秒速5センチメートル part2

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711超夢銀漢王
トークショー行ってきました。
笠井アナ、ほぼ隣に座っていたのに全然気づかなくてすごいびっくりした……。
ゲストというかほとんど笠井アナがホスト役でしたが、さすがにプロ。
これまでの新海監督関係のイベントで、一番話が弾みました。
個人的に新海作品ファンらしいので、今後もこういうイベントでまた出てくれると
嬉しい。

というわけで、イベントのトークの内容簡単にまとめたのでちょっと長いけど
upします。連投失礼。


新海監督、挨拶
 「作品を作り始めるときは観客の顔を意識しているんですが
 作っている間は製作のことだけを考えているので、作り終わ
 ってから改めて観客の顔を思い出して心配になる」
 「こういうものを観たいに違いないという思い、信念みたいな
 ものを持たないと一年半という作業は続かない」

・これまで何回観たか、との問いに6回以上観たという人がそこそこ。

・笠「初号試写が一回だけなんて少なすぎる。
   男おばさんという番組を一緒にやっている軽部アナにも薦めて
   気に入ってもらった」

・Yahooで一話を先行放送したことについて
 笠「普通はこういうことは劇場側がなかなかうなずかないので実現しない
   (お金をとって見せるものをタダで配信するという点が)
   そういう意味ではシネマライズの考え方が進んでいる」
 新「ネットで流すとその後YouTubeに載ったりしますからね(笑)」

・笠「カット切り替えが早くて勿体ない、もっとじっくり観ていたい」
 新「切り替えが早いのはテンポを考えているというのと、なるべく
   短い時間にたくさん詰め込みたいというのがある。
   それと、普段我々が見ている風景というのは、じっくり見るという
   よりも目の端で捉えていたりすることの方が多い。
   そういう瞬間瞬間の美しさというものに気づいてもらいたいので」
  「スタッフには、特に三話は『一生懸命描いたのに一秒もないの』と
   不評だったりする。
   実際、一番短いところは5コマしかない。それくらいのカットが
   40カットはある。
   ただ5秒あるところは5秒なりのカット、0.5秒のところはは0.5秒
   なりのカットにするよう、時間軸でのコントロールをしている
   (描き込みが違う)ので、あまり止めて見て欲しくはないですね(笑)」
 笠「原画展をやってほしい」
 新「そういったご要望はコミックスウェーブに言っていただければと……」
712超夢銀漢王:2007/03/29(木) 01:51:25 ID:R79A6qka
(2/5)
・笠「好きな場面は、桜並木の下にバイクが停まっているカットと、
   二話目の香苗がバイクにもたれかかってメールを打っている
   下半身のカット」
 新「香苗のカットは、実際に現地の中種子高校の女の子にポーズを
   撮ってもらった写真を元にして描きました」
 新「自分で描いているのは
    冒頭の桜並木のカット、ここの背景美術は全部自分
    (最初に作っていた場面)
    教室に入って電気がつくところ、電車の窓からの風景
   三話目の背景の細かい所は全部スタッフ
   電車の車内の細かい描写も、1,2カットは自分だがほとんどスタッフ」

・笠「離れている二人の間の想いを描くことが多いですよね」
 新「何で幸せな恋愛を描けないの?とはよく言われる。
   ただ自分は一人の人間が年老いて死ぬまでを描くわけではなくて
   劇中人物はこの先を生きていくわけで、この先生きていく人生を
   照らすような出来事を描きたい」
 笠「監督自身の恋愛経験が反映されているのでは?」
 新「遠恋の経験はないですね……いやあったか。
   高校卒業して上京して浪人〜大学入学の間に少し、地元の人と。
   ただ、今の世の中は電車で20分くらいの距離でも、メールが
   来なかったりするとすごく遠く感じる、近くに住んでいても
   遠恋的なシチュエーションが増えていると思う」
 笠「メールの返事がすぐ来ないと嫌ってタイプ?」
 新「自分は返事を出すのが遅い方なので、逆に返事を期待されると
   プレッシャーですね」

・男性視点が多いことについて
 新「自分自身が男というのが一つ、あと一人称の小説が好きと
   いうのもある。言葉が饒舌なものがいい、その中から好きな
   言葉が見つかったりする。
   なので、饒舌なアニメーションがあってもいいんじゃないか
   と思って作っている」
 笠「茫漠とした時間が僕の前には横たわって……なんて中学生は
   普通思いつかない表現ですよね?」
 新「あれは貴樹が成長してからの視点も一部混在してるんですよ」
713超夢銀漢王:2007/03/29(木) 01:52:28 ID:R79A6qka
(3/5)
・笠「ロケハンで得たイメージから作るタイプの監督と、脚本先行の
   監督がいるけど、どちらのタイプ?」
 新「小説形式の文章を書くことからスタート。書きながら風景を
   頭の中で組み立てて、それに基づいてロケハンする」

