516 :
超夢銀漢王:
遅くなりましたが昨日のライズXのティーチインの内容、簡単にまとめました。
今回は録音もされていたようなので後日TOKYO-FMで聴けるという話も
あって、実際聴いてみたらいかに私のまとめ方が適当か分かってしまうかも
知れませんがw
9連投くらいになるかも知れません、毎度のことで申し訳ありません。
(1/9)
まずは直前まで収録していたラジオの話題から。
「TokyoFMはもちろん初出演だったんですが、下調べとか全然
しなかったので何の話をすればいいんだろう?って状態だったん
ですが、実は電車特集だったらしくて。
いいのかなあと思いながら『夕方の電車は綺麗ですよね』と
いうようなことを話してきました」
「実はまだデジタル版の上映を観ていないんです。
作っているときは、もちろん静止場面というのは微動だにしない
わけですが、フィルムに落とすと、止まっている場面でも微妙に
動いているわけで、それがなんだかフィルムが生きてるみたいな
感じがしてあれはあれで良かったです。
ただ、作っているときに意図していた映像というのはこちらで
観られるものが一番近いです。
HDメディアの発売というのも御要望は頂くんですが、これが
スパイダーマンみたいなビッグタイトルだったらペイするんですけど
まだまだうちのような小さな会社では商売にならなくて。将来的には
出したいと思いますのでお待ちくださいとしか言えません」
517 :
超夢銀漢王:2007/06/13(水) 04:02:30 ID:fr+lXezn
(2/9)
−一話の花苗を自分に重ね合わせている子が身近にいるんですが
一言お願いします。
「花苗も貴樹もそうだが初恋に限らず誰かに寄せた思いが叶わない
ということはあると思う。あとになって思いが叶わなかったから
不幸だと思ってしまうのではなくて、そのときそれだけ強度の強い
思いを持てたことを幸せだと思えるようになるといいですね」
−作品の終わり方がテーマソングに引きずられたということはないか
「確かに山崎まさよしさんの歌を使うことになったのは作品を作り
はじめてからなのだが、それは歌詞の内容が作品に合っているから
という理由もあったので、本来予定していたストーリーに影響が
あったということはない」
−つまり貴樹も明里もお互いに思いを残しているということ?
「明里についてはそのあたりは曖昧な表現にしているが、貴樹に
ついては、まあ、そういう部分が少しあると思う」
−映画で一番心を込めて描いたところは
「難しいが、作り始めたばかりの頃に描いた桜並木のシーン。
あとはまあ、鹿児島での挨拶では『種子島のところです』と
答えたりしてたんだけど(笑)
作画に限らなければ、色彩設計にはかなり力を入れた。
普通の作品よりも細かく行っていて、ここまでしている作品は
他にはあまりないのではと思うくらい。
一例としては、二部で花苗が白いシャツを着ているけれど白と
言っても同じ色のシーンはほとんどないくらい。カットごとに
変えている」
−なぜハッピーエンドでなかったのか
「この終わり方が幸せだとか不幸だとかということは作っている
ときは実はあまり意識していなかった。
観て頂いて言われてみて、ああ、不幸なのかな、と思った感じ。
最後、電車が通り過ぎたあとに明里がいなかったことは悲しい
ことかも知れないけれど、貴樹がこれから人生の新しい一歩を
踏み出そうとしているところで、あそこで明里が待っていたら
時間が巻き戻ってしまうというか、元に戻ってしまうような気も
する。そういう意味で、待っていなかったことは良かったのではないか」
518 :
超夢銀漢王:2007/06/13(水) 04:04:12 ID:fr+lXezn
(3/9)
−この作品は10本ほど短編のプロットを書かれたうちの3本と
伺っているが、没になったプロットの中には、高校時代の
明里の話などもある?
