ttp://www.fatbabies.com/phpbb/viewtopic.php?t=3649&sid=b4366956596eb9b7dcedbadd041e7441 このスレッドに元Blue Planetの連中が誰か書き込まないかなと思ってた。ここは最後の書き込みが
去年の9月だし(訳注:このレスは04年1月に書き込まれている)、死んだスレッドだ。でも、本
当は何が起こったのか、また(テトリスみたいな一見単純なゲームでさえ)今時のビデオゲーム開
発がいかに難しいかを分かってもらいたいから書く事にした。
僕はテトリスワールドの開発チームの一人だった。このプロジェクトは、11ヶ月でPC/PS2/Xbox/
GCの4プラットフォーム用すべてを開発するという、とても野心的なものだった。ご存知の通りク
リスマス商戦はこのビジネスでは絶対で、僕たちはPC版とPS2版を2001年のクリスマスまでに何
としても完成させるよう、そしてXbox/GC版をその後すぐに出すよう、THQからとてつもないプレッ
シャーを受けていた。
最初に言っておくと、ヘンク・ロジャースはテトリスが大好きなんだと思う。テトリスは彼の宝物
で、巨額の富を彼にもたらしたし、彼はあのゲームを生かし続け、面白くし続ける事に関してはと
ても気を使っている。けどその上で、ヘンクは同時に自尊心の塊で、ゲーム開発の現場の現実につ
いておめでたいほどに無知だ。テトリスワールドという名のボロクズの大きな原因は、これらの点
だったと思う。
開発が始まった時、ヘンクは僕たちに手書きの絵コンテ数枚を提示した。デザインドキュメントは
無し、機能仕様書も無し、単なる絵の山とそこにつけられた注釈だけだ。それを渡すと、彼は「ビ
ジネスを処理するために」、また外部の受託業者と仕事をするためにどこかへ消えた。その業者が
作っているテトリスデザインツールを使うと、Mac上で動くGUIアプリケーションを使ってテトリ
ス型のゲームを簡単に作ることができた。
ヘンクがそのツールとゲームプレイ自体をデザインしている一方、それ以外のほとんどの事はリー
ド・デザイナーとリード・デベロッパーにまかされていた。次第に詳細な設計が作られていき、実
装が始まり、妥協点も生じ、プロジェクトはなんとか時間内に出来上がりそうな様子を見せてきた。
4ヶ月後、ヘンクがチームを招集し、開発の現状についての報告会を開いた。開発が進んでいる方
向について聞いた時、彼はひどく動揺した。彼からすると、彼の思い描いたビジョンとやらは完全
に破壊されていた。ヘンクはこのゲームを「ミノ」キャラクターのプラットフォームとして考えて
いた。テトリスワールドをやった事がある人なら分かると思うが、「ミノ」キャラクターというの
はプレイ中に画面に右下に座り、プレイヤーのプレイを観察している小さな立方体のキャラクター
だ。ヘンクのビジョンでは、テトリスワールドに登場する世界はそれぞれ数十から数百のミノキャ
ラによって構成され、たくさんのミノキャラ達はお互い同士やプレイヤーのプレイに反応して動き
回り、世界が生きている感覚を演出するのだという。また彼は、オンライン対戦・友達リスト・トー
ナメント/ランキングシステムといった機能を持った「ミノ・シティ」なるものも要求したが、言
うまでもなくこれはリリースまで一年もないソフトに実装するには野心的すぎるとしか言えないも
のだった。
クリスマスまで6ヶ月を残したところで、ヘンクはゲームのデザインをまるっきり作り直す事を主
張し出した。プレイしやすさのための妥協点は放り出された。彼はシンプルですっきりしていたマ
ルチプレイヤー関連のインターフェースを、開発とデバッグに3倍時間がかかる複雑でややこしい
インターフェースに置き換えるように言い出した。あるプログラマーは4〜5ヶ月間、自分の時間の
ほぼ100%をミノキャラのAIエンジンに費やしたが、これは製品版では全く使われる事がなかった。
ヘンクとリード・デザイナーとリード・デベロッパーは何度無くミーティングと議論を繰り返し、
ゲームがプレイ不可能な状態のままでクリスマスが近づくにつれてTHQはますます神経質になって
いった。開発チームは週70時間、80時間、果ては100時間もの時間を、時には30〜35時間ぶっ通
しで費やし、なんとかゲームをプレイ可能にするのとヘンクの要求を満たすのを両立させようとし
ていた。
これが行われている最中、Blue Planetはひどい財政難の中にいた。給料が遅れて支給されるなんて
のはよくある事で、一日や二日ならまだしも、たまに二週間も遅れて来る事もあった。皆で一斉に
退職するぞ、という事をちらつかせた結果、やっと経営側は給料が遅れる場合に事前通知をしたり、
遅れた場合に少量のボーナスや有給の追加をしたりするようになった。
最終的に、なんとか、THQがゲームを発売してもいいと思える程度に問題点は修正された。その時
点であったのは、本来の「シンプルで中毒性のあるゲームプレイを(当時としては)最新のゲーム
機のグラフィックで飾る」という目標に最初から集中していればできたはずの物の抜け殻みたいな
ものだった。PC版はなんとかクリスマス前に発売されたが、12月22日というその発売日はクリス
マス商戦にはあまりにも遅すぎるものだった。PS2版にはなおも問題が残っており、それから更に
数ヶ月遅れてリリースされた。この頃にはTHQは既にブチキレていた。彼らは僕たちが途中まで作
り上げていたXbox版とGC版を取り上げ、完成させるために他のソフトハウスに回した。ちょうど
この頃、Blue Planetは開発スタッフを全員レイオフし、テトリスのライセンスを管理するだけのた
めの会社として自らを「再定義」した。今のBPSは、ヘンクを含んで2〜3人の社員しかいないと思う。
(テトリスの権利所有者について、情報がはっきりしていないので1段落省略)
とにかくこんな長文を書いた理由は、ソフトハウスの中で何が起こっているかを、ゲーム開発のビ
ジネスに生きていない人に知ってほしかったからだ。あと、開発チームを擁護したかったからでも
ある。彼らは決して役立たずじゃない。ほとんどみんな、才能あるプログラマー・デザイナー・アー
ティストたちの集団だった。ただ単に、時間の制約と、狂ったデザインと、ヘンクが提示するあま
りにも理不尽な要求の中で、良いゲームを作るのはとにかく不可能だったんだ。