ACキャラバトルロワイヤル番外編 風雲サタン塔SUN

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21BOSS 6/10  ◆Fu21OaZL.g :2005/05/24(火) 19:44:47 ID:CtNuteMU
「牛乳ふいた雑巾百枚!」
バサバサバサバサバサバサ……
「ひっ、ひっ、ひぃい、ひぃいいいいいいーーーーー!!!」
「うぅっ!?凄い匂いだ…ここまで匂うとは…」鼻を摘み咳き込む李。

「余が履き古した靴下五百足!」
ドサドサドサドサドサドサ……
「ぐ……つーんとするな……」アーデルハイドはユリアンのやり方に慄いた。
「のわぁぁああ!やめやめやめやめろぉおおー!やめたまえ汚らわしいぃいいぃぃいい!!!」

「ヌフフフフ、どうやら貴様にはかなりの威力の様だったな」
勝利を確信したユリアンは最後の制裁に入る準備をした。
その後ろでどでかいポリバケツが何やらガタガタと動いている。
「ま…まさか…それは…」
その動きにアーデルハイドは嫌な予感がした。というより、この流れでいくと中身はアレとしか考えられない。

「とどめは……ゴキブリ1500匹だぁぁああ!!!」
「ちょっと待って下さいユリアンさん!それは下手したらこっちにまで被害が……」
「よせ、やめろ!私もそれは苦手だ!」

ガパッ!
ザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザ……
一斉に黒くて小さな物体が飛び出し、地を走り、リングの外にまで散らばっていく。
「うわああぁぁ!来た来た来たーーー!」×2
美形二人が叫ぶ。
「よっ、はっ、ほっ!」
そんな中、審判の黒子だけはこりゃあ後の掃除が大変だなーとゴキブリを器用に避けていたらしい。
まあ誰も彼のことなど眼中に入っていなかっただろう。
22BOSS 8/10  ◆Fu21OaZL.g :2005/05/24(火) 19:46:44 ID:CtNuteMU
「イグニス、平気か!?」
何とかゴキブリを避け一息ついた李はイグニスを見やった。
そして、あまりの光景に絶句した。
「…フ…フフフフフフ……ウフフフフフフフ…・…」
もはや色んな意味でぼろぼろになったイグニスは、笑っていた。
血やら生ゴミやら汚物に塗れた彼にゴキブリは群がり、服の中にまで出入りしている。下手すれば口にまで入りそうな勢いだ。
その表情に生気は無く、半ば瞳孔が開きかけている。
「イ、イグニスが……イグニスが……」

「ウヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョ……!」
壊れた。
李はそう思ったが、口には出せなかった。

「ア”ーハッハッハッハ、どうだ愚か者め!余をコケにした当然の報いだ!」
イグニスのアレな壊れっぷりに満足したユリアンは止めをさそうと彼に近づく。
「止めだ!エイジスリフレ…」
ゴキブリが足に登ろうとするのを払いながらユリアンの両腕に電光が漲る。
だがここで思わぬ誤算が生じた。
「ランランラ〜、ランランラ〜、宇宙よ、私に答えよ〜♪」


カッ。
23BOSS 9/10  ◆Fu21OaZL.g :2005/05/24(火) 19:48:24 ID:CtNuteMU
「あーーーーーーーーーー!!」
「うおぁっ!?」

観客席にて突如叫んだアンヘルに驚いたK9999は暇つぶしにやっていたゲーム機を落としそうになった。
「ねぇねぇ、K9999!あれ見て見て、イグニスがすごいことになってるのにゃ〜!」
「ああ!? うっせえな、俺は今手が離せねぇんだよ!」
チュドーン、ピロリロペロリロ。GAME OVER。
「アンヘル!てめぇのせいだぞコラ!」
「だ、だってイグニスが、イグニスが変身したんだにゃ〜!」
「はぁ?お前何言ってんだ?」

