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ゲームセンター名無し:
キャラクターと背景と体力ゲージと残り時間と通常攻撃と必殺技と投げ技、
それが我々の全財産だった。
特別な技のためのゲージもなければ残りのガードを示すアイコンもなかった。
hit combo!という表示も明瞭な発音のボイスも、何一つなかった。
我々はそれくらいシンプルだった。
だからゲームの基本を理解するのに5分もかからなかった。
何も無いならないで、全てはすごく単純だ。
外に出るともう夜は終わっていた。
晩冬の闇だから、そんなには明るくはない。
上を見上げるとそれでも微かに星が光っている。
駐車場の車はその数を大分に減らし、それでも何台かは屋根の下に持ち主を待っていた。
僕は雨上がりの道を向かい道のコンビニまで歩き、コーヒーを一本買った。
明かりに照らされながら、僕は24Hのゲームセンターというものを初めてつくった人物について考えてみる。
何故だか、本当に何故だかその昔対戦が馬鹿みたいに当たり前だった時間を思い出した。
本当にそれは、馬鹿みたいに当たり前だったのだ。