@80年代中盤、アニメ・特撮のメインスポンサーであった玩具産業が、家庭用TVゲームの普及によって、小学生・中学生年齢の客層を失い、
TVゲームをプレイすることが困難なほどに幼い幼児層だけに、客層をピンポイントで絞って行く様になるのが80年代後半。
その結果として80年代後半以降は、TV放送されるアニメ・特撮は幼児化が進み、小学生・中学生の視聴層が離れて行った。
Aその後、80年代後半のOVA市場の開拓に失敗した特撮はTV放送される幼児向け作品だけになってしまったが、
アニメの方は、まだアニメブームの勢いが残る80年代中盤からOVA市場に大規模投資していたことが功を奏して、
幼児向けでは無い大人向け市場の残存に成功。これが現在のローカル深夜枠市場に繋がる。
Bしかし玩具販売という大口の収入源を持たないOVA市場は、販売総数わずか数千本のビデオ(現DVD)、キャラクタードラマCD、
キャラグッズ、マンガ・ライトノベル化などで、小口の収入源を多角化することでしか市場を維持出来ず、
多角的に商品を消費してくれるディープな客層、ニッチな市場へと深層化、縮小化することから歴史が始まっており、
それ以前のTV放送時代に居た、その作品の玩具を1〜2個買う程度のライトで巨大な人口の客層とは無縁のものだった。
Cこの流れの中でアニメ市場はTV放送されている幼児向け作品群と、ディープでニッチなオタク向け作品群へと二極化、
80年代後半〜90年代中盤に掛けて育った世代は子供時代に、大人に向けて作られたアニメ自体を見たことが無く、
"大人が見れるアニメ"という文化は、この時代のOVAを見なかった様なライトな小学生〜中学生の間では失われて行く。
もともと日本のTVアニメは、あらゆる世代が同時に楽しめる"子供も大人も見れる"ところからスタートしたのであって、
幼い子供をピンポイントで狙う様なものでは無かった。
スポンサー都合で、TVアニメが幼児をピンポイントに狙う様になって失われたものは大きい。
Dこれはマニアックなユーザーの間では平成初期頃から認識されていた問題点だが、
80年代後半〜90年代中盤に掛けて育った世代、この時代にアニメを知らずにアニメ業界に就職した世代が、
この問題点を認識し辛い事が、状況改善の足枷になっている。
OVA市場、ローカル深夜枠市場は、小口の収入源を多角化することで市場を維持するメディアミックス商法。
DVDを買い、ドラマCDを買い、キャラグッズを買い、マンガ・ライトノベルを買ってくれる、
そんな多角的に消費活動をするディープなオタク客層の存在を前提としたものであり、
アニメDVDだけを買う・レンタルするライトな客層では支える事が出来ないものだ。
だからローカル深夜枠での市場競争の淘汰が進めば、勝ち残る作品は、多様な商品展開が可能な萌えオタクアニメだけ、という現状になる。
そもそも"アニメを見る"という行為に、DVDを買う必要性は全くなく、ライトな客層は当然レンタルやネット視聴で済ませて終わり。
ディープなオタク客層がDVDを買うのは、"見る"為では無く、"物理的にコレクションする"為だ。
現行の市場で、見ごたえのある作品を作ればDVDが売れるなどと思うのは、
80年代にはもう既に、OVA市場が萌えアニメ作品に席巻されていたという歴史を知らないが故に見る幻想に過ぎない。
見ごたえがあろうがなかろうが、レンタルで済ませて終わり、それが一般ユーザーの思考回路。
内容・脚本が面白かろうが面白くなかろうが、作画などで物理的に価値があればコレクション購入するのがオタクユーザーの思考回路。
DVD販売を主目的にしている限り、内容的に見ごたえのある健全な作品などは成立しない。
作品の内容、売上、客入りに関わらず、ある一定のノルマさえこなしていれば、パトロンであるスポンサーがお金を出してくれる。
そんなかつてのTV放送アニメの方が、実は自由度があった、という笑えないオチ。
直で結果が求められる劇場・DVD商法にそこまでの自由は無い。
80年代後期に進んだ縮小・二極化の状態のまま、その後20年安定したアニメだが、
少子化による幼児人口の減少、
ローカル深夜枠の先鋭化による既存客のアニメ離れが進み、現状の維持は難しくなって来ている。
今後、アニメが基本的に目指すべき目標は三つ
@朝夕枠TV放送アニメの幼児ピンポイント狙いを、幼児基本・大人も見れるへ転換(多世代化-縦の線)
Aローカル深夜枠放送アニメのオタクピンポイント狙いを、オタク基本・一般も見れるへ転換(同世代内拡充−横の線)
B海外市場の積極的開拓(産業として継続可能な消費人口の確保)
やるべきことははっきりしている。
共に必要なのは、非オタクな人間たちに、まずは"アニメというもの"を知ってもらうこと。
非主流のサザエさんやジブリではなく、ジャパニメーションの本流を。
それには非オタクな人間がアニメを見る機会を増やさなければならない。
やはり最大露出媒体はTV放送。OVAでも劇場公開でも無い。
向こうからは寄ってこない。こちらからアプローチしなければ。
C週一30分の現在の放送形態ではなく、毎月か隔月かワンシーズンをレギュラー化
深夜ではなくゴールデンに。年一の金ロールパンでは足りない。
週一30分の放送(メジャー)か、OVA・劇場(マイナー)か。ゴールデン(メジャー)か、深夜(マイナー)か、の極端な二択であることが良くない。
その中間としてのTV放送形態が必須。