「10本のプロットすべてが貴樹や明里たちの話というわけでは
なかったので、高校時代の明里と彼氏の話のようなものは元々
考えていなかった。特に明里を想定したプロットはない。
他のプロットとしては、例えば猫が夜な夜な集会をしている
けれどもそのとき猫はどんなことを考えているのか、みたいな
話もあった。人間が最近調子に乗っているからということで
人間虐殺計画を立てるのだけどそれを止めようとする小学生の
女の子の話、みたいな荒唐無稽な話だった。
そうしたプロットのうちの一つとしてDVDの特別限定版のブック
レットに、比較的この作品とテイストの近いものを収録して
いる。
ただ、この前読み返してみたらそのプロットが昔描いた『塔の
向こう』というマンガにそっくりなことに気づいてしまった(笑)」
−風景をデジカメで撮影して参考にしているということだが
普段から撮りためているのか
「東浩紀さんとの対談が掲載されている『コンテンツの思想』
という本があるのだが、それは2003年頃に収録された対談なの
だけど、その頃は確かにそういうやり方をしていた。
今回の作品では撮りためた写真よりは、ロケハンを組んで
写真を撮ってきているので、これまで撮りためた写真は三話の
東京の風景のところに一部使っているくらい。
去年までは、ちょっと出歩くときにデジカメを持ち歩いていて
素材を撮りためたりということをしていたのだけど、今年に
なってからその揺り返しが来たのか、デジカメを持ち歩かなく
なってしまった。その分、美しい風景を頭の中に記憶しておこう
という気持ちになっている」
−SPECIAL THANKSにプロのカメラマンの名前があったが、そういう
方の写真を使うこともあるのか
「あの方はサイゾー誌で子供の時間?という連載記事をもって
おられる方なのだけれども、貴樹の部屋を描くときにディティールの
参考としてその写真を使った。
で、許可をもらおうかという話をしていたところで、美術の
馬島さんが実はそのカメラマンの方と友達だということが分かって
SPECIAL THANKSとして入れさせて頂くことになった。
なので、プロの方がロケハンに同行されるといったことはない。
ロケハンでも写真は大体が自分で撮っている」
519 :
超夢銀漢王:2007/06/13(水) 04:05:40 ID:fr+lXezn
(4/9)
−今回のデジタル上映と、他の劇場のフィルム上映で比較して
フィルムになったときに元よりイメージが膨らんだ部分というのは。
「第一部の岩舟の雪の原野みたいなシーンなどは、フィルムだと
実際の意図した絵より奥行きがあるような感じがして良かった。
あとはディティールが見えすぎないという意味ではフィルムが
良い部分もある。その辺(ディティールがどれだけ見えるか)は
コントロールしているつもりなのだが、フィルムで見て、過剰に
描きすぎていたかもと思わされた」
−貴樹が高校卒業して上京したとき両親はまだ種子島に残っていたのか
貴樹はあのあと種子島に戻ったことがあったのか
「貴樹の上京は進学ということなので両親は島に残っているだろう。
上京したあと島に戻ったかという点については……そこを話として
まとめようとは思わなかったし、その部分が設定として必要と思った
こともないので、好きに想像して頂いて構いません」
−彼女と彼女の猫から一貫して共通して登場するモチーフがある。
セミの声とかストーブの描写とか……これらは意識しているのか
「どちらも気がついたら入っていたということの方が多い。
セミは普通のアニメでも夏のシーンだと大抵入るけどストーブは
そういうわけでもないから、やはり自分の作品だけなのかも。
自分としては、素材をデータベース的に取り出して使っていると
いう感覚があるので、半ば意識的、半ば無意識的くらいの感覚」
−作画にフォトショップを使っていると聞いているが最近は
レイヤー数はどれくらい?
「最大レイヤー数は、昔は多いときで100枚近く使っていたが、
そもそも昔のフォトショップは最大レイヤー数が99枚まで?という
制限があった。
今はその辺の制限がないのと、レイヤーを一つのフォルダにまとめ
やすくなってる(多分アドビの思想だと思うのだが、昔あったレイヤ
同士のリンク機能に変わってフォルダ機能が強化された)ので、
確実に昔よりは増えていると思う」
520 :
超夢銀漢王:2007/06/13(水) 04:06:43 ID:fr+lXezn
(5/9)
−何故二話目の舞台は種子島なのか
「単純に、ロケットを出したかったから。
書き溜めていた短編プロットの中で元々、高校生が帰り道に
ロケットの打ち上げを見てしまうという話があって、ロケットの
打ち上げがあるということから必然的に舞台は種子島になった。
ただ、自分は種子島でロケットの打ち上げが行われているという
のは半ば一般常識だと考えていたのだが、世間的にはどうもそうでも
ないようで、あの部分だけSFだと思っているような感想を頂くことも
ある。
またスタッフの中でも種子島と鬼ヶ島の区別がついてないような
人もいて『実在する島なんですか?』と聞かれて『まあ、多分あると
思うよ……』と答えていた」
−作品に自分の過去が反映されているか
「例えば転校したとか、遠距離恋愛を続けていたということはない。
あったとしたら、雪で電車に閉じ込められたことというのは、
宇都宮線で一度あった(26歳の頃)。
あとは貴樹が会社を辞めるけれども、そこも同じといえば同じ。
それくらい」
−心理描写で気を使っている点は
「自分自身が切実に持っている、あるいはかつて持っていた思いを
リアリティをもって描くようにしている」
521 :
超夢銀漢王:2007/06/13(水) 04:07:44 ID:fr+lXezn
(6/9)
−二話で、なぜ貴樹は出すあてのないメールを打っているのか?
