ナコルルを家政婦として家にいたら最高だな

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389ゲームセンター名無し:2005/04/14(木) 18:29:23 ID:???
第六話〜せまりくる紫の鼓動・後編〜
あきれるほどに巨大な夕日が、西の空を染め上げる。
つい先まで、うずくまっているナコルルの小さな背中を照らしていた太陽。黄昏時の金色の光は、そも、彼女の細い影をどこへ映しているのか。

自分の家が確かにあった場所。彼女はそこにいた。変わらない姿勢で、土にまみれた服装で、ずっと。
唯一の変化は、大きく肩を上下させていた嗚咽も収まり、ただ無言で地面にうつ伏せていることか。
やがて夕闇が昼の鳥の歌声をかき消してゆき、夜風にフクロウの乾いた音色が溶け始める頃、ゆらりと、音もなく、彼女は立ちあがった。
カラスの濡れ羽のようなしなやかな髪が、穏やかな風にふわりとたなびく。
涙と埃で汚れた顔。アイヌ文様のあざやかな赤い刺繍もくすんでしまったが、別段それを気にかけるそぶりもなく、彼女はその場を後にする。乱れた前髪は顔半分を隠し、表情をうかがい知ることもできない。が、明らかに平常とは違う空気が漂っていた。

木々の間隔が広くなってくる。彼女は足を速める。依然として無言のままで。
森を抜けた瞬間、カムイコタン峡谷に出た。頭上には有名なつり橋がかかっていたが、彼女が見上げたのは、雲一つない空に昇りきった満月だった。
水がこぼれるが如く背中に流れた黒髪は、月の光を吸収して扇状に拡散する。
口の端を鋭角に結び、大空を注視する彼女。ナコルルとは思えないほど蠱惑で好戦的な視線を夜空に絡める。
その瞳に映る月は赤く染まり、妖艶に揺らめいていた。
390ゲームセンター名無し:2005/04/14(木) 18:31:32 ID:???
イランカラプテ!
>>384
>ムラナコは排除ですか
>>385
>レラとムラナコの共演

よし! 挑戦しようじゃないくわ!!
このまま消してしまうには、余りに惜しいキャラですよね・・・
391ゲームセンター名無し:2005/04/14(木) 22:00:32 ID:???
反ナコ親レラ派ののれのれ帝国に抗議しようぜ。
392ゲームセンター名無し:2005/04/14(木) 22:10:47 ID:???
のれのれの反ナコ主義者たちはナコルルを抹殺してママハハもレラのものにしたいらしい。

ttp://www.geocities.co.jp/Playtown/7209/
393366:2005/04/15(金) 02:25:59 ID:???
ああ・・・
俺の赤なこたんが、ムラナコに変貌してしもた・・・

ご主人様の愛で元に戻すしかないのか?
394ゲームセンター名無し:2005/04/15(金) 18:47:40 ID:???
第七話〜森の王者、危機一髪〜
「マズい。夜になっちまった。ホントならもうカムイコタンに着いてもいい時間なんだが…」
正直、こんなに遅くなるとは思わなかった。今風に言うと‘想定範囲内の想定外’だなっ。
……………忘れてくれ。
そんなことは置いといて、シクルゥの帰巣本能で道に迷うことはないものの、夜ってのは以外に移動に時間がかかる。真っ暗でスピードを落とさないと危ないし、思わぬ障害物に足をすくわれることもあるせいだ。
転んで脚でも折ったらそれまでだしな。それに、俺の愛馬もかなりキツそうだ。
「仕方ない……少し馬とシクルゥを休ませよう! 一旦休憩だ!」
やや離れた前方を疾走中のレラに叫ぶ。

とりあえず俺たち三人と忠実な二頭は、一列に並んで石狩川の水で渇きを癒した。水がうめぇ! っと、リムルルが俺の袖をクイクイと引っ張る。何だ?
「レラ姉様が、どのくらい休むのかって」
「う〜ん……せめて三十分以上は必要だな。一昼夜走ったようなもんだし。でも、できればすぐ出発したいんだよねぇ…」
それを聞いたレラさん。水飲んで仰向けに寝転がってゲフッ…とか弱ってるシクルゥにつかつかと近づいていったかと思うと、メンチきってこう言った。
「立ちなさい。まだ終わってないわ…」
いや違うからっ…っていうか姉さんペットに厳しいから!
あの森の王者シクルゥがガックリうなだれて、すがるような目でこっち見てるし!
だがその時だった。

ピイィーーー〜〜〜〜ッ!

