(略)
―ピッポの泣きのシーンについてお願いします。
原画は浦上さん(注6)という方が担当してます。
どうしてもここでのび太とピッポの心のわだかまりみたいなものをといておかないと後々の流れがスムーズにいかないな、
と思ってこのシーンを描きました。ピッポ役の声優さんを決める時も、
私が前に小林さんとご一緒した「ふぉうちゅんドッグす」(注7)という作品があって、
その作品での泣きの演技が素晴らしくてそれが頭に残ってたんです。
それで私がプロデューサーさんに「小林由美子さんがいい」とお伝えしたら、やってもらえることになりました。
思っていた以上に素晴らしい演技で泣かされちゃいました。
色も背景もきれいな感じにしていただいて、私的にも気に入っているシーンです。
(略)
―予告編ではクライマックスらしきシーンでしずかとのび太が「リルルーっ」「ピッポーっ」と絶叫していて、
また叫ぶのかな、と思っていました。本編での反応が意外にもあっさりしていて、良い意味で裏切られたと感じました。
あの二本目(注8)の予告は演出の山岡さんという方に作っていただいたんですけれども、
予告って(制作工程上)コンテが上がる前に作らないと間に合わないものですから、
シナリオを元に膨らませて別進行で制作されるんです。
これに、予告会社さんの「こういうカットを入れてくれ」などの注文も加わりますから、どうしても本編とは変わっちゃうんです。
まあ、予告と本編では、役割も違いますから、見せ方が違って当然なんですけども。
なにしろ短時間で(お客さんに)アピールしなければならない訳ですからね。
私の好みとしては、あまりそういう悲しいシーンで叫ぶとか、すごく盛り上がらせるというのよりは、
静かに、逆にあっけないぐらいに終わらせたいっていう好みがあるんです。
これは自分が師匠だと思っている、「ペリーヌ物語」とか「あらいぐまラスカル」とか、
名作劇場をやっていらした斉藤博監督の影響で。
斉藤監督はあんまり悲しいシーンをアオらないで、すごくあっさりと描くんです。
それを「あ、いいな」と思って。それで本編ではああいう形にしました。