「出さなかったというよりは出せなかったのだと思う。
なぜそうなったか、理由をつけることはできるのだけど……
例えばあのときは多分文通は途切れていたのだと思う。
頂いた感想メールの中で、やはり遠距離恋愛で文通を続けて
いたのだが、という人もいらっしゃるが、手紙の中の相手の生活に
自分の知らない時間が段々多くなっていくことで、互いの生活が
離れてしまったという実感がわいて結局途絶えてしまったという
話をよく聞く。
正に貴樹と明里の場合もそういうことだろう。
それが悪いことかというと、それぞれが自分の場所に順応した
ということだから必ずしも悪いことではないと思う。
ただ貴樹の場合は、そうした気持ちとは別に自分がいる場所は
ここではないという思いもあって、その二つの気持ちの間で
ギリギリの行為があのメール打ちだった」
−あのメールは人に出すような文面ではないように思うが
また、夢の中でそれまで見えなかった明里の顔が最後に
見えるのは何を表している?
「あれは何かを書かざるを得ない、自分でコントロールできない
気持ちがあふれたようなものだと思う。
ただ、出さないメールを打った経験ってないですか?
いや、僕はたまにあるんですが。
明里の顔が見えたことについては、あの日、ロケットの打ち上げを
観た後、花苗は自分の気持ちが届かないことを自覚してしまうわけだが、
貴樹にとっては遠くに飛んでいくロケットを見て、遠くにいる明里の
顔を思い出した、ということではないか」
522 :
超夢銀漢王:2007/06/13(水) 04:08:41 ID:fr+lXezn
(7/9)
−感想メールはどのようなものが多いか
「今回の作品ではなんだか、『どうすればいいんでしょうか?』と
いうメールをよく頂く。まあそういう、相談みたいなメールが多い
というか。そのときによって答え方が違ってしまったりしてそこは
申し訳ないのだけど。
あと、この映画関連で良かった話が一つあって、観て下さった
男の子で自分も長年片思いしていた女の子がいたのだけど、10年
ぶりに連絡をとってみたら相手も同じような気持ちを自分にもって
いたということが分かって、結局付き合うことになった、という
話を伺った。良かったなあと思った」
−ダ・ヴィンチの小説について、映像と小説では表現の違いがあるか
「例えば小説では、映画では一枚の絵で済んでしまうところを
わざわざ文章にしないといけない。一方では、一言で済んでしまう
ところを絵で表現するのは大変だったりする。それはどちらもある。
ただ、そうした表現方法の違いというのはある程度テクニックで
吸収できてしまうことが分かってきた(もっともさらに突き詰めて
いくと、そこには吸収できない壁があるのだろうけど、まだそこまで
文章表現というものをしていない)。
一つ分からないといえば、生活の中でどれくらいの分量を書いて
いけばいいのかの感覚がつかめない。これが絵だと、一日にどれくらい
描けるという感覚があるのだが、小説書きは生活リズムの中にどう
やって組み込めばいいかがまだつかめていない。
結局それを把握することが生活の中でものを作る、ということ
なのだと思う」
−先ほどの話で出た片思いが実ったというのは実は私です
「あ、おめでとうございます。遠距離恋愛頑張って下さい」
【※一番最初の質問をした人でした】
523 :
超夢銀漢王:2007/06/13(水) 04:09:43 ID:fr+lXezn
(8/9)
「ここで、皆さんよろしければ新海作品としてどういうアニメが
観たいかについても聞かせて頂ければと思います。
というのは、世の中たくさん面白い作品がある中で、逆に
自分がどういう作品を作るべきなのか、というのを考えている
ところなので。
もちろんメールでも構いません」
−これまで三作観てきて、男女の間のどうしようもない距離と
いうものを描いている部分が共通しているが、次回作では
距離によって思いを断たれた者のその後、のような作品を
観てみたい