聞き覚えのある鳥の声。あれは…ママハハだ!!
………シクルゥは安堵のため息を漏らしていた。

つづく
395ゲームセンター名無し:2005/04/15(金) 19:35:42 ID:???
シクルゥに厳しいレラ(;´ロ`) ハァハァ
396ゲームセンター名無し:2005/04/15(金) 22:56:32 ID:???
明日は休日だから、もう一本!


第八話〜空の王者は一味違うわッ〜
夜空を旋回する黒い影、あれは……ナコルルの愛鷹ママハハだ!!
…果たして奴はオオタカ? ハイタカ? クマタカ? はたまたイヌワシ?
グワシッ!!!!
「ご主人様! ママハハだぁ〜!」
シャレのつもりか? ママハハ。グワシッだと? だいいち、何で貴様は俺の頭の上に下りるんだ? 俺は貴様のご主人のご主人様なんだぞ。 ………つか、爪たてんな。
リムルルは嬉しそうに俺…もとい、ママハハへとかけ寄ってくる。
「ママハハ、いったいどうしたの? 姉様は?」
リムルルたちに再会できて奴も嬉しいのだろうか、ママハハは巨大な翼を広げ、一声甲高く鳴いた。
ピキーーーッ(さっさと行くぞ、ノロマ共がッ)

一人と一匹が熱心にやり取りしている。爪が食いこんで痛い。頭に空気穴なんて必要ねーぞ。早く終われ。
「ご主人様…何だか姉様がおかしくなってるみたい。突然苦しみ出したんだって……それで、ママハハはきっと私たちが姉様を追って来てるだろうと思って、知らせに来てくれたんだって」
ナコルルがおかしいのは知ってるが、『苦しみ出した』とは聞き捨てならんな。
「わかった、すぐに出発しよう。暗くて視界悪いのにありがとうな、ママハハ」
ピキャーーーーッ!(さ わ ん な や!)
背を撫でようとした俺の手を、くちばしで突っつくママハハ。
おい! すごい形相で俺を牽制するのはなんでだ!? イテテッ

「よし、行くか!」
仕度を終えた俺たち三人は再び従者にまたがって、前方を飛行するママハハの影を追って走り出す。
悪路だが、山沿いにふもとを縫うようにショートカットすれば、あと一時間くらいで着けるらしい。
もう少しだ!

つづく
397366:2005/04/15(金) 23:33:30 ID:???
くそお、ママハハめ〜
いや、ここは我慢してナコルルを探さねば。
398ゲームセンター名無し:2005/04/16(土) 18:04:56 ID:???
第九話〜到達! カムイコタン〜
誰でも目的を達成するまでの具体的な努力の量が分かれば、心も軽くなるってもんだ。
今の俺たちがそうだった。
カムイコタンまであと10分をきった。時折、ママハハは俺たちが見失わないよう声をかけてくれる。ママハハもきっと、主人のナコルルが心配でたまらないんだろうな…。
ピキョアアァァァ!!(見よッこのオレ様の華麗なる低空飛行ーーー!!)

山を抜け森を抜け、やや平らな道を走っている俺たちの目の前に、かなり険しい山脈が見えてきた。もしかして、あそこだな?
「…………」
レラも山脈に気づいたのだろう。こちらを振り返り、目で合図して伝えてくれた。やっぱりそうか。
「むふっ」
目と目で通じ合う二人の関係。照れちゃうね、こりゃ。
ママハハがグーッと高度を上げる。シクルゥもそれに合わせ、力強く大地を蹴る。ラストスパートだ!

弾丸のようにカムイコタンの森に突入した俺たち。木立の間を器用にすり抜けて走るシクルゥに何とかついて行くが、こういう地形は馬ではさすがにしんどい………ん? シクルゥが速度を落としたぞ。
「ご主人様。ナコルルの匂いを嗅ぎつけたようです…」
ヒアウィー号の目前まで距離を縮めたレラがそう告げた。
「でかしたぞシクルゥ! 今はお前が頼……」
ジロ、と横目を引っ掛けてきやがった。何でだ? ママハハといいシクルゥといい、俺が何を…………そうか、そうだよな。もとはと言えば、今回の出来事の原因は俺なんだよな。キツいこと言い過ぎて。
本当はあの後に『都会の学校に行って色々と学んで来い』って続けるはずだったんだけど、ナコルルが泣きながら部屋を飛び出して行っちまって(第弐話参照)、そのまま屋敷まで飛び出すなんて思わなかったんだよ。
「ごめんなナコルル。会ったらちゃんと謝るからさ。ごめんな………」

つづく
399ゲームセンター名無し:2005/04/16(土) 22:05:18 ID:???
俺読んでない
400366:2005/04/17(日) 01:32:59 ID:???
そうだよな。
ご主人さまが単にナコルルを解雇するわけないよな。