「この試合、宇宙高年化エレガント問題の勝利です!」
黒子がそう告げるが、聞いている者は果たして居たのだろうか。
「誰か! 誰か担架を持ってきて下さい!」アーデルハイドがそう叫んだ。
ふんどし一丁の姿のまま、担架で運ばれていくユリアン。その姿はある意味滑稽であっただろう。
ユリアンを見送りながら、涙するアーデルハイド。
「ユリアンさん、貴方の犠牲は無駄にはしません」
「…まだ…死んで…いない」
24BOSS 10/10  ◆Fu21OaZL.g :2005/05/24(火) 19:53:18 ID:CtNuteMU
「なあイグニス、質問してもいいか?」
それを呆然と見て、李は横に佇んでいるイグニスに疑問をぶつけた。
「……一体なんだ、私はこれから風呂に漬かるので忙しい」
彼の身体は未だ汚物の匂いが取れておらずかなりの悪臭を放っている。
「その、何だ、さっきの『アレ』は何なんだ?」
「……『アレ』か。アレは私のもう一つの姿、いや忌まわしき闇に葬り去るべき姿であるが、あの醜態から抜け出すには自らもう一つの自分となり自己を捨てることが勝利への道だと宇宙からそうお導きがあったのだ。
あの姿でいれば私は私ではない、つまりは汚物に塗れていても何とも思わないということだ。だがこの方法は色々とやっかいな問題があるのであまり使いたくはないのでな。
もう二度と使わん。だが宇宙のお告げが何故あの時私に届いたのか、やはり私こそが神に相応しいということなのだ、そう神という存在になるには…・・・」
「すいませんもう結構です」
頭を抑えながら李は一人誰にも聞こえないように呟く。
「……太陽になるなんて反則じゃないか」と。

○宇宙高年化エレガント問題(一勝)【ケンカ】弟より優れた兄などいねえ!(一敗)●

25ゲームセンター名無し:2005/05/26(木) 06:55:39 ID:/2koTDX1
不安なので保守
26サタン塔新聞:2005/05/29(日) 01:37:43 ID:Xh14ssyi
娘のためなら死ねる、ドラゴン・ドライブに完敗!  

二回戦が開催され、ドラゴン・ドライブと麻雀対決で激突した娘のためなら死ねるは必殺の相沢バスターで終始試合を優位に進めていたにも関わらず、
何故か連発されたロボカイの不可解なチョンボに苦しみ、ロックの必殺レイジング大三元によって粉砕された。

ロック「全力で飛ばす前に相手が自滅するってのは始めてだぜ……」

ドラコ「というか、ロック君がそんな技出せなくても余裕で勝てたような気がするんだけど」

なお試合後、ロボカイのチョンボ連発に憤慨した藤堂、ロボカイに重ね当て&説教。
「機械人形なら高度な計算くらい出来んでどうするんじゃ!?」と活をあびせた。
しかしロボカイは、「試しに7×7はいくつだか言ってみんか」と問う藤堂に対し5の段から数えなおす体たらく。
ツッコミがさらなるボケを産み、段々と漫才ムードに。
最終的にはお笑い芸人も真っ青の掛け合いを展開した。

試合の結果

○ドラゴン・ドライブ(一勝)【麻雀】娘のためなら死ねる(一敗)●

サタン塔新聞最新版より
27修正:2005/05/29(日) 01:40:39 ID:Xh14ssyi
修正
×・二回戦が開催され、ドラゴン・ドライブと麻雀対決で激突した娘のためなら死ねるは必殺の相沢バスターで終始試合を優位に進めていたにも関わらず、

○・二回戦が開催され、ドラゴン・ドライブと麻雀対決で激突した娘のためなら死ねるは必殺の超倍満で終始試合を優位に進めていたにも関わらず、

駄目だ、元ネタがバレバレだ……
28笑点:2005/05/30(月) 10:29:32 ID:WOLHr20H
「勝負の方法は漫才対決です、この対決方法はコンビ二人で漫才やってよりウケた方が勝ちとします!以上!」

チャンチャカチャチャチャチャ、チャッチャッ(笑天のテーマ)。

「はーい、どうもどうもアルルでーす」
「メイでーす」
「二人合わせてー……」
「ぐぐぐっぐー!」
「「合わせてなーい!」」
わはははは……。
二人と一匹の漫才はそれなりに受けたようだ。
29笑点:2005/05/30(月) 10:30:35 ID:WOLHr20H
「極限流師範リョウ・サカザキだ」
「俺ぁ九戸文太郎だぁ!文句あんのか、ぇ?あんのかコラ?」
「所で最近天気がいいな」
「そうッスね、兄貴。本当にいい天気が続くッスね」
「雨が続くと色々と嫌だからな」
「そうッスねそうッスね」
しーん。
「……」
「……」

「兄貴、どうぞ」
「…ちぇいさあああああ!」
バキイイィッ!