・モデルになった場所について
 新「冒頭の坂道は実際にあるけど、実はあそこに桜は植えられてない。
   後半造成されている描写があるけど、実際にもあそこは造成
   されて今は公園になってしまっている。その造成前は雑木林で
   それを桜に置き換えた。
   桜並木自体は参宮橋にあるのを参考にしている。
   キスシーンの桜は岩舟にはない。モデルにしたのは代々木公園の桜」
 笠「今から岩舟に植えてきてください」

・ダヴィンチ誌で小説連載開始(4/6売りの号から、半年くらいの予定)
 自身の手によるノベライズ

・笠「『ほしのこえ』『雲のむこう』この作品と、『約束』が
   キーワードの一つになっていると思うが」
 新「約束にまつわる思い出というのは誰でもあると思う。
   自分も『後輩にいつかジュースおごると約束したのにおごら
   なかった』というような些細なことから、人に言えないような
   大きなものまで、果たせなかった約束というのは幾つもある。
   ただ始めから破ろうと思ってする約束はないわけで、そこに
   至るまでの断絶、ギャップのようなものを描いている」

・笠「どの作品でも男性主人公が、ある種『偶像を作り上げながら
   恋愛をしている』気がするが、これは監督の実体験から?」
 新「そこまで徹底したものではなくても、昔の思い出を心に秘めて
   鬱々としてしまう、というようなのは、割と誰でも共有
   しやすい感情なのではないかと思っているんですけど」
 笠「過去の恋愛を忘れないタイプ?」
 新「忘れっぽいと思いますね…自分の作品を見ていても、昔の恋は
   思い出さないです」

・笠「香苗がちょっと貴樹の裾をつかむのがリアル(手とか腕じゃなくて)」
 新「あれは実体験ではないです(笑)
   二部は香苗の気持ちになって描いているので、ここは香苗なら
   裾だろうな、と」
714超夢銀漢王:2007/03/29(木) 01:53:19 ID:R79A6qka
(4/5)
・新「ロケハンした風景を元に背景を作画するのは楽なんだけど、
   キャラは記号化させないと芝居をさせられないし、記号化
   しすぎても駄目なので難しい。今はまだ試行錯誤している」

・SF的なギミックが作品に取り入れられる点について
 新「超越的・非日常的なものが好きなので。
   子供の頃はどうやっても手の届かない、遠いものほどかっこいい
   と思っていた。
   自分にとってはそれはパソコン(未来を象徴するもの)と宇宙
   だった。
   SMAPのようなアイドルに憧れる女の子の気持ちも同じなんじゃ
   ないかと思う」
  「香苗の気持ちとロケットの発射がシンクロするような描写は
   タイミングを全てコントロールできるアニメならではのもの」
  「二話でロケット打ち上げを描いたのは、香苗も貴樹もあそこで
   同じロケット打ち上げを見ているのに、違うものを見ていると
   いうことを描きたかった」

・山崎まさよしの歌について
 新「先に曲があったのではなく、話に合わせてあとから曲を選んだ。
   作品に合う曲としてスタッフが色々と挙げてくれたうちの一つ。
   前から知っていた曲だが、歌詞をじっくり見てみると作品に
   ぴったりリンクしていた。
   既に『月とキャベツ』で使われているが敢えて使わせて欲しい
   とお願いに行ったが、山崎氏に『既存の映画の曲をオファーして
   くるなんて度胸あるよね』と言われた」
715超夢銀漢王:2007/03/29(木) 02:01:02 ID:R79A6qka
(5/5)
・ラストシーンについて
 新「視線も交わすことなく歩み去ることについて、『あまりにも
   ひどい』と言われる。
   実際、中学生くらいの子からもらう感想だと『何で幸せにして
   あげないんですか』というのが多い。
   逆に年配の人からは『ああじゃなきゃいけない』と言われる」
  「明里があそこでいなくなっていたからこそ、貴樹は次の一歩を
   踏み出していける(もしいたら不倫になっちゃいますし)
   あのラストは一番最初に決めてはいたのだが、製作中ずっと
   本当にこれでいいか迷っていた」

・次回作について
 新「短いもののオファーは来ているので、そのあたりは年内にも。
   長編については全く未定。長編は一度始めるとスタッフを
   拘束することにもなるわけで、覚悟を決めないと始められない。
   今は日々届く感想を噛み砕く作業をしているところ」


以上です、連投失礼しました。
何かというと監督自身の恋愛体験談に持っていこうとする笠井アナが
面白かったw
しかしまあ、そのあたりはこちらも興味のあるところだし、技術的なこと
とかと違って普通に質問とかはしにくい部分なので、ああいう話題展開に
なったのはそういう意味でも貴重だったかと。

シネマライズでは4月にもトークやサイン会などのイベントを企画している
とのことです。

一点、ロケットの打ち上げの話題の中で、笠井アナと新海監督が二人とも
観ていて「あれは良かった」という、ロケット打ち上げを扱った映画?の話
があったのだけどよく聴き取れなかった。何だったんだろう。
オクトパス?とかなんとか聞こえたのだけど。