に引かれている。
少女の背中には蝙蝠の羽が生え、それがパタパタと羽ばたく度に体が上下して青空に揺れた。
「で、お前の世界はどこにあるんだよ」
「んー、言ってもわからないと思うけどなあ。…じゃなくてもー!なんで死んじゃうの!」
「だからよー…」
「でも…今通ってくるとき見たらどっちみちムリっぽかったし」
「……だな」
少女はふくれっ面を笑顔に変えて飛んでいく。
男はバツの悪そうな顔から溜息を吐いてぶらさがっていく。
「モリガンに一緒に謝るんだからね!」
「へいへい」
「しばらくモリガンのドレイになっても文句言っちゃダメだよ!」
「へいへい」
「怒るとすっごい怖いんだからね?」
「へいへい」
「もー、ホントに聞いてる?」
「へいへい」
「でも、お願いしてリリスのドレイにしようかな」
「へいへ…何?」
「なんでもない♪」
少女の笑い声が死に彩られた街から遠ざかる。
一緒に消え行く男は全てから開放されたように満足げだった。
放心するエッジ。
抱きかかえたネオの体は重く、まだ残る熱が死を感じさせはしなかった。
それでも、エッジは絶叫した。
涙が止まらず、一歩も動くことなんてできなかった。
何故。こんな恐ろしい街で、こんな狂ったゲームの中で、こんな壮絶な最期を遂げて。何故。
その思いが胸を締め付けると、意味もわからないのに際限なく涙が溢れた。
先ほどのヴィレンの死体もそう、この、ネオの死体もそうだった。
二人は笑顔のまま―――逝っていた。
ういーーーーーっす。
今回終了ー!
いつもの如くご意見ご感想その他お待ちしております。
さて、4月となりましたが……
どうやら目途がたったので一応宣言しておきます。
残り4話(予定)です。
長かったような…長かったような気がします。つまり長かった……
ただ週1だと5月入っちゃいますね。どっかでスパートしようと思います。
今月20日はまた投下できない予定なので。
それでもズレこんだら、完結はGW。そのまま勢いでラジオまでやっちまう予定です。
ここまでホント長らく突っ走らせていただきまして感謝しております。
あと4回。この数にエピローグ含めるかどうかは未定ですけど、とりあえずお付き合いいただければと思います。
それでは。
gj!ついにカウントダウンに突入ですか…
あと勘違いして割り込んで申し訳ない
>>707 この書き方久しぶりに使ったから仕方ないッスよ
いいってことよいいってことよよいではないかよいではないか
うおお、来てる来てるよ!
投下乙です!
ネオオオオオオオオオ
乙です
タイトルや外部を活かした演出がかっけーな、しびれた
カウントダウンにwktkして待つぜ
乙!!
超常能力の絡まない戦闘に手に汗握りました。
バリケード越しの駆け引きが渋い。
いやー、一般人同士の戦いは生生しくていいですね。
何だか原作を思い出してしまった。
そして、逝ってしまったネオ&ヴィレンに合掌。
二人ともあまりにカッコイイ死に様だったので、柄にもなく涙ぐんでしまいました。
ロワの中でもかなり目立ってきたこいつらが死んだのかと思うと、本当に感慨深い。
ここまで来たらラストまで見守ります。
残りの執筆頑張ってください。
∩_
〈〈〈 ヽ
〈⊃ }
∩___∩ | |
| ノ ヽ ! !
/ ● ● | /
| ( _●_) ミ/ <こいつ最高にアホ
彡、 |∪| /
/ __ ヽノ /
(___) /
∩___∩
| ノ ヽ !
/ ● ● | こいつも最高にアホ
| ( _●_) ミ
彡、 |∪| / .\
/ __ ヽノ / \ ...\
(___) / .│ ..│
│ │
/ ヽ
l..lUUU
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_人__人__人__人__人__人__人__人__人__人__人
) て
) 吃驚するほどクライマックス! て人__人_
) 吃驚するほどクライマックス! て
⌒Y⌒Y⌒Y) て
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|__ ヽ(・∀・*)ノ
|\_〃´ ̄ ̄ ヽ..ヘ( )ミ ∧__∧
| |\,.-〜´ ̄ ̄ ω > (∀゜* )ノ
\|∫\ _,. - 、_,. - 、 \ ( ヘ)
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上野は結局リリスに目をつけられた時が運命の転機だったか…
うらやましくない、うらやましくないぞ!