「……この勝負、素敵なお友達の勝利です!」

「しまった!やはり氷割りよりビール瓶だったか!?」
「なんでやねん!」
わははははははは……。
そのツッコミだけがリョウ達が唯一会場の笑いを取った。
つか、ちぇいさあ!は無視なのか文太郎。

○素敵なお友達【スペシャル(漫才)】弟・妹に困ってます●

30ゲームセンター名無し:2005/06/02(木) 08:07:08 ID:S20NU5Yj
hosyu
31ゲームセンター名無し:2005/06/04(土) 18:55:01 ID:ezyJZv4h
保守
32ゲームセンター名無し:2005/06/07(火) 01:51:15 ID:jxWMFT8p
まあサタンだからな。
33ゲームセンター名無し:2005/06/08(水) 23:36:02 ID:Ib+GqueJ
補習
34ゲームセンター名無し:2005/06/11(土) 19:10:32 ID:jWm64B6T
ほしゅっ
35ゲームセンター名無し:2005/06/13(月) 20:37:45 ID:TZuhiFRW
まとめサイト希望あげ
36きょー:2005/06/13(月) 20:53:32 ID:VWS0VY21
ぼでーがあめえ
37ゲームセンター名無し:2005/06/16(木) 20:17:42 ID:fEKZrEG0
作品期待待ち
38ゲームセンター名無し:2005/06/17(金) 23:07:08 ID:Yka3Pq88
保守・・・
39ゲームセンター名無し:2005/06/20(月) 03:23:28 ID:rprzbMpR
スペランカーエロワ出場記念age
40激闘 1/10  ◆Fu21OaZL.g :2005/06/23(木) 23:01:52 ID:rfRy5kye
「私もお料理勝負がやってみたいです」

パティは子猫の様にじーっと、ウルルン共闘記VSリーダーズの勝負が写されるスクリーンを見上げる。
「うーん、パティが得意なら料理でもいいが、勝負を決めるのはくじびきだからな」
その隣でアレックスは鼻を指でかきながらこう呟いた。
「といっても俺はあまり料理とかは詳しくない、相棒にまかせっきりになるのもそれは好ましくないのだが……」
「大丈夫よ、私も専門的な範囲で詳しい訳じゃないから。マイトは美味しいって言ってくれるけど」
皆が皆マイトと同じ味覚を持っている訳じゃないから、とパティは付け加えた。
と、そのパティの笑顔の後ろで何やら騒がしくなってきた。
「?」
パティは無意識に、感じ取った仰々しい複数の思念の方を見てしまう。
「そこの人、危ないから避けて!」若い女性の声が聞こえた。
「……はい?」
きょとんとして、一体何なのかと、つい思念の元へ身体を向けてしまう。
「避けろと言っている!」片言で叫ぶ男の声。

「パティ!!危ない!!!」
危険を感じたアレックスに身体を引張られパティは転びそうになった。
41激闘 2/10  ◆Fu21OaZL.g :2005/06/23(木) 23:03:19 ID:rfRy5kye
「ぬぅぅううううう……」
「リオン君!もっと早く走りなさいっ!!!」
「は、は、はひいぃいいいっ!!響子先生ぇっっ!!!」
「あはははははははっ、凄い凄い面白ーいっ!」
水無月響子をお姫様抱っこしながら全力疾走するリオン・ラファール。
それを例の瞬獄殺の構えで追いかける豪鬼、何故か口に薔薇を銜えており、背後でラテン調の音楽が流れている様な気がした。
その肩の上にちゃっかりと乗っかり、乗り物気分で楽しんでいるニーギ・ゴージャスブルー。
彼らは今やサタン塔の竜巻となって会場を爆走していた。

