原作9巻より・1
ちらり、とニャルラトホテプを目の端で見る。
真尋の視線に気付いたのか、小首を傾げるニャルラトホテプ。半開きになった
形のいい唇からは、品性を求めるなど絶望的なマシンガントークが今にも飛び出しそうだ。
ぬいぐるみを取ってやればその小うるさい口が閉じられるだろうか、なんて
ほんのちょっぴりだけど、思ったりもしなくもない。
――喜ぶかな、とか。
そういうことでは決してなく。
原作9巻より・2
不意に、くいくい、と手を引かれる。
何かと思って視線を落とすと、そこにはニャルラトホテプの締まりのない
笑顔があった。にへら、と今この瞬間が楽しくて仕方のないような表情だ。
そこに、いつものニャルラトホテプの面影が感じ取れた。
頑張ってと激励された気がした。
「そうだな」
がしがし、とニャルラトホテプの頭を帽子の上から撫でてやる。
「なにがです?」
「何でもないよ」