俺も謝るよ、ごめんな。
401ゲームセンター名無し:2005/04/17(日) 12:00:16 ID:???
三六六がいちいちレスを返してるのに藁た
402ゲームセンター名無し:2005/04/17(日) 14:54:34 ID:???
けっこうのびてきてるんだなw
支援
403ゲームセンター名無し:2005/04/17(日) 17:49:14 ID:???
わりと楽しみでもある
404ゲームセンター名無し:2005/04/17(日) 19:38:18 ID:???
第拾話〜現る〜
シクルゥが足を止め、ママハハはリムルルの肩に止まる。
着いた。ここにナコルルがいるはずだ。
「ねえさまーーー」
「ナコルル、どこだ!」
雲一つない夜、俺たちは月明かりを頼りに辺りを探す。
シクルゥがしきりに鼻を鳴らす。鷹は夜目がきかないから、頼みの綱はやはりシクルゥの嗅覚だ。
「ねえさま、いないよ…」
リムルルが不安そうにつぶやく。
「きっと見つかるよ。もう少し探してみよう」
大した自信などないが、そう言ってリムルルを勇気づける。暗いってのが、ますます不安感を煽るんだろうな…。
ワオオォォオオオン!
その時、シクルゥの歓喜に満ちた咆哮が、森に囲まれたこの場所でこだまする。
俺たちは一斉に声の主を振り向き、その視線の向かう先を追った―――――
「遅かったわね……待ちくたびれたわ…」
ドンッと、重い一撃をみぞおちに打たれたような……そんな感覚だった。
俺たちの視線の先…ここからやや離れた吊り橋の上に、誰かがいる。
月の光は向こう側から照射されているため、その姿は墨で塗りつぶしたように黒い。あれがナコルル?

タン…と軽やかな音と共に跳躍し、見事なまでに満月を背負う黒い影。
崇高なる美……その光景には誰もが息を呑んだ。
音もなく大地に下り立ったその影は、ゆっくりとこちらへ向かってくる。
ふと、レラが本能的に身構え、ご主人様もそれに気付いた。相当の腕を誇るレラが危険を察知した以上、油断は禁物だ。リムルルもぴくりとも動かない。
やがてその人物が目の前に立ち、瞳を隠していた長い前髪を払った。
「ナコルル……だよな?」

つづく
405ゲームセンター名無し:2005/04/17(日) 20:14:20 ID:???
ムラナコが凄い事になってるなw  でもカコ(・∀・)イイ!!
406366:2005/04/17(日) 23:47:24 ID:???
あわわわ。
誤解したままだから怒ってるのかな?
407ゲームセンター名無し:2005/04/18(月) 19:55:34 ID:???
第拾壱話〜ご主人様、撃沈〜
勝気な目、自信に満ちた口元…その顔をやや上向けながら、シクルゥ、俺、と順番に視線を移してゆく。やがてリムルルで目を止めた彼女は、ふっと、表情を和らげた…気がした。
「随分久しぶりねリムルル。まさか、忘れてなんかいないわよねぇ?」
普段のナコルルとはまったく異なる口調。声質はよく似てはいるが、やや、つやのある感じがする。
「ねえ…さま………えっ! も、もしかして……ムラナコ姉様!?」
「そうよ。あ・た・し」
「ああっねえさまーー!」
一目散に走り出すリムルル。肩に止まっていたママハハが驚いて飛び立った。
「ピイィッ」(バカな! こんなことが…!)
リムルルが彼女に抱きつく。マジかよっ!? ムラナコって誰よ!? 何がどうなってんの???
彼女の胸に顔を押し付けて号泣するリムルル。俺は呆然とその光景を眺めるしかない。
「なあ、レラ。………あれナコルルだよな?」
だが、レラは厳しい目で、ムラナコと呼ばれたナコルルそっくりな少女を見つめている。
返答が来ない、というか話しかけてはいけない雰囲気らしいので、仕方なく目線を戻す。と、その瞬間に俺は凍りついた。

「ふぅん…あなたが例の‘ご主人様’?」
バキュゥゥゥン!!!!
すっっっっげぇ色っぽい!! こんなの初めてだわ。一言でやられた! うわっ視線で大追討ちかよ!?
「よくもナコルルを解雇してくれたわね。それ相応の仕打ちを覚悟してもらうわよ」
その言葉の意味とは裏腹に、彼女の口元は静かな笑みを絶やしていない。のだが、
「えええ゙っ!! あの……あれ、あの〜……ナコルル…じゃないんですか?」
こっちはダダーッと冷や汗が出てきて、まともにロレツが回らない。混乱と恐怖と色気のトリプルパンチは強烈過ぎる。絶対健康によくない。
「ナコルルは眠っているわ。あたしはムラナコ……あなたの隣にいる人と同じ、もう一人のナコルル」
隣? レラ…?
俺はますます混乱した。