持ち主はろくでもない死に方をする呪いの銃とか言われてて、
ネオが舞を止めたいと願ったときはひどい叶い方をしてたのに
ヴィレンを殺して自分も死ぬ、という願いは普通に成就したな。
クリムゾンさんもさすがに空気読んだか。
それともこれから山田に恐ろしい厄災が降りかかるのか・・・
だからクリムゾンなんかに関わるとろくな死に方しないんだぁ!
今夜もまたぁ!誰かがしぬぅ!
おつかれぇ
いや既にクリムゾンの呪いは発動している。
書き手がいなくなってスレが過疎るという呪いがな!!!1!!1!11
落とします。
どうやら、予定より短く、残りはこれを入れて3話かもしれない
…結局予定通り4話かもしれない
「矮小な屑どもがぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
その男はもはや人間ではない。とはいえ体の大きさが変わったりはしないずだ。
しかし、その叫びをあげた瞬間その体躯が大きく膨れ上がったように感じた。
周りを見回し、どうやらそう思ったのは自分だけらしいと気づいてアランは人知れず苦笑する。
彼と肩を並べた者は皆、人とはかけ離れたほどの力を持っている。
彼らの表情からは「怒鳴る事でルガールは小物に成り下がった」という一種侮蔑とも余裕ともとれる感情が見てとれる。
アランは、自分の目的が遠く霞んでいくのを感じた。
「結界を壊した程度で!私と並んだ心算か!その程度で!その程度の力で!」
叫びと共に滅茶苦茶に腕を振るうと、烈風がルガール以外の全てを襲った。
先ほどまでと同様、蒼月や紅丸はその身に宿る人外の力で打ち払いアランは身体能力によって辛うじて避ける。
只一人、先ほどまでと違う動きをしたのはニーギ。ニーギ・ゴージャスブルーその人だ。
「そう、そうだ…私らしくない…」
ルガールは目を見開く。己の放った烈風拳がその少女にぶち当たった瞬間を見たはずだ。防御も、相殺もしていなかった。
しかし彼女は倒れるどころか、膝を折ることもない。
ひたすら、ただひたすら毅然と直立し、ルガールを睨みつけていた。
「ルガーーーーーーッル!!」
叫びは風に乗り、鼓膜を揺らし、声として認識されて自分が呼ばれたのだとルガールは気づく。
「あんたを、ぶっとばすよ!」
ニーギは拳から人差し指を一本突き出して突き付ける。
すでに憤怒が頂点に達しているルガールを走り出させるのに十分な挑発だった。
筋肉が膨らみきった腕と広げた掌、おそらくは必殺のゴッドプレス。
ニーギといえど喰らえば辛うじて屋上に残るエレベーターの壁にでも叩きつけられてただではすまないだろう。
しかし、叩きつけられたのはニーギではなくルガール。場所は壁ではなく床である。
カウンター気味に延髄に蹴りこまれた必殺の精霊脚がルガールの顔面を陥没したコンクリートの床の一部たらしめていた。
「口上くらい聞きなさいな…ま、あんたはそこがお似合いね…」
ぐぐ、と顔をもちあげるルガールを見下ろしてニーギは怒鳴る。
「私の名はニーギ!ニーギ・ゴージャスブルー!悪をぶっとばす美少女戦士!豪華絢爛にしか生きられない女よ!」
「はははは、いいね、俺もやっておこう」
アランが続く。
「俺はアラン、アラン・アルジェントだ。ルガール、悪いけどあんたにゃ死んでもらう」
「風間蒼月…推して参る…」
「本来、こういうのは俺が率先してやってたんだがな…紅丸だ。今は只、一人のレディのために…」
自分の決意を新たにするように各々が名乗り、元凶との対決を宣言する。
「……よかろう」
ようやくその体とプライドを支えなおしたのか、黙ってそれを聞いていたルガールもまた彼ら4人に向けて言い放った。
「ルガール・バーンシュタイン。このゲームの執行者にして新世界の神だ。神に楯突く愚か者ども…死ぬがよい!」
「ルガール?神?もう誰だろうと関係あるもんか!ワン・ツー・スリーでぶっとばす!」
ニーギが、跳んだ。
運良く投下に出くわした支援
「美少女パーンチ!」
「ジェノサイッ!」
ルガールの足刀から放たれる虐殺の刃がニーギの拳に触れる。