「何となく自分の中であるのは、今度の作品はこれまでの三本とは
全く違ったものにしたいということ。
それは秒速を作っているときからそう感じていた」
−資料写真を撮るときに気をつけていることは
「資料写真は、あくまで作品を作るのに必要なものを撮っている。
物語を組み立てる上でこういう写真が必要になるだろうという
ことを考えて撮っている」
−今回の作品で音響監督としての苦労話がありましたら
「音響監督としての仕事は、絵コンテのあと、ビデオコンテと
いうものを作るのだけど、そこの段階でSEを一通りつけている。
その中で、ここでは次のコンテにSEをこぼすとか、そういう
設計もするのだが、その作業が、苦労というかとても楽しかった。
そうやってビデオコンテにつけたSEをあとでプロの人に整理
してもらったり、必要とあれば録りなおしてもらったりするの
だけど、自分で音をつけているときが一番楽しかった。
というか、絵以外のことをやっているときは楽しい。
絵はこれから何千枚と描かなければいけないと思うとつらく
なるので」
−なぜ今回の作品は60分になったのか
「それは結果的にというか、例えば一話も、本当は20分くらいに
収めるつもりだったのだけど、ビデオコンテを作っている最中に
段々延びていって今の尺になった。
自分の中で、作品は楽に観てもらいたいというのがあって、
例えばPSPに落として駅のホームだとか通学途中とかでちょっと
観てもらえるのが一番(まだDVD出てないので今それをやっちゃ
いけないんですけど(笑))」
524 :
超夢銀漢王:2007/06/13(水) 04:26:25 ID:fr+lXezn
(9/9)
以上でティーチインの内容としては終わりです。
サイン頂くときに、次回作への展望として新海総合スレの方で最近
話が出ていた、文学作品の原作つきアニメについてはどうかという
点について聞いてみました。
−オリジナルストーリーへのこだわりがある?
「いや、それは特にそれほどなくて、たまたまこういう流れで来ているだけ。
良い原作作品があればやってみたいという思いはある」
−村上春樹などは?
「村上春樹さんは、ちょっと畏れ多いというのと、既に皆さんの中で
個々の村上春樹イメージみたいなものがあるので、それを壊さない
ようにやるのはなかなか難しいかなと」
「いくつか映像化してみたい作品というのはあって、例えば松本剛さんの
作品などはやれたらいいなと思っている」
あと、まあ蛇足ながらデジタル版の感想など。
これまでの感想でかなり違うとは聞いていたのだけど実際そこまでの
違いが分かるかな、とちょっと気合入れて観てましたが、全然杞憂でした。
もうファーストシーンから違いが歴然。
これは観ておいて良かったなあと思いました。
デジタルになったことで変わった点として三つあると思っていて、
・ティティールがくっきりはっきりしたことで映像の印象が変わる
これは二話のコンビニみたいに細かく書き込まれたシーンは特に
そうですし、豪徳寺から岩舟へマーキングするペンの色が鮮やかに
なっていたり、キャラがハレーションの中をくぐりぬけていく様子が
きちんと描かれているのが分かったり、他にも二話冒頭の草に射す
光だとかロケットの噴射煙の揺らぎだとか印象が変わった箇所が
たくさん。
・人物の動きがよりなめらかに
貴樹が手紙を書いているときのペンの動きとか、歩いているときの
足運びだとか、細かく動きが描き込まれているのが分かりました。
・これまで気づいてなかった演出意図に気づく
単純に見落としてただけかも知れませんが、サッカーコートの
照明がじんわり明るくなっていく様子だとか、二話で丘から眺めた
夜景で民家の明かりがポツポツ点っていく様子だとか、視線を
移したときのピントがじんわり合う感じとか、細かい部分の演出に
気づかされました。
というわけで、あまりにもフィルムとの差が気になってしまって
じっくりのめりこんで観られないほどでした。できればあと一回
くらい観にいきたい。
以上です。長文失礼しました。