つづく
408366:2005/04/20(水) 02:41:32 ID:???
ご主人様、気が多過ぎだ。

・・・ああ、なんかおしおきされそうだ。
409ゲームセンター名無し:2005/04/20(水) 03:18:56 ID:???
バキュンにワロタw
レラとムラナコってどっちが美人なんかな
410ゲームセンター名無し:2005/04/20(水) 18:40:05 ID:???
>レラとムラナコってどっちが美人なんかな
ムラナコに一票! レラのファンには殺されるかもしれんが・・・


第拾弐話〜邂逅一夜・前編〜
「はじめまして、よね。レラ姉さん」
何の前触れもなく明かされた真実。単にナコルルたちを家政婦として雇っていただけのご主人様が知る由もなかったことは、無理もない。
愕然としてレラから視線を離せないご主人様を流し目に、レラはポツリポツリと話し始めた。
「そう…私と彼女とは姉妹のようなもの。ご主人様、今までは黙っておりましたが、彼女は…ムラナコは確かにナコルルの別人格……そして、私も……」
「…そんな、俺なにも…っていうか、今もよく分からねえけど……話してくれたって、よかったのに!」
「…必要のないことでしたから………」
レラの心から済まなそうな様子。ご主人様とて怒るつもりなど毛頭ないが、やるせない気持ちは拭い去れない。だが、それよりもナコルルは今どうなっているのかということも方が、事態を理解するよりもずっと大切なことのように思われた。
「じゃ、じゃあ…とにかくナコルルは今どこにいるんだ?」
「ここよ、あたしの胸の中。あの子の心が重圧に耐えられなくなる前に、あたしが無理やり眠らせたのよ」
「重圧って…そうだ! ナコルルが苦しんでるってママハハが…」

取り乱して矢継ぎ早に質問を投げかけるご主人様。対照的に、余裕を持って応えるムラナコ。
「そう、苦しんでしまった……。カムイコタンなんかに戻って来てしまったから………。あの子は本当のことを知らないままこの時代で目覚めたから、この土地を、故郷の虚ろな跡地を見て混乱してしまったのね」
なんだって? 本当のこと……転生? 故郷の………わけ分かんねぇよ!
「あの子は長い間苦しんできたわ。もう十分すぎるほどに。……だから、もう………」
まるで風にそよぐ竹の葉のようにかすかな呟き。ムラナコの黒い瞳はご主人様を映しながらも、背後の暗い空よりも遥か遠い向こうを見ているようだった。

つづく
411ゲームセンター名無し:2005/04/21(木) 00:00:35 ID:???
いよいよ大詰めになってきた感じだな
412366:2005/04/21(木) 01:09:26 ID:???
ううう。
赤なこたん、帰ってきてくれ〜
413ゲームセンター名無し:2005/04/21(木) 17:48:49 ID:I4p8PjNf
俺はボブナコに一票! ・・・他にいるかな?(´・ω・`)

というかうまいな〜 なんかそういう仕事やってる人?
414ゲームセンター名無し:2005/04/21(木) 20:12:18 ID:???
イランカラプテ!
言われて気付きましたが、確かに赤ナコの出番少ない…ナコスレなのにorz
もうちょっと待ってて下され…。

>>413
有難うございます。
いや、全然仕事とは関係無いんです。
何となく長編を書き始めたらノッてきたような状態で。
415ゲームセンター名無し:2005/04/21(木) 20:20:55 ID:???
第拾参話〜邂逅一夜・後編〜
「この平和な時代で明るいナコルルしか見ていないあなたには想像もできないだろうけど、あの子は心に暗い闇を抱えて生きてきた……血で血を洗う戦いと、定められた宿命とを、胸の奥底で否定しながら……。
やがて、戦いを否定する心は初めにレラ姉さんを生んだわ。そしてあの子のもう一つの深い傷…巫女としての一生から逃れたい心が、このあたしを生み出したのよ」
理解するよりも先に、次々に疑問が浮かび上がってくる。が、感覚的にだが、少しずつ噛み砕ける部分が増えてきた。
ナコルルの意識を眠らせ、現在彼女の体を乗っ取ってるのが、このムラナコなのだということ。
レラとムラナコは、ナコルルの負の感情から生まれたのだということ。
すべてが検証しようのない話だが、ご主人様にとって、この状況では論理を超えて飲み込むしかなかった。じゃないと、混乱で頭が割れてしまいそうだ…!
「これまでの話は、屋敷でナコルルを楽しませてくれていたお礼。ずっと見ていたけれど、あの子はとても楽しそうだったわよ。ありがと、じゃあね」