ルガールが万全ならばニーギの腕は千切れとび、ニーギが万全ならばルガールの足は砕かれていた。
しかし今はそのどちらでもない。ニーギは消耗し、ルガールは力の均衡を失いかけていた。
「無月…!」
着地したルガールの右腕を球形の雷が捕らえる。少し離れた位置から紅丸が放ったものだ。
「チッ!」
強引に腕に通した気で振り払うルガールの、今度は左腕を蒼月の水弾が絡める。
「小五月蝿い蝿どもがぁぁぁ!!!」
叫んだ横面、本来ならば即死するそのこめかみにアランが撃った銃弾が直撃し、ルガールの頭は大きく揺られた。
オロチの血と殺意の波動、さらに科学や化学によって強化されたルガールの体は銃弾が致命傷となることはなかった。
アランとて期待して撃ったわけではない。が、それは一層ルガールの怒りに火をつけ平静さを失わせる。
膨大な力を行使する彼にとって、精神の揺れはそのまま自滅へのカウントダウンのようなものだった。
ニーギはすでに着地して、次の攻撃の準備をしていた。
「このような下種にまで…おおおおおおのれええええぇぇ!」
「アンタは神の器じゃなかったってことさ!」
下種と揶揄されたアランが告げる。
「そう、神とは我…オホン、貴方にふさわしい呼び名は「只の愚かな人間」程度ですよ」
「黙れェェェェェ!」
両腕を広げるように蒼月とアランの双方に向けて片手でカイザーウェイブを放つ。
さきほどまでの烈風拳よりはるかに威力の高いそれを蒼月は正面から見据え、上着をはだけた。
「愚か!」
一瞬にして全身に浮き上がった紋様はおそらく水邪封印のそれである。
その紋様が怪しく輝くと蒼月の足には水が纏われた。そして、文字通りの一蹴。
ルガールが渾身で打ち出したはずのカイザーウェイブは煌く水滴となって大気に散った。
「バカな…!」
決定的な隙だった、しかし蒼月は打ち込まなかった。
その視線は驚いたようにルガールを挟んで自分と反対側、アランの方を見ていた。
さすがに威力、大きさからしてかなりの身体能力はあるものの一般人に近いアランに今の衝撃波をどうにか出来たとは思わず、
おそらく死んでいるだろうと思って見たのだ。
ルガールもまた、そう思って捨て置いた。だからこそ驚き、彼もまたアランを見た。
「悪いね、紅丸さん」
「…男は助けない主義だったんだけどな」
そう言う紅丸は両手に先ほど出したものより幾分小さく、しかしずっと凝縮された雷を貼り付けるようにして
カイザーウェイブを押し止めていた。
「ば、バカな…」
ルガールの表情に占める怒りの割合はもはや少ない。ほとんどが驚きに塗りかえられていた。
「雷光拳!」
「ヴァンガード!」
紅丸が砕いたその気の塊をアランが霧散させていく。
二人がかりとはいえ、自分が取り込んだオロチ程度の力と普通の人間にその技を全て消された事をルガールはにわかには信じられなかった。
「バカなぁぁぁ!!」
「莫迦は貴方でしょう」
冷ややかに、蒼月が言った。
その光景をニーギは一歩後ろから笑顔で見つめていた。
すでに詠唱は終わり、いつでも精霊脚を放つことはできる。
おそらくあと一撃加えればルガールがギリギリのラインで保っているあの無謀なパワーバランスを崩すことができるだろう。
しかし、目の前の仲間たちの頼もしさについ見とれてしまっていた。
各々が覚悟を持って最高の動きをしている。だから、そう、だから今感じているこの喪失感はさして問題ではなかった。
「彼」もまた、覚悟の上で散った。物分りなんてよくなりたくないとずっと願っていた少女ですら、それを認めるしかない。
今彼女の足に宿る青き光の中に、この町で一番輝きを放っていたよきゆめが乗っている。
つい今、天に登る途中でほんの少し自分に寄り道してくれたそれに感謝しながら、少女は歩いた。
「バカなんてもんじゃないわ」
決意と、笑顔。
「ダイバカよ!」
右の足にリューンが集まる。
「紅丸!」
突然呼びかけられて戸惑う色男の顔色などうかがうこともせずに命令する。
「さっきの雷玉、出せる?」
言って、自分の足元を指差す。
「ああ、そういう…まぁ、いいだろう」
ルガールはそのやり取りにはっとする。自分を失っていた事に気づき咄嗟に腕を振るった。