そうして永遠とも思えるような時が過ぎた頃、自分の心音以外は静寂に埋もれたパティの耳に、アレックスの声が届いた。
「大丈夫か、パティ?」
「あ、はい。大丈夫です」
次第に嵐にも似た百鬼夜行で吹っ飛んだパティの意識が戻る。
パティが上体を起こして過ぎ去っていった喧騒の方向を見つめると、ある人物達の存在に気づいた。
「……何やってんだ、あんたら?」と呟くアレックス。
彼らはパティを巻き込まない様にしようとしたのか、戦闘態勢を取ったまま固まっていた。

日本舞踊にも似た奇妙なポーズを取っていた神楽マキ。
ギターケースからマシンガンを取り出そうとした金大正。

「あら嫌だ、私ったらつい…
「ハッ!? しまった、いつもの癖で…
「「お怪我はありませんでしたか?」」
金とマキは慌てて戦闘態勢を解除し、ハモリながらパティに声をかける。
「ええ、お気遣いありがとうございます」
42激闘 3/10  ◆Fu21OaZL.g :2005/06/23(木) 23:04:41 ID:rfRy5kye
「一体何なんだ、今のは?」
「いきなりの事でしたので私達にも何が何やら……」
「この大会にはあのような者も居るのですか、全く先が思いやられます」
「ああ、全くだな。まあ強くなるチャンスだとでも思えばいい」
互いにホッとしながら和気藹々と雑談を始める。

「あのぉ、何かの縁ですし。良かったら私達と試合しませんか?」
パティののんびりとした一言が、激闘の始まりになるとはこの時誰も思わなかった。


「汚れ!祓う!砕く!穿つ!はぁああ…はいっ!!!」
「ぬぐぉあっ!」
リングに叩きつけられ、打ち上げられ、また叩きつけられの繰り返し。まるで玩具の様にアレックスは弄ばれていた。
(……まだこんな強い奴が居たとはな……)
あえてニヤリと笑い、アレックスはただ世界の奥深さを噛み締めていた。
回避、攻撃、回避、攻撃。見事な戦闘能力である。
雨あられと打ち込まれる舞にも近い攻撃を全部かわすのは容易ではない。
何とか回避して懇親の一撃を加えようとするがそれも叶わず、ただ翻弄されるのみ。
どれが本物の神楽マキなのか、それとも全員本物の神楽マキなのか。アレックスには分からない。
フラッシュチョップは潰された、パワーボムは避けられる。

(ならば……!)

攻撃の一瞬の隙だけを狙う、さっきから何度も食らっているせいかパターンは読めてきた。
そう、後は攻撃だけ、攻撃を入れればいいだけなのだ。
43激闘 4/10  ◆Fu21OaZL.g :2005/06/23(木) 23:05:54 ID:rfRy5kye
その巨体からは信じられない程、素早く、高く、アレックスは飛んだ。
奇襲用の飛び込み技、フライングクロスチョップ。それをマキに叩き込もうとした。

だが――
「オ〜ホッホッホッホッホッホッホッホ!!!」
「!!??」
マキの高笑いと共に分身が現れる。
数秒で壊される奇襲、衝撃が、アレックスの身体を走る。今までとは桁違いのダメージが与えられる。

――――裏面壱活・三籟の布陣。神楽マキ最大の奥義とも言える技。

「もう……終わりなのかしら?せっかく経緯を払って手加減をせず本気を出しましたのに」
リングに倒れたアレックスを見下ろし、長い脚を踊るように回す。
人間離れした強さだ、だがそれが面白い。そう思ったアレックスは立ち上がろうとした。
ええ私一度死んでいるのです、ですから貴方も本気でお相手なさいな。そう思ったマキは再び構えた。
そして両者が対峙しようとしたその時――――。

「アレックスさん、交代させて下さい」
鈴を鳴らすような声が二人を止めた。
「……パティ?」
先ほどから彼らの試合を見守ってきた少女、パティ・マイヤーズ。
燐とした表情でアレックスを見つめる。
「……分かった、だが、無理だけはするな」
僅かな心配を顔に含ませてアレックスはリングを降りた。
そして代わりにリングに上がったパティは静かに深呼吸を繰り返した。

「あまり戦いにこの力は使いたくないけど……」
少女の周りに光りを放つ珠が生まれた。
44激闘 5/10  ◆Fu21OaZL.g :2005/06/23(木) 23:07:32 ID:rfRy5kye

――迂闊だった。

音による衝撃によって出来た傷にマキは顔をしかめた。
まさか自分よりも素早く、かつ的確に攻撃を決められるとは思わなかった。
どのような理由であれ、結果的に先のアレックスと同じ選手交代になってしまった。
華やかな音色に侵食された跡がじりじりと痛む。けれど、そんな痛みも霞んでしまうほど――気になる事があった。

ガガッ!
リングの上で金とパティが互いに激突している。

一見かよわそうな外見のパティだが、この人物、意外に肉弾戦にも強い。
なにもかもが我流で天性のカンにだけ頼って戦っているが、普通の人間より遥かにポテンシャルが高い。
もっとも金は金で、道士でありながら体術である距拳道をこなしている。双方引けを取らない。
そもそも、二人共今はリングで戦ってはいない。空中戦というレベルに達している。
脚を振り上げて、金はパティにネリチャギを叩き込む。否、パティは肘で受け切った。
突き出すパティの腕を、無骨な手でクロスして打撃をかわす金。
力だけならまだ金の方に分があるかの様に見えた、だが――
「……ごめんねっ!」
「!?」
見違える様な速さで金の後ろに回り込み、音を練り上げ、織り込み、放つ。
突如、金の眼に映る儚い幻。
ある事件の被害者がこの世で最後に見せた笑顔。
まだ7年しか生きれずに、24時間かけて殺された少女。
「…さや、か…」
歌声が聞こえる。
その音色は優しく、強く響く。金の心に生じた僅かな綻びに潜り込み、眠らせる為の歌。

「金さん!」とマキが叫ぶ。彼の身体が止まり、リングに落ちていく。
45激闘 6/10  ◆Fu21OaZL.g :2005/06/23(木) 23:14:51 ID:rfRy5kye
「お願いだから、しばらく眠っていて」
パティは彼の落ちた方向に背を向けて、リングから降りようと身体を進ませた。
なるべく相手を傷つけずに、倒す方法。それは眠らせる以外に手はないだろう。
「えー、金選手が倒れたようですね。それではこの試合親を探して三千マイルの……」
「パティ!!ソイツはまだ……」
場外のアレックスから叫び声が上がった。それと同時に黒子の声が中断される。
「……!!!」
一瞬の沈黙。
宝貝、仁王剣。それが青い光を放ちながらパティの頭のちょうど真横に浮いていた。

「ここまで本気を出すつもりはありませんでした」

よろよろと空中で立ち直りにこりと笑う金。パティは振り返らない。
「これが私の秘密兵器である仁王剣です。これは私の意志により自由自在に変化します」
何の反応も示さずこちらも振り向かないので、金にパティの表情は窺えない。
「ルール上殺したら負け、それは承知しています。ですがそれは逆に死ななければいいというだけです」
口を開こうとしていた黒子が眼の端に見えたので、金はまるで黒子に言う様に言葉を続ける。
実際の所、極端に大きくしないという約束で持ち込まれている。その気になれば人一人真っ二つに出来る代物なのだ。
「どうしますか?負けを認めますか?それとも……」

ギイイイイィンッ!!

リングに鈍い音が響き渡る。
突如振り返ったパティを包む様に青白い光を放つ球体が現れ、仁王剣が弾かれる。
46激闘 7/10  ◆Fu21OaZL.g :2005/06/23(木) 23:22:52 ID:rfRy5kye
サイキッカーにだけ使える不可侵領域、バリアガード。
祈る様に眼を閉じたパティの表情は凛々しく、普段の可憐な雰囲気は其処には無い。
それを見た金は一瞬驚き、次に笑い、そしてギターケースを開いた。

「響いてえぇ!!!」
「手加減はしませんよっ!!!」
パティは歌う。金は引き金を引く。

音の波動と銃撃が空中でぶつかり合う。
互いに加減はしているが、それは普通の人間を基準にはしていない。
「……俺は悪い夢でも見ているのか?」
遥か頭上で繰り広げられる闘いを呆然と見ながらアレックスはそう呟いた。

金の放った銃撃は全て弾かれていた。
やはり仁王剣を弾く代物、拳銃程度では壊せないようだ。
実の所パティの音撃をある程度防ぐ為撃ったようなもの、故になるべく急所を狙わずに撃ったのだ。バリアが壊せなくても金は構わないのだろう。
牽制される様にパティの「音」が金に飛ぶ。
パティの唇から、新たに声が溢れ出る。
歌を奏でるのには楽器も理由も要らない、ただ思いさえあればそこに歌が現れる。
(……どうして?)
パティは優しく、柔らかく、そして歌いながら問うた。
先刻一瞬だけパティの頭に流れてきた思念、眼の前の道士が躊躇なく人を殺した記憶への疑問を。
(だけど私も、負けられない。負けたらお母さんに会えないから)

考えながら走る人、金大正。彼の思考ベクトルはこの戦闘でも変わらずにいた。
(この距離では距拳道で戦えない、武器は通用しない、ならば……)
遠・中・近、全ての距離に対応できる仁王剣。相手が悪霊やヤクザの三下なら遠慮なくそれで殺せる。だが殺してはルール違h……
47激闘 8/10  ◆Fu21OaZL.g :2005/06/23(木) 23:29:25 ID:rfRy5kye
「!?」
考えに夢中で、自分避ける方向に「音」が設置されていたことに金は気づかなかった。
放たれた新しい音、音と音との共鳴、それは闘いの歌となる。
鼓膜を、いや全身を侵食していく力の波動と化した歌。
「……ッ!?……」
『典雅さが足りないわよ』
金の脳裏に、彼が密かに胸をときめかせた女の言葉が浮かんだ。

「……痛いですね」
リングに這いずり宙の少女を見上げながら、金はそう呟く。
咎人の地べたすりにはお似合いなザマだと、少し酔った考えを抱きながら金は立ち上がる。
そして身体を浮かばせて考える。成る程これがサイキッカーの力、普通の悪霊よりも遥かに強力な力だと。
金は笑う。深みを増した穏やかな笑顔。相手の少女に向かって言葉をかける。

「何故、そんな悲しそうな顔してるですか」
「悲しそうな顔なのは、あなたのほうよ」

剣を手にした道士の問いに、パティはそう返した。彼女も金に少なからずダメージが与えられている。
この人を傷つけるよりも癒してあげたい、そう思いながらパティの歌が始まる。
音珠の輝きが、金の持つ仁王剣に反射され逆光を放った。

お互い、次で決着を着くことが分かっていた。
だからこそ、これが最後の攻撃だと決めていた。
48激闘 9/10  ◆Fu21OaZL.g :2005/06/23(木) 23:34:20 ID:rfRy5kye
大哉乾元。大いなるかな乾元の意。
精神統一、そして増幅の為の呪を口から紡ぎだす。

音珠が飛び、光り、辺りに広がる譜面達。
それはフィナーレとして相応しき救いの鎮魂歌。


そして、互いの力がぶつかった―――











力尽きて落ちてくる対戦相手。
手を伸ばし、受け止める。
受け止めた両手に体重がかかる。
「……ぅ」
生きている。自分も相手も傷を負ってはいるが死んではいない。生きているのだ。
これが単なる殺し合いだったらそうはいかないのだろう。その点を踏まえればこの舞台のルールに感謝するべきだろうか。
己の願いだけを賭けて正々堂々と闘えた相手に向かって勝利者はこう呟いた。

「貴女がお母さんに会えることを、私は心から願っています」
49激闘 10/10  ◆Fu21OaZL.g :2005/06/23(木) 23:40:26 ID:rfRy5kye


「…私は彼等に勝利するべきではなかったかもしれません」
「あら、どうして?」

一人呟いた金にマキは首を傾げながら尋ねてきた。
「マキさん、私はこの大会に来たのはもう一つ理由があります」
肉の裂け目の様な細い眼で遠くを見つめがら語る。
「この大会の優勝者には願いを一つ叶えることが出来る、そして願いを叶える為にたくさん人が集まります。
 その中にはまだ若い者達もいる、彼等がどんな人間なのか私は見てみたかった。未来を託される若者の姿を」
フッと笑いながら金は後ろを振り返る。
そこには先ほどの試合で戦った親を捜して三千マイルの二人が居た。
負けてしまった相棒を励ますアレックス。落ち込まずにどこか清清しく微笑むパティ。
半ば正当防衛とはいえ、かつてゴロツキ共を殺した金にはその光景は輝かしく映った。
「所詮私は罪人。出来ることはその未来を守ることだけです、彼らの夢を踏み潰す権利など無い」
「だけど踏み潰されなければ、その痛みも乗り越える強さも手に入らない。そのまま立ち直らなければそれだけの器。そうじゃなくって?」
「……なかなか手厳しい台詞を」
まるでふみこさんみたいな、と心の中で付け加える。
「せめて死した者のためにも、彼らには幸せな明日を迎えてもらいたいものです。……それが私の、もう一つの願いなのかもしれない」
「守りましょう、彼らの未来を。今日という日が何事もなく過ぎ去る様に」
長い黒髪を風に揺らしマキは歩き出す。それに続き薄汚れたコートを翻した金ももう振り返らない。
二人は次のステージへと向かう為、ゆっくりと歩いていった。

○頭文字K【ケンカ】親を捜して三千マイル●
50ゲームセンター名無し:2005/06/30(木) 10:14:40 ID:Y9ay9zp5
ほす
51ゲームセンター名無し:2005/07/03(日) 21:39:41 ID:cj2K+OmR
保守
52ゲームセンター名無し:2005/07/06(水) 21:42:50 ID:75X2nkHm
保守
53ゲームセンター名無し:2005/07/07(木) 23:18:09 ID:/Q9GV45w
保守
54ゲームセンター名無し:2005/07/09(土) 11:35:07 ID:9UVd5SBh
保守
55ゲームセンター名無し:2005/07/14(木) 18:33:37 ID:XWwDiHbL
もう誰もいないのか
56ゲームセンター名無し:2005/07/21(木) 18:59:45 ID:Up0goJW2
保守━━━━━
57ゲームセンター名無し:2005/07/22(金) 23:18:25 ID:pELiEd8p
保守
58ゲームセンター名無し:2005/07/30(土) 02:22:20 ID:HkqCBHuO
望みはすてないっ!まだいくぜ!
59ゲームセンター名無し:2005/08/03(水) 19:43:56 ID:g50V/Kjh
まだ保守
60ゲームセンター名無し:2005/08/08(月) 14:54:33 ID:GLsCzIl0
マジ質問ですが何で止まってるの?
61ゲームセンター名無し:2005/08/09(火) 22:50:57 ID:+P8f1m59
マジレスすると書き手がいないから
君が書け俺も書く
62ゲームセンター名無し:2005/08/23(火) 19:46:02 ID:21qCk/r5
やりなおしをまじめに考えたほうがいいと思うのだがどうか
63ゲームセンター名無し:2005/08/30(火) 23:59:32 ID:oFf41zD2
リセット
64ゲームセンター名無し:2005/08/31(水) 03:52:02 ID:u+nJjI+4
アケロワキャラだけでいいのに
65ゲームセンター名無し:2005/09/19(月) 21:26:42 ID:6BNPDiV0
ほしゅ
66ゲームセンター名無し:2005/10/08(土) 19:56:34 ID:zgcHbkTC
ここ再利用してもいいですか
67ゲームセンター名無し:2005/10/09(日) 02:09:41 ID:XV1wDqu7
どうぞ!頑張ってください!
矢吹真吾とデュオロンをヨロシク
68ゲームセンター名無し:2005/10/10(月) 05:24:59 ID:razSv9Ff
再利用ってどうゆう意味で?
69ゲームセンター名無し:2005/10/10(月) 14:20:59 ID:9C6sGOUK
番外リベンジってスレの話じゃね?
2週間近く経つのにレスが35しか無い時点で企画倒れの予感がひしひしと
70ゲームセンター名無し
読みたい奴らばかり
書きたい奴がいない