だ、ダメだ。このままじゃ話が終わっちまう。なんか、ないのか………
「だ…駄目だ! 俺は……ナコルルに謝んなきゃいけないんだ。その……ナコルルが苦しんだっていうのも、多分俺のせいなんだ! キツいこと言って、苦しませたから……」
フッと目を細めるムラナコ。伝わったか…?
「残念だけど、謝ろうにもナコルルはもういないわよ」
「えっ…!?」
「あたしはもう二度と、あの子を目覚めさせない……」

見えない衝撃がこの場の全員を突き抜ける。人語を理解するママハハ、シクルゥの動揺。ご主人様は全身に震えがくるのを感じた。
そして、この瞬間に、この場で展開に呑まれない人物が一人だけ存在した。
レラが、動く。

つづく
416ゲームセンター名無し:2005/04/21(木) 21:00:14 ID:???
非常に非常に気になるとでつづき〜?
417366:2005/04/21(木) 23:43:25 ID:???
ヤダヤダヤダ、目覚めないなんてヤダー!

むう。
ムラナコを何とかしないと・・・
418ゲームセンター名無し:2005/04/22(金) 00:36:12 ID:???
どんなラストになるかが気になります
419366:2005/04/22(金) 00:42:39 ID:???
ご主人様がどうなろうとも、赤なこたんだけは元に戻って欲しい。

・・・ああ、俺は死ぬのか?
420ゲームセンター名無し:2005/04/22(金) 20:46:36 ID:???
いらんからぷて。
本編で赤ナコが出てこないので、ちょっと短編を・・・
単なる日常の風景なので、軽く読み飛ばして下されぃ。

>>419
いや、死ぬことはないと……多分(笑)
421ゲームセンター名無し:2005/04/22(金) 20:50:15 ID:???
短編〜ナコルル@ある日の朝食〜
「今朝は味噌風味のラタシケプを作ってみました。どうでしょうか……」
ちょっと頬を染めながら、ナコルルがニコニコしながら鍋をテーブルに乗せる。いい匂いだ。
囲んでいるメンバーは俺、リムルル、レラ、ママハハ、シクルゥの三人と二匹。この屋敷では人も獣も一緒の食卓につくという、極めて先進的で自由平等な――――――って、んなワケあるか! ボケがッ!!
「おい! ここは屋敷の中だぞ! 獣と書いてケダモノと読むお前らは、おとなしく庭でヒアウィー号と一緒に昼寝でもしてろ!!」
ピピッ?(ケダモノだと! 人語を解するケダモノがいると思ってるのかワレ!? 待遇の改善を要求する!!)
アオッ(オレら、レラ様たちの従者だぞッ? そげなこんどオメに言われる筋合いはネッ!」
二匹は喧々と不満を主張したが、ご主人様は聞く耳を持たない。
「ママハハ、ごめんなさいね。ちょっとだけ庭にいてくれる? 後でご飯持っていくから…」
「シクルゥ……(キラッ)」
優しくなだめられて仕方なく飛び去るママハハと、なにやらビビりながら出ていくシクルゥ。
しかしあれだな。飼い主を選べないってことほど、ペットにとって不幸なことはないよな。
「…なんでしょうか?」
「いや別にッ」
危ねえ…目が合っちまった。でも、こんな感じでご主人様である俺には丁寧な口調だけど、レラってどんな風にシクルゥをしつけてんだろ。いっつも眼殺してるように見えるんだよね……厳しいのかな?
あ、でもレラ自身はシクルゥが大好きらしいんだよな。なるほど…好きな相手には厳しい態度を取るのかも。ということは、もしかして、今ハヤリのツンデレ? ツンデレタイプ??
やっぱ心を打ち解け合って仲良くなるに従って、デレデレしてくのかね…。こりゃ萌えるね。うふっ、ぐふふっ……。
「はっ!?」
なんてお約束な…よだれ出てるよ俺! こんな場面、読者は望んでないっつーの!