烈風拳が出る…はずだった。
振り抜くことなく腕は止まっていた。その腕が途中から逆を向いている。
「まったく、大莫迦とは良く言ったもの」
ルガールが信じられないものを見る目で自分の折れた腕を見つめる横で、それを折った張本人が宙に腰掛けて冷笑していた。
「暗黒雷塵纏!」
ルガールを挟んで対角線上から紅丸が叫ぶと黒い雷の玉がニーギの足元に置かれるように現れた。
「本当は、飛ばないんだが」
「今なら平気でしょ?」
「まぁ、な」
自分の中の女性のことまで見透かされているようで紅丸は苦笑する。
ニーギは大きく足を後方へ振り上げる。
「おお、なるほど」
蒼月はそれを見てすぐさまニーギの後ろへと転身した。
「片方は絶技じゃないけどまあ、いいや!轟雷蹴球!!」
ニーギの蹴りがその雷を一瞬歪ませ、黒に新たな色を加えて弾き飛ばす。
青黒いその塊は呆然とし続けるルガールの体を直撃し、弾けて、天へ梯子をかけるように伸びた。
「ぐおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」
己を包む雷と青の力に身を裂かれるようにルガールは悶える。
「さあ、出ていきなさい!かわいそうな力たち!」
ニーギの声に従うのではないだろうが、ルガールの体から雷の色ともまた違う黒いオーラがじわりと溢れだす。
それは、殺意の波動。取り込んだ最大の力に見放されかけルガールは吠える。
「まだだ…まだだぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
一喝。いまだ雷に包まれる体を強引に動かし、その黒き波動を押し止めてルガールは駆けた。
「ちっ!」
自分で撃った技とはいえ紅丸の技と合わせた以上触れるのは危険、だからそのまま突っ込んでくるルガールをニーギも蒼月もとりあえずは避けた。
その後ろにあるものをほんの一瞬、忘れて。
「しまった!!」
気付き、駆けた。が、届かない。
「フゥハァァァーー!!」
ルガールが手にしていたのは封雷剣、そして楓の死体だった。
「まだだ、まだやれる!青龍の力とこの神器の力!取り込んでくれるぞ!!」
叫ぶルガールに未だ残る攻撃の残滓は全て封雷剣に吸われるように消え、折れた腕こそ戻っていなかったがその顔に苦悶はなかった。
掲げた楓の胸に突き刺した指から流れる血を浴びるように飲む。
一瞬の静寂。零れた血がパタパタと床に落ちる音すら聞こえた。
そして開放。高らかな笑い声と共に広がった衝撃波で屋上に唯一突起として残っていたエレベーターへの入り口が消し飛んだ。
「くうっ…!」
ニーギが自分の前面に青く光る力場を出現させて後ろの3人をかばった。
「さあ、続けよう…!」
ルガールに笑みが戻った。
「まったく、次から次へと!!」
「女」
悠然と歩くルガールを睨む後ろから声をかけられたニーギが振り向く。
この物言いは間違いなく蒼月だろうと思っていたのでかなり近くに顔があったが辛うじて平静を保てた。
「あ、はい、なんでしょ」
「先ほどの技、今一度」
「え?轟雷蹴球?でも今あいつ雷の属性は多分」
「阿呆、私がその程度の事もわからんと思ってか」
ぎろりと睨む蒼月の視線に応える様に体に浮き出た紋様が光った。
一瞬苦悶の表情を見せて、すぐにそれを笑顔の仮面にしまって蒼月が言いなおす。
「失礼。それではなく、これで」
そう言って掌から巨大な水球を出して見せる。
「なーるほど…やってやろうじゃない!」
ルガールに背を向けてニーギはガッツポーズをして見せた。
もちろんルガールはそれを見逃しはしない。素早く両手後ろへ引く。折れていても問題などないようだ。
カイザーウェイブの構えである。
「それだったら…!」
ニーギの前に出ようとした紅丸の足が止まった。
その技が、「違う」と分かった。
その技に対して今までのように相殺を試みることは絶命と同意である事を感じ取った。
「カイザァァァァァ…」
ニーギが軽く地を蹴ってふわりと宙に浮いた。
「フェニックス!!」
「水皇蹴球!!」
3連続したカイザーウェイブは一瞬でひとつに集まり雷を宿したフェニックスとなって、オーバーヘッドでニーギが蹴った水球と激突した。
「いっけぇぇぇぇぇ!」
「ぶち破れ!」
「フン…」
紅丸だけはその相殺劇を鑑賞しなかった。その間にせめて一撃を、そう思って駆け出していた。
しかし動いていたのは紅丸だけではない。
ルガールもだった。
せめぎ合う奥義のすぐ隣でぶつかる二つの影、そして一方は為す術もなく後方へと吹き飛ばされた。
「いい判断だ、力さえあればな…」
せせら笑うルガールの隣で爆発するように二つの技が弾け消えた。
732 :
支援:2008/04/13(日) 21:57:28 ID:ALE6ChejO
「今こそ!私は神となる!」
そう叫ぶルガールの首を狙ってニーギが精霊脚を放つ。
ルガールはそれを無事な片腕で止める。
「真空片手独楽!」
紅丸が地に手をついて回転する。もちろんその手にも、回りながら蹴りを加える足にも雷の力を纏って。
「はあっ!」
蒼月も同様。水に覆われた足でルガールの足を狩ろうと狙った。
「温い!!」
その全てを受け止め、ルガールは弾き飛ばした。
両手と両足に力をこめ、大きく体を開く。
アランは全ての力を込めて地を蹴った。
「インフィニティー!!!」
ルガールの腹部、鳩尾にアランの最大の技が突き刺さる。
両手足に力をいれる事、腹部に隙を作る事、腹部が気を練る際の重要な部分である事、全ては計算された上でのことだ。
しかし、ただの人間であるアランの技はそこを貫くことはない。
僅かにめりこんだ拳が膨大な筋力に押し戻され、事態を察知したルガールが軽く手を払うとそのただの人間は数メートルの距離を飛んだ後、
バウンドして地に倒れた。
「ダメか…!」
「あとちょっとなのに!」
歯軋りするニーギたちは気づかなかった。
アランは倒れたまま、首と手をルガールに向けていた。
投下順間違えたー。
733の前にこれです。
「一発…どうにか…」
ニーギの呟きを聞き取って蒼月が応える。
「そうですね、おそらくはそれで…」
「チッ…!でもあれに一撃ってのは…」
さらに後ろから立ち上がった紅丸が体を引きずるように近づく。
「あの、俺は…」
理解できていないアランは3人から一瞥されてシュンとなる。
そもそもここまで無事でいることが奇跡のような一般人(彼らからすればそうだろう)に対する視線は冷たく感じた。
「いや、それ、アリかも」
ニーギはそれだけ言い残して走り出した。
「俺は反対だけどな…」
紅丸もまた、同じく。
「一撃でいいのです、それならばあるいは…」
蒼月も目の前で水となり、次に視界に現れたのはルガールの目の前だった。
アランは数秒かけてようやく自分の役目を悟り、笑うしかなかった。
「俺が…俺がやんのかよ!?」
愚痴りながらも、駆けだす態勢で「その時」を待った。
「これでも…」
連続する発砲音。
「喰らえ!」
手にした銃に残った残り5発。全てそれることなくルガールの体を捕らえた。
本来ならば先ほど同様、人を超えたその体に弾かれて終わる銃弾であったろう。確かに、弾かれていた弾が地に落ちる。4発。
「やった!」
ニーギが叫ぶ。
ルガールの腹部から滲む血。アランの放った銃弾の一発が、そこに当たっていた。
そこは先ほど彼が渾身の力で拳を打ち込んだ急所、鳩尾である。亀裂は入っていたのだ。
「グ…オォォ…ガァァァァァァァァァ!!!」
その体から立ち上るのは黒を基調とした様々な色の波動だった。
渦を巻いて螺旋となって天に向かって伸びたそれをルガールは自身で見て悟った。己の敗北を。
「強い力で飽和状態の体をまた強い力で縛り付けたんだもん、縛ってるロープに亀裂を入れればはじけるのが道理よね」
つかつかと歩み寄るニーギに、ルガールは自嘲する。
「私の世界は、作れなかったか…」
「ダイバカ……」
ニーギは再びルガールを見下ろして言葉を吐く。
「誰だって、自分の世界は自分の中にあるのよ……私のような存在だって、それを信じて世界をまたぐの。
次の世界でも自分がきちんと自分である事をいつも誓ってる。あんただけの世界を他人にも強要するなんてのは、傲慢通り越して臆病よ」