「さて……いただこうか」
何事もなかったように進行する俺。まずい雰囲気の時にはこの方法に限る。
「そ、そうですね。どうぞ、召し上がってください」
心持ち口元が引きつり加減だが、ナコルルも同調し、鍋の蓋をパカッと開けた。
422ゲームセンター名無し:2005/04/22(金) 20:54:12 ID:???
「……なんだこれは?」
ナコルルを含め、四人分のラタシケプが満たされているはずの鍋は、ほとんど底が見えそうなくらいに量が少ない。メシが少ないってことほど寂しいこともない。俺んち、こんなに貧乏だったっけ?
「ねえさま…少な過ぎるよぉ…」
「……………」
喜色満面で鍋を凝視していたリムルルの顔が、見る間に涙がちょちょぎれる。
レラは相変わらず無表情だが、俺には分かる。いつもより髪の毛二本分くらい、片眉が下がっている。残念と困惑と怒りがほどよくミックスされた、微妙にナコルルを責める無言の意思表示だ。
「あの…実は……」
ナコルルがうつむきながら、上目遣いで説明する。
そんな表情に騙されはせんぞぉ〜〜〜…………………ぅ。
「味見してたら、その…つい、たくさん……うっかり」
食が進んじゃったのかよ!
う っ か り ナ コ ル ル かよ!!!!

ところ変わって屋敷の玄関。
「す、すぐ材料を買ってきて作りなおしますからっ」
「うむ、行って来い。みんな待ってる」
「はい、十分で戻ってきますから」
十分? 十分だと? ここは札幌とはいえ郊外だ。スーパーまで少なくとも徒歩十五分の距離だ。
はっ! まさかママハハ……ママハハを使役するのか!? だが、ママハハはいないぞ。
キョロキョロと怪しげに辺りを探す俺に、ナコルルは言った。
「それじゃ、ご主人様。危ないですから、ちょっと下がっててくださいね」
下がってろ? 一体なにをするつもりだ?
とは言え、彼女のアブナイ・スピリッツを舐めるのは命にかかわる。俺は素直に数歩下がった。
「じゃ、行って来ます」
なんとナコルルの体が黄金に光りだし、次の瞬間…
ドシュウウウ ウ  ウ   ウ     ウ         ウ             ウ
ジェット機も顔負けのテイク・オフ!
マジかよ…。呆気にとられて口を開けたまま、既に青空の黒い点になっているナコルルを眺める。
「レラムツベって、こういう使い方もあるんだねぇ…」
423366:2005/04/22(金) 21:02:32 ID:???
そ、そうか!
強レラムツベの飛距離って随分あるからねえ。

でも、着地硬直が心配。
道路の真ん中に降りたりしたら・・・

それにしても、ナコたん、うっかり過ぎ。
424413:2005/04/22(金) 21:21:30 ID:???
414>>
毎回楽しく読ませてもらってる読者の一人です(・∀・)
職業関係の方じゃなかったんですか。 それにしてはうまいですね〜





・・・というかレラムツベってこういう使(ry
425413:2005/04/22(金) 21:22:26 ID:???
ミスった ○| ̄|_
426ゲームセンター名無し:2005/04/23(土) 20:20:31 ID:???
イランカラプテ!
>>366
>道路の真ん中に降りたりしたら・・・
畑の真ん中にズモッ…というのを考えていました(笑)
この短編、いつかもう2話ほど書き加えてみましょうかな。

>>413
そう言っていただけると、意欲も倍増します。
この作品もいよいよ大詰め。残りも楽しんで下されば嬉しいです。


それでは、本編に戻ります。m(_ _)m
427ゲームセンター名無し:2005/04/23(土) 20:27:50 ID:???
第拾四話〜開戦! 紫風円舞・序〜
「…待ちなさい。このままナコルルを封じようとでも言うつもり?」
風もなく音もなく、己の影のみを連れて一歩を踏み出すレラ。
ムラナコも油断なく、その切れ長の瞳で彼女を射抜く。
穏やかな口調。しかし常の雰囲気とは一線を隔す。それはもはや単なる質問ではなく、明らかにムラナコを威圧するための声音を含む。
「封じるんじゃないわ。何も考えることなく、眠り続けるのよ」
「ナコルルを眠らせて、結局あなたが自由になりたいだけじゃない。好きなように生きるために」
「ええそうよ。でも、あなたもナコルルを愛しているんでしょう? だったら、見たくもない真実を見せるよりも眠らせてあげた方が、あの子にとって幸せだと思わない?
 …………もちろん、あたしにとってもね」

半ば嘲笑を加えた返答に、レラを軸とした空気が張り詰める。
崩壊を待つ、ヒビ割れたガラスの館の中にいるような危うい一瞬。冷たい夜風はけっして和むことのないこの両者の衣を吹き翻し、カムイコタンの山々は深深と、いずれにも干渉することなくたたずんでいるのみ。
時の経過に比例して、二人は相手への憎悪をつのらせてゆく。
初めから、そうなる二人だったかのように。
そう結果付けられていたかのように……。
そして、嵐の前の寂とした平和は今、レラの言葉によって、明白に終えられた。

「それなら、私はナコルルを力ずくで目覚めさせる…!」
全身にゾクッ…と寒気が走る。首の根の芯まで来る震え方だ。
俺はこの時ほどレラを恐ろしく、同時に頼もしく思ったことはなかった。俺の側に立ってくれているのかは分からないが、とにかく彼女はナコルルを目覚めさせようとしている。俺の代わりにムラナコへ当たってくれている。
情けない話かもしれないが、震えて言葉を出せない代わりに、俺は心の中でレラを応援していた。
「あはははは!」
白い喉をあらわに、甲高く乾いた声で短く笑うムラナコ。言うまでもなく、あちらも迎え撃つ気迫は充分らしい。
腰の得物の柄に軽く右手を添えたムラナコは、夜叉と形容するに相応しい表情を見せる。
「おもしろいわねぇ………いいわよ、楽しませてもらうわ。レラ姉さん!」

つづく
428366:2005/04/24(日) 14:40:18 ID:???
レラ、がんばれー!
俺にできるのは応援することだけだー!

赤なこたんが、この争いをあとで知ったらどう思うかな。
リムもどうしていいかわからず、おとなしいのか。
429ゲームセンター名無し:2005/04/24(日) 15:03:40 ID:???
また家政婦に戻れるかな…
430ゲームセンター名無し:2005/04/24(日) 19:51:19 ID:???
第拾五話〜開戦! 紫風円舞・破〜
タッ…!!
互いの宣戦布告を終え、反発する磁力のように引き込む両者。
レラの得物は、長さ約一尺ほどの抜身の短刀、宝刀・チチウシ。
ムラナコの細腰にも同じく、雪とみまごう白刃を鯉口から覗かせる、宝刀・チチウシ。
修練の妙は、シカンナカムイ流刀舞術!
およそ二百年の時を経て、睨み合うこの場所を得たムラナコとレラ。鳴りを静めてじりじりと間合いを殺す胸の内には、いかなる感情が宿っているのか…。
赫々たる精悍の気、爛々たる双眸の光は、敵の急所を見据えたまま、飛んだ…!

金属の悲鳴が耳朶(じだ)を貫く――――――
流線を描いて鞘から跳ねたムラナコの抜き打ちの一刀を、沈み込んだ体勢から鮮やかに払い上げたレラ。
最初の一撃を優にかわし、鋭い踏み込みから神速の連ね斬りを叩きこむ!
まだまだ直線的な攻勢。
ムラナコもまた、言わずと知れた実力者である。そのすべてをさばき切る余裕の含みを見せつつ、レラを呼び込むべく円を描いて後退を始める。
相手の好位置に誘導させられることを恐れたレラが小手を返す。と、忽然、ムラナコが逆襲に転じた!
利き腕からの閃光は、天地、左右に、自在に伸びる。
長い衣の裾は一陣の薫風を巻き起こし、ムラナコは舞い踊るように妙技を尽くす。

やや劣勢か…と思う間もなく、レラは素早い受け流しを見せ、繰り出される無数の切っ先を縫ってムラナコの顔を目がけて反撃の突きを放った。
強攻に臨んでいた勢いの彼女にとって、これはまさに不意の一撃。払い落とす暇もなく、無理に避ければ体勢を崩し、後続の追撃を許してしまう…。これらをすべて見越したレラの絶妙の一刀を、ムラナコは避けた。
いや、正確にいえば地面にペタンと突っ伏したのだ。と同時に、間髪を置かずして、なんと超低姿勢からレラの足首を飛ばすべく突進してきた!!
(アンヌムツベ……ッ!?)
間一髪で上空へと逃れたレラは、驚愕の色を隠せなかった。

つづく
431366:2005/04/25(月) 01:25:17 ID:???
この勝負、レラが不利か。
レラには必殺技がない!(安直)

ご主人様は、このまま見ていて良いのやら。
432ゲームセンター名無し:2005/04/25(月) 19:22:27 ID:???
そもそもアイヌ姉妹をメイドとしてはべらす、このご主人様は一体何者なのか?
433ナコルル ◆gMC7HxBy/Q :2005/04/25(月) 19:58:21 ID:???
私のスレなのに違うキャラが出張ってるわね。
434ゲームセンター名無し:2005/04/25(月) 20:02:50 ID:???
第拾六話〜開戦! 紫風円舞・急〜
手練れには、二種類の人間がいる。己の力を見せつけて誇る者と、ただひたすらに押し包む者。
後者である二人の覇気は静寂な湖水の如く、さざなみ一つ立てずに粛々と剣気を練る。
――――――今、
二人の美しき剣豪は呼吸一つ乱すことなく、やや離れた距離に身を落ち着かせ、再度、好敵手と呼ぶに相応しいこの目前の強敵を推し量っていた。

本来ムラナコはアンヌムツベを体得していない。姉妹共通の流派であるシカンナカムイ流刀舞術において、使うべき「時」を最重視されるこの奥義は、ナコルルをおいて会得した者はいないはず。
「…あなたがナコルルの体だということを忘れていたわ」
「狙っていたんだけど、さすがと言うべきかしらねぇ」
その会話の終わるや否や、今度はレラが先手をかける。
「ふうぅっ…!」
どちらの呼気か…この猛烈な手数の応酬の中では計るすべもない。
まさに‘刀舞術’ ……互角に渡り合う両者は疲れを知らず、時の経つほどより苛烈に、より華麗に磨き上げられてゆくこの競演は、見る者をして陶酔の境地へと至らしめる。
すげぇ……と、ご主人様は素直に見とれてしまっていた。
彼だけではない。リムルルたちは言うまでもなく、太古からこのカムイコタンを眺めてきた深山幽谷も……失われた時代では頻繁に繰り広げられながら、今はもう絶えて久しい至高の美の興宴を、じっと刮目していた。

その先に待つ決着というものを、忘れてしまう。
この秀麗な剣劇が、血生臭い命のやりとりの手段なのだということを、すっかり忘却してしまっている…。
そんなご主人様の意識を引き戻したのは、ママハハだった。
「ピィッピ!」(オラッ、ぼーっとしてないで目ぇ覚ませや! ボテクりまわすぞ! うらうらぁ!!)
「イテテテッおい! なんだなんだ!?」
「ピキィッ!」(ボサッとしねえでオレ様に協力しろタコナスがッ。 いいか、まず……)

つづく
435366:2005/04/26(火) 01:19:53 ID:???
ついに来たぜー!
ご主人様の出番が!!

>>433
おお、ナコルルが降臨!
436ゲームセンター名無し:2005/04/26(火) 22:06:16 ID:???
第拾七話〜救出策〜
「ピピィ」(まず、二人を止めねばならん。オレ様とシクルゥと……聞いとるのか!?)
「ちょ、ちょっと待て。リムルル! リムルル〜ッ」
ぽわ〜っと戦いに魅了されていたリムルルが、はっとして駈けてくる。
「リムルル、ママハハがキレてるんだが…なんだって言ってるんだ?」
ママハハの鳴き声に耳を傾け、ふむふむと頷くリムルル。立派な通訳になったなぁ。
にしても、鷹語? ピーだのピャ〜でよく分かるもんだ。ニュアンスじゃなくて、論理的に日本語化しちゃうんだから凄い。こういうのってフィクションの世界だけの話だと思ってたけど…………あれ?
これ以上深く考えるのはよそう…と思うご主人様だった。
さて、くいくい…と袖を引っ張るリムルルを振りかえり、俺はママハハの言いたかったことを聞く。
なるほど…。このまま戦わせておけば、どちらかが命を失う危険がある。だから、なんとかして二人の戦いを止めるんだな、俺が。
……え? お れ が!?
「待て、俺を殺す気か? 六枚ぐらいに卸されちまうのを黙って見てるつもりくわ!!」
「ピキィッ」
「『落ち着け小僧。クールでマグナムドライなオレ様とて、そんな無慈悲なことは言わん。ちゃんと策があるわ、安心しろや』だってさ、ご主人様」
とリムルル。策…ねえ。なんだか心もとないが、じゃあその策というのを聞こう。

「ピッ」(さて、オレ様の出番だな…。覚悟はいいか、野郎共)
時間にして約二分。リムルル、シクルゥ、俺の三人は、ママハハの言葉に従って心の準備を整えた。
ナコルルを目覚めさせ、あの二人の戦いを止めるというママハハの考えた策。それは成功する確率の極めて低い話に思われた。が、それ以外に思い浮かぶ良策などない。賭けるしかなかった。
ナコルルが目覚めるのなら、どんなことだってやってやる!!
これが今の俺の率直な気持ちだ。俺たちがここに来たのも、ただナコルルに会いたかったからなのだ。

翼を広げて一声を放ち、天高く舞い上がるママハハ。
それを合図にリムルルが睫毛を合わせて空に祈りを捧げる。
もう後戻りは、無しだ。

つづく
437ゲームセンター名無し:2005/04/27(水) 00:23:23 ID:???
さぁ盛り上がってまいりました
438366
一体、どんな策なのか!?

やはりナコルルに会いたいから頑